切削加工の試作・小ロット · 基礎知識
切削試作の公差と図面の伝え方|各社が公開している精度と、データ形式の選び方【2026年版】
切削加工の試作で、公差の指示と図面データの形式は費用と日数に直結します。掲載各社が公式に出している精度の数字、検査の体制、受け付けるデータ形式を整理し、図面を送る前に決めておくことをまとめました。
切削の試作で見積が高くなる原因の多くは、形ではなく公差の指示にあります。必要以上に厳しい公差は、加工の時間と検査の手間を増やすからです。
反対に、機能に効く寸法の公差が抜けていると、届いた部品が組み付かないことがあります。このページでは、掲載各社の公式な精度の表記と、図面の渡し方を整理します。
公差とは何か、なぜ費用に効くのか
公差は、図面の寸法に対して許される誤差の幅です。幅が狭いほど、加工は慎重になり、測る回数も増えます。
- 公差が狭い寸法は、工具や加工条件を変えて何度も仕上げる
- 測定に三次元測定機や温度管理が必要になる
- 1個の不良で作り直しになり、日数が延びる
- 公差が広い寸法は、通常の加工で一度に仕上がる
つまり、全部の寸法を厳しくすると、その分だけ費用と日数が積み上がります。厳しい公差は、はめあいや位置決めなど機能に効く寸法に絞るのが基本です。
各社が公式に出している精度の数字
精度の数字を公式サイトに出している会社は、比べる材料になります。ただし多くの会社が、形状や材質によって変わると注記しています。
| 会社 | 公式の精度の表記 | 補足 |
|---|---|---|
| 友栄精密 | 輪郭精度±2μオーダー | FAQで2〜3ミクロンの対応実績 |
| 関東精密 | 1/1000㎜の高精度対応 | 試作1点から |
| ニッシン | 1000分の1ミリ単位 | 切削・研削 |
| プロトワーク | ±0.01の高精度加工 | 機上測定、不良率の公開 |
| ゼン | 1/100mmの公差 | 形状・材質による |
| 小泉精機製作所 | ±1/100㎜(目安) | アルミ。微細穴5/100mm |
| 坂本電機製作所 | 同軸度0.01mm〜、平面・平行度0.02mm〜 | 丸物・角物の目安 |
| 岸本工業 | ±0.03㎜以内を基準 | 樹脂。フルフラット加工は指定公差に従う |
ミクロン単位をうたう会社は、研削や検査の設備とあわせて精度を出しています。樹脂は温度や吸水で寸法が動くため、金属と同じ公差を求めない方が無難です。
公差を入れる寸法と、ゆるめてよい寸法の例
どの寸法を厳しくするかは、部品の役割から決めます。よくある部品で考えると、次のような分け方になります。
| 寸法の種類 | 公差の考え方 | 理由 |
|---|---|---|
| 軸や穴のはめあい径 | 厳しく入れる | ガタや圧入の具合が機能を左右する |
| 位置決めの穴や基準面 | 厳しく入れる | 他の部品との位置関係が決まる |
| ねじ穴の位置 | 相手部品に合わせて入れる | 組み付けできるかが決まる |
| 外形や逃げの寸法 | ゆるめてよいことが多い | 多少ずれても機能に影響しにくい |
| 面取りや角の丸み | ゆるめてよいことが多い | 見た目と安全のための形 |
厳しくする寸法が数か所に絞れていると、加工会社は工程を組みやすくなります。図面の余白に、機能上重要な寸法を一言で書き添えるのも有効です。
検査と測定の体制も確かめる
精度は削る力だけでなく、測る力で決まります。測定の体制を公式に書いている会社は次のとおりです。
| 会社 | 公式に書いている検査・測定 |
|---|---|
| アスク | 公差部に実測値を記入(1/100単位まで) |
| 永和工業 | KEYENCE XM-5000A三次元測定機、検査機器をJQAで年1回校正 |
| CHAMPION CORPORATION | 恒温(22℃±2℃)の検査室 |
| 渡辺製作所 | 全案件で公差測定を実施 |
| ニッシン | 全数検査、三次元測定機などの測定器 |
実測値の記録が欲しい場合は、見積の段階で伝えておくと追加の手間を避けられます。検査成績書の要否で費用が変わることもあるため、条件をそろえて比べてください。
公差を指示するときのコツ
公差の指示は、加工会社が迷わない書き方にするのが一番の近道です。次の4点を意識すると、確認の往復が減ります。
- 機能に効く寸法(はめあい・穴位置・基準面)にだけ厳しい公差を入れる
- それ以外は、一般的な許容差で足りることを図面に明記する
- どの面を基準に測るかを示す
- 樹脂は使用温度を書き、寸法が動く前提で幅を持たせる
岸本工業は、指定寸法に対して±0.03㎜以内を基準とし、フルフラット加工ではプラス・マイナスなど指定の公差に従うとしています。基準を公開している会社なら、指示がない寸法の仕上がりを事前に予想できます。
樹脂部品の公差で気をつけること
樹脂は金属より柔らかく、温度や湿度で寸法が動きます。削った直後と使う環境で、寸法が変わることを前提に公差を決めます。
- 岸本工業: 指定寸法に対し±0.03㎜以内を基準とし、フルフラット加工では指定の公差に従う
- ゼン: 樹脂切削は形状・材質によるが1/100mmの公差保証
- 荒川技研: 形状・サイズ・材質で再現できる公差が異なるため事前に確認
厳しい公差が必要な樹脂部品は、使用温度と材料の種類を図面に書いておくと、加工会社が条件を選びやすくなります。反りやすい材料は、加工方法の提案を受けてから公差を決める方が確実です。
図面データの形式で、見積の速さが変わる
データ形式の希望も会社ごとに違います。公式に書いている内容を並べると次のとおりです。
| 会社 | データ形式についての記載 |
|---|---|
| アスク | 3Dでも見積可能だが、DXFやPDFなど2Dデータの方が比較的早い |
| 大日精機 | 3DデータはSTEPでの支給が望ましい |
| ゼン | 2DCADデータや3DCADデータの中間ファイルだとスムーズ |
| 青木製作所 | PDF、DXFなどの図面データでスムーズに見積 |
| 立昌製作所 | アルミの丸材の部品はWeb画面でサイズと形状を指定(図面不要) |
迷ったら、寸法と公差を書いた2DのPDFと、形を示す3DのSTEPを両方送るのが確実です。2Dと3Dで寸法が食い違うと確認が入るため、送る前に照合してください。
図面がない場合の進め方
図面が用意できない段階でも、受けてくれる会社はあります。ただし対応の仕方は会社ごとに違います。
- 関東精密: 現物を3Dスキャナーで読み取って再現
- 岸本工業: 現物を預かり、採寸・製図して加工
- 大日精機・八木製作所: ポンチ絵から製作
- アスク: 図面かCADデータがない依頼は断る(簡単なものは手書き図面可)
図面なしで頼むと、図面化の時間と費用が加わります。詳しくは、図面なし・ポンチ絵からの製作をまとめたページも参考にしてください。
精度について加工会社に聞いておくこと
公式の数字は目安で、実際にどこまで出せるかは部品ごとに違います。見積の段階で次の点を聞いておくと、届いてからの食い違いを防げます。
- 指示した公差を、どの設備と測定方法で確かめるか
- 検査成績書や実測値を付けられるか、その費用はいくらか
- 公差を守るのが難しい箇所はどこか
- 公差をゆるめれば費用や日数がどれだけ変わるか
最後の質問は特に効果があります。わずかな公差の変更で工程が減るなら、機能を損なわない範囲で見直す価値があります。
送る前のチェックリスト
最後に、図面を送る前に次の項目がそろっているかを確かめます。一つでも欠けると、見積の回答が1往復分遅れます。
- 材質(記号まで。代替可なら書く)
- 数量と希望納期
- 機能に効く寸法の公差と基準面
- 表面処理・熱処理の有無
- 検査成績書・実測値の要否
- 2DのPDFと3DのSTEP(ある場合)
ここまでそろえば、公差の確認で止まることはほとんどありません。
この記事に出てくる会社
- 有限会社青木製作所専用機の部品を図面なしで
- 荒川技研株式会社樹脂の工法から相談を
- 株式会社アスク金属の小物1個を最短で
- 株式会社CHAMPION CORPORATION熱処理込みの鋼材部品に
- 大日精機株式会社ポンチ絵から研究用部品を
- 永和工業株式会社丸物の旋盤試作に
- 株式会社関東精密現物しかない部品の再製作に
- 有限会社岸本工業樹脂の公差基準が明確
- 有限会社小泉精機製作所アルマイト込みのアルミ部品に
- 株式会社ニッシン研削込みの超精密部品に
- 株式会社プロトワーク週末も動く試作工場
- 株式会社立昌製作所アルミ1個をWeb見積で
参照元
よくある質問
公差はすべての寸法に入れるべきですか?
機能に効く寸法(はめあい・穴位置・基準面)に絞るのが基本です。全部を厳しくすると、加工と測定の手間が増えて費用と日数が積み上がります。
切削の試作では、どのくらいの精度が出ますか?
会社と形状によります。公式の表記では、友栄精密が輪郭精度±2μオーダー、関東精密が1/1000㎜、プロトワークが±0.01、小泉精機製作所が±1/100㎜目安、樹脂の岸本工業が±0.03㎜以内を基準としています。
図面データは2Dと3Dのどちらを送ればよいですか?
両方そろえるのが確実です。アスクは2D(DXF・PDF)の方が見積が早いとし、大日精機は3DはSTEPが望ましいとしています。
【用途別】切削加工の試作会社おすすめ3選
金属の小物を1個、とにかく早く手に入れたいなら
株式会社アスク
見積最短1時間、最短当日出荷、平均リードタイム4日。旋盤から5軸、放電まで社内一貫
大阪府枚方市の部品加工会社で、見積回答は最短1時間、出荷は最短当日、平均リードタイムは4日と公式に書いている。旋盤・5軸マシニング・放電・板金・溶接を社内で行い(表面処理・熱処理は協力工場で手配)、年間約13,000件の実績がある。単品1個から受け、得意は米粒大(約1mm)から手のひらサイズ(約150mm)の小物部品。
PEEKやPOMなど、樹脂部品の試作を急ぐなら
湯本電機株式会社
最短納期1.0日、見積最短2時間。汎用樹脂からスーパーエンプラまで35種類以上を常時在庫
大阪市東成区のプラスチック切削加工の会社で、最短納期1.0日、見積は最短2時間と公式に記載している。汎用樹脂からスーパーエンプラまで35種類以上の材料を常時在庫し、PEEK・PPS・MCナイロン・POMなどに対応する。5軸加工機、NC旋盤、マシニングセンタを持ち、年間18,000品目以上を加工している。
チタン・インコネルなどの難削材を、ミクロン単位で削るなら
株式会社友栄精密
輪郭精度±2μオーダー。チタン・ハステロイ・インコネルを5軸で、1個から量産まで
大阪府富田林市で1960年に創業した精密加工会社で、トップページに輪郭精度±2μオーダーの精密試作部品を作ると記載している。FAQでは空調機圧縮機部品などで随時2〜3ミクロンのオーダーに対応してきたと答え、チタン、ステンレス、ハステロイ、インコネルが切削可能とする。1個でも発注でき、量産は100個〜10000個程度まで受ける。