業務用空気清浄機 · 基礎知識
換気基準と空気清浄機の関係|厚労省の目安・建築物衛生法・事務所衛生基準規則【2026年版】
厚生労働省の換気の目安(1人あたり毎時30㎥・CO2 1,000ppm)、建築物衛生法の空気環境管理基準、事務所衛生基準規則の数値を整理し、空気清浄機が換気の代わりになる範囲とならない範囲を、厚労省資料の記載に基づいて説明します。外気導入・陰圧排気に対応する機種も紹介します。
「空気清浄機を置けば換気しなくてよいのか」という質問には、厚生労働省の資料が答えを出しています。空気清浄機は換気の代わりではなく、換気を確保した上での追加策です。
このページでは、換気に関する3つのルールの数値を整理し、空気清浄機がどこまで役に立つのかを公的資料の記載の範囲で説明します。
3つのルールの適用範囲:どの建物にどの基準がかかるか
換気と室内空気に関するルールは、建物の種類と規模で適用が分かれます。最初にどれが自社に当てはまるかを確認します。
| ルール | 根拠 | 適用対象 |
|---|---|---|
| 「換気の悪い密閉空間」改善の目安 | 厚生労働省 令和2年3月30日・6月17日の資料 | 商業施設等一般。法令上の義務ではなく目安 |
| 建築物環境衛生管理基準 | 建築物衛生法(ビル管理法) | 特定建築物(延べ面積3,000㎡以上の興行場・百貨店・事務所等) |
| 事務所衛生基準規則 | 労働安全衛生法に基づく厚生労働省令 | 事務所(労働者を使用する事業場) |
小規模なオフィスは建築物衛生法の特定建築物に当たらないことが多く、事務所衛生基準規則と厚労省の目安が主な基準になります。
厚生労働省の目安:1人あたり毎時30㎥とCO2 1,000ppm
厚生労働省の「商業施設等における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気について」(令和2年3月30日)は、建築物衛生法が一酸化炭素濃度(10ppm)や二酸化炭素濃度(1,000ppm)の基準で適切な換気量を求めていること、この基準を実現するために空気調和・衛生工学規格が1人あたりの必要換気量を約30㎥毎時としていることを示しています。
同資料は「一人当たり必要換気量約30㎥毎時」を満たせば「換気の悪い密閉空間」には当てはまらないと考えられるとしています。窓開放の場合の目安も示されています。
- 機械換気の場合:1人あたり毎時約30㎥の換気量を確保する
- 窓開放の場合:換気回数を毎時2回以上(30分に1回以上、数分間程度、窓を全開)とする
- CO2濃度1,000ppm以下が、換気量が足りているかの指標になる
たとえば10人が使う会議室なら、必要換気量は毎時約300㎥です。この換気量は空気清浄機の風量とは別に、換気設備や窓開放で確保します。
建築物衛生法の管理基準:特定建築物の7項目と測定頻度
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」は、空気調和設備を設けている居室の基準を7項目で定めています。令和4年4月1日に一酸化炭素と温度の基準が変わりました。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 浮遊粉じんの量 | 0.15mg/㎥以下 |
| 一酸化炭素の含有率 | 6ppm以下(令和4年4月1日以降。それ以前は10ppm以下) |
| 二酸化炭素の含有率 | 1,000ppm以下 |
| 温度 | 18℃以上28℃以下(令和4年4月1日以降。それ以前は17℃以上) |
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 |
| 気流 | 0.5m/秒以下 |
| ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/㎥以下(0.08ppm以下) |
測定は各階ごとに居室中央部の床上75cm以上150cm以下で行い、浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素は2か月以内ごとに1回です。
同基準は空気調和設備を「エア・フィルター、電気集じん機等を用いて外から取り入れた空気等を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる機器及び附属設備の総体」と定義し、外気導入機能のない家庭用ルームエアコンは該当しないとしています。空気清浄機の集じん機能は、この定義の一部(浄化)に当たりますが、外気導入と温湿度調節は含みません。
事務所衛生基準規則:第3条と第5条の数値
事務所衛生基準規則は、換気設備の有無で2段階の基準を置いています。第3条は自然換気の事務所向け、第5条は空気調和設備または機械換気設備を設けている場合の基準です。
| 条文 | 項目 | 基準 |
|---|---|---|
| 第3条 | 窓等の開放できる部分の面積 | 常時床面積の20分の1以上(換気が十分に行われる設備がある場合を除く) |
| 第3条 | 一酸化炭素・二酸化炭素 | それぞれ50ppm以下・5,000ppm以下 |
| 第5条 | 浮遊粉じん量 | 0.15mg/㎥以下 |
| 第5条 | 一酸化炭素 | 10ppm以下(外気汚染で困難な場合は20ppm以下) |
| 第5条 | 二酸化炭素 | 1,000ppm以下 |
| 第5条 | ホルムアルデヒド | 0.1mg/㎥以下 |
| 第5条 | 室の気流 | 0.5m/秒以下 |
| 第5条 | 気温・相対湿度(空気調和設備を設けている場合) | 18℃以上28℃以下、40%以上70%以下となるよう努める |
第4条は室の気温が10℃以下の場合の暖房等の措置を定めています。空気清浄機の運転で影響するのは浮遊粉じんの項目で、CO2やホルムアルデヒドは換気で下げる項目です。
空気清浄機が代わりになるもの・ならないもの
厚生労働省の令和2年6月17日の資料は、居室の温度・相対湿度の基準を維持できる範囲で窓からの外気取り入れを行いつつ空気清浄機を使用する場合の留意点を示しています。空気清浄機は「換気しながら使う」前提です。
- できること:浮遊粉じんの低減。同資料はREHVAがHEPAフィルタ付き空気清浄機は換気と同程度の粉じん除去効果があり、静電気フィルタも同様としていることを紹介している
- できないこと:二酸化炭素・一酸化炭素の低減。これらは外気との入れ替えでしか下がらない
- 使用条件:HEPAフィルタ付きで風量5㎥/min程度以上、人の居場所から10㎡程度の範囲内に設置、外気取り入れの風向きと空気清浄機の風向きを一致させて空気のよどみを作らない
- 方式の注意:同資料はREHVAがHEPA・静電気フィルタ以外の方式は効果不十分としていることを紹介している
同資料はチャンバー実験の結果として、HEPA付き空気清浄機の10分後の活性ウイルス低減率が風量2.5㎥/minで10のマイナス2乗、5.1㎥/minで10のマイナス3乗、8.3㎥/minで検出限界以下だったことを挙げています。風量が大きいほど短時間で下がる、という関係です。
換気設備と空気清浄機を併用する機種の例(外気導入・陰圧排気)
30社の中には、空気清浄と換気・排気を1台で扱う機種を公式に載せているメーカーがあります。換気設備の増設が難しい既存建物向けの選択肢です。
| メーカー・機種 | 公式記載の機能 | 数値(公式値) |
|---|---|---|
| 日本エアーテック 簡易陰圧装置 PEU-02型 | 既設病室等の清浄化と陰圧化を1台で実施(陰圧化にはダクト工事必要) | 給気風量約12㎥/min、排気風量約8㎥/min(50Hz高速)、HEPA 0.3μm 99.99%以上、最低騒音38dBA |
| アルモルーチェ 陰圧排気HEPAフィルターユニット AR-NPE | 室内を陰圧に保持しHEPA処理後に屋外排気、スライダックで風量調整 | 風量0〜10/0〜14/0〜25㎥/min、HEPA集塵効率99.99%以上(0.3μm) |
| アルモルーチェ 室内空気除菌清浄機 AR-CL-55AD | 天井設置型。オプションに外気取り込み | 風量5.0/6.0CMM(50/60Hz)、深紫外LED 280nm 8個 |
| アイリスオーヤマ プラズマガード 空調ダクトタイプ | 既設空調ダクトに設置、空調設備の入替不要 | 除菌有効体積 約840㎥/台、30W |
| ミドリ安全 | 喫煙室の設計・換気扇設置などトータル提案 | — |
陰圧排気ユニットは屋外へ排気するため、換気量の確保と同時に空気清浄ができます。クリニックの発熱外来室や病室向けとして公式に記載されています。
稟議書に書く根拠のまとめ方
空気清浄機の導入を社内で説明するときは、換気と空気清浄を分けて書くと通りやすくなります。公的資料に紐づけた書き方の例を示します。
- 換気量の現状:在室人数×30㎥/hと、実際の換気設備の能力またはCO2実測値を並べる
- 浮遊粉じん対策:事務所衛生基準規則第5条の0.15mg/㎥以下を目標に、HEPAまたは電気集じんの機種を選ぶ理由を書く
- 設置台数の根拠:厚労省の「人の居場所から10㎡程度」と「風量5㎥/min程度以上」から、部屋の人数配置に対する台数を出す
- 換気は別途確保:空気清浄機はCO2を下げないため、換気設備や窓開放の計画を併記する
建築物衛生法の特定建築物に当たる場合は、2か月以内ごとの測定記録がすでにあるはずです。その実測値を稟議書に添えると、必要性の説明が具体的になります。
この記事に出てくるメーカー
- 日本エアーテック株式会社クリーン環境の専門家
- 株式会社アルモルーチェ病院の陰圧化に
- アイリスオーヤマ株式会社ダクト後付け除菌の筆頭
- ミドリ安全株式会社分煙は全国保守込みで
参照元
よくある質問
空気清浄機を置けば換気はしなくてもよいですか?
厚生労働省の資料は、窓からの外気取り入れを行いつつ空気清浄機を使用する場合の留意点を示しており、換気の代わりとは位置づけていません。二酸化炭素は空気清浄機では下がらないため、1人あたり毎時約30㎥の換気量は換気設備や窓開放で確保します。
オフィスの換気基準はどこに書いてありますか?
事務所衛生基準規則第3条と第5条です。空気調和設備または機械換気設備がある場合は、浮遊粉じん0.15mg/㎥以下、一酸化炭素10ppm以下、二酸化炭素1,000ppm以下、気流0.5m/秒以下などが定められています。延べ面積3,000㎡以上の事務所などは建築物衛生法の基準も適用されます。
厚生労働省が示す空気清浄機の使用条件は何ですか?
令和2年6月17日の資料で、HEPAフィルタ付きで風量5㎥/min程度以上の空気清浄機を使うこと、人の居場所から10㎡程度の範囲内に設置すること、外気取り入れの風向きと空気清浄機の風向きを一致させて空気のよどみを作らないこと、の3点を留意点として示しています。
【置く場所別】業務用空気清浄機メーカーおすすめ3選
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