切削加工の試作・小ロット · 基礎知識
切削・3Dプリント・注型・金型の使い分け|試作の数量と目的で選ぶ【2026年版】
試作部品を切削で削るか、3Dプリントや真空注型、簡易金型で作るかは、数量と確かめたいことで決まります。掲載各社が公式に出しているおすすめロットや1個あたりコストの比較をもとに、使い分けの目安を整理しました。
試作の相談で最初に決めるのは、どの工法で作るかです。同じ形でも、切削・3Dプリント・注型・金型では、得意な数量も費用の下がり方もまったく違います。
工法を決めないまま見積を頼むと、加工会社から工法の確認が返ってきて1往復分遅れます。このページでは、掲載各社が公式サイトに出している比較表やコストの例を並べ、切削を選ぶべき場面を整理します。
4つの工法の基本的な違い
切削は、材料のブロックや丸棒を刃物で削って形を作る工法です。3Dプリントは材料を積み重ね、注型はシリコーンなどの型に樹脂を流し込み、金型は金属の型で成形します。
| 工法 | 型の要否 | 材料の自由度 | 1個あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| 切削 | 不要 | 量産と同じ材料を選びやすい | 数が増えても下がりにくい |
| 3Dプリント | 不要 | 造形機に合う材料に限られる | 小さい形なら安い |
| 真空注型 | シリコーン型が必要 | 注型用の樹脂 | 10個以上で下がる |
| 金型(簡易型を含む) | 金属の型が必要 | 成形用の樹脂 | 型代が大きく、数が増えると大きく下がる |
型が不要な切削と3Dプリントは、1個から始めやすい工法です。型を作る注型と金型は、数がそろうほど1個あたりが安くなります。
工法ごとの得意な数量
樹脂試作の専門工場である荒川技研は、工法ごとのおすすめロット数を比較表で公開しています。切削は少ない数で精度を出す工法、注型は数十個、3Dプリンターは数個の確認という位置づけです。
| 工法 | 荒川技研のおすすめロット | 向いている確認 |
|---|---|---|
| 切削加工 | 1〜50個 | 寸法・強度・機能の確認 |
| 真空注型 | 10〜100個 | ある程度の数をそろえる |
| 3Dプリンター | 1〜10個 | 形の確認を急ぐ |
数十個までなら切削で足りることが多く、それを超えると注型や型の検討が始まります。まず必要な数と、その試作で何を確かめたいかを書き出してください。
1個あたりのコストはどう下がるか
プロトワークは、ある樹脂製品を切削・注型・金型で作った場合の1個あたりコストを公開しています(税表記なし)。数量によって安い工法が入れ替わる様子がよく分かる例です。
| 数量 | 切削品 | 注型品 | 金型品 |
|---|---|---|---|
| 1個 | 30,000円 | 50,000円 | 800,000円 |
| 100個 | 7,000円 | 5,500円 | 8,500円 |
| 1,000個 | 6,500円 | 5,500円 | 1,000円 |
1個なら切削が最も安く、金型は型代が乗るため桁違いに高くなります。表にない数量も見ると、10個では切削と注型が同じ10,000円、50個では注型(6,200円)が切削(8,000円)を下回り、1,000個では金型が最も安くなります。
この数字は一つの製品の例で、形や材質が変われば分かれ目も動きます。それでも、試作の1個に金型を使わない理由と、量産で切削を続けない理由は読み取れます。
切削を選ぶべき場面
切削は、量産と同じ材料のブロックから削り出せるのが強みです。強度や耐熱、摺動など、材料の性質そのものを確かめたい試作に向きます。
- 機能や強度を、量産と同じ材料で確かめたい
- はめあいや穴位置など、寸法の精度が要る
- 1個〜数十個で足り、型を作るほどの数がない
- 設計変更が続き、型を直す手間を避けたい
ゼンは樹脂切削の利点として、豊富な材料種から量産時に限りなく近い材料を使えることを挙げています。渡辺製作所も、機能を確かめる試作や寸法精度が要る部品で、数量が少ないなら切削を勧めています。
3Dプリントや注型を選ぶ場面
形を手に取って確かめるだけなら、切削より3Dプリントの方が早く安く済むことがあります。刃物が届かない中空の形や、格子のような内部構造も3Dプリントの領域です。
- 外観や組み付けの雰囲気を、まず見たい
- 刃物が入らない中空・内部流路の形がある
- 同じ形を10個以上そろえたい(注型)
- 量産に近い成形品で確かめたい(簡易金型)
渡辺製作所は試作金型を、早ければ2週間ほどで作れるとしています(手のひらサイズの簡易なもの)。モロトは切削とMarkforgedの3Dプリンターを用途に応じて使い分けています。
切削の弱点も知っておく
切削は万能ではなく、形によっては時間と費用がかさみます。見積が想定より高いときは、次のどれかに当たっていないかを確かめてください。
- 刃物が届かない奥まった形や、内側の角が鋭い形
- 薄い壁や細い溝で、加工中に材料が逃げやすい
- 大きなブロックから少しだけ残す形で、削る量が多い
- 数が増えても、段取りと加工時間が1個ごとにかかる
こうした形は、分割して組み立てるか、3Dプリントや注型に切り替えると安くなることがあります。加工会社に形の変更案を出してもらうと、機能を保ったまま費用を下げられる場合があります。
工法を一社でまとめて相談できる会社
工法が決めきれないときは、複数の工法を持つ会社に相談すると比較が早く進みます。掲載会社のうち、切削以外の工法も公式に挙げている会社は次のとおりです。
| 会社 | 切削以外に持つ工法 |
|---|---|
| ゼン | 真空注型、3Dプリンター、射出成形・簡易金型、板金 |
| 渡辺製作所 | 光造形・粉末造形、真空注型、試作金型、射出成形 |
| 荒川技研 | 真空注型、光造形、簡易型成形 |
| プロトワーク | 光造形・粉体造形、真空注型、試作型・簡易型 |
| モロト | 3Dプリンター(Markforged) |
同じ会社で工法を比べられると、見積の前提がそろい、判断がしやすくなります。
開発の段階ごとに、工法は変わっていく
一つの部品でも、開発が進むにつれて向く工法は変わります。最初から最後まで切削で通す必要はなく、段階ごとに切り替えるのが一般的です。
| 段階 | 主な目的 | 向く工法の例 |
|---|---|---|
| 構想・デザイン確認 | 大きさや見た目を確かめる | 3Dプリント |
| 機能試作 | 強度・寸法・組み付けを確かめる | 切削 |
| 評価用の数をそろえる | 数十個で試験や配布をする | 切削・真空注型 |
| 量産前の確認 | 成形品に近い状態で確かめる | 簡易金型・試作金型 |
機能試作の段階で切削を選ぶと、量産と同じ材料で強度や寸法を確かめられます。その結果を踏まえて型の設計に進めば、型の修正を減らせます。
段階をまたいで同じ会社に頼むと、図面や材料の情報を引き継げるのも利点です。工法を複数持つ会社を選ぶと、この切り替えを一つの窓口で進められます。
数量と目的から工法を決める手順
最後は、数量と確かめたいことの組み合わせで決めます。次の順で考えると、工法の候補が自然に絞れます。
- 必要な数を決める(1個/数十個/100個以上)
- 確かめたいことを決める(形/寸法/強度・材料)
- 材料が決まっているかを確かめる
- 次の段階で量産するかを決める
1個〜数十個で、寸法や材料の性質まで確かめたいなら切削が第一候補です。形だけなら3Dプリント、数十個以上なら注型や簡易金型を比べてください。
この記事に出てくる会社
- 荒川技研株式会社樹脂の工法から相談を
- 有限会社モロト図面前の樹脂治具に
- 株式会社プロトワーク週末も動く試作工場
- 株式会社渡辺製作所樹脂の試作専門工場
- 株式会社ゼン樹脂と金属をまとめて
参照元
よくある質問
試作を1個だけ作るなら、切削と3Dプリントのどちらが安いですか?
形と大きさによりますが、形の確認だけなら3Dプリントが安く早いことが多く、寸法や材料の性質まで確かめるなら切削が向きます。荒川技研は3Dプリンターのおすすめロットを1〜10個、切削を1〜50個としています。
何個から金型を検討すべきですか?
製品によって分かれ目が変わります。プロトワークが公開している樹脂製品の例では、1個あたりのコストは10個で切削と注型が同額(10,000円)、50個で注型が切削を下回り、1,000個では金型が最も安くなっています(税表記なし)。
工法をまとめて相談できる会社はありますか?
ゼン、渡辺製作所、荒川技研、プロトワークは、切削のほかに注型や3Dプリント、簡易金型などの工法を公式に挙げています。
【用途別】切削加工の試作会社おすすめ3選
金属の小物を1個、とにかく早く手に入れたいなら
株式会社アスク
見積最短1時間、最短当日出荷、平均リードタイム4日。旋盤から5軸、放電まで社内一貫
大阪府枚方市の部品加工会社で、見積回答は最短1時間、出荷は最短当日、平均リードタイムは4日と公式に書いている。旋盤・5軸マシニング・放電・板金・溶接を社内で行い(表面処理・熱処理は協力工場で手配)、年間約13,000件の実績がある。単品1個から受け、得意は米粒大(約1mm)から手のひらサイズ(約150mm)の小物部品。
PEEKやPOMなど、樹脂部品の試作を急ぐなら
湯本電機株式会社
最短納期1.0日、見積最短2時間。汎用樹脂からスーパーエンプラまで35種類以上を常時在庫
大阪市東成区のプラスチック切削加工の会社で、最短納期1.0日、見積は最短2時間と公式に記載している。汎用樹脂からスーパーエンプラまで35種類以上の材料を常時在庫し、PEEK・PPS・MCナイロン・POMなどに対応する。5軸加工機、NC旋盤、マシニングセンタを持ち、年間18,000品目以上を加工している。
チタン・インコネルなどの難削材を、ミクロン単位で削るなら
株式会社友栄精密
輪郭精度±2μオーダー。チタン・ハステロイ・インコネルを5軸で、1個から量産まで
大阪府富田林市で1960年に創業した精密加工会社で、トップページに輪郭精度±2μオーダーの精密試作部品を作ると記載している。FAQでは空調機圧縮機部品などで随時2〜3ミクロンのオーダーに対応してきたと答え、チタン、ステンレス、ハステロイ、インコネルが切削可能とする。1個でも発注でき、量産は100個〜10000個程度まで受ける。