ボーリング加工・深穴加工 · 基礎知識
BTAとガンドリルの違い|深穴加工の方式・穴径・L/D・精度を公式データで比較【2026年版】
深穴加工のBTA方式とガンドリル方式の違いを、掲載各社の公式情報から整理。切りくずの出し方、穴径での使い分け(ガンドリルφ0.5〜35mm、BTAφ12〜750mmなど)、L/Dの目安、BTAの3つの加工方法、精度と面粗度の表記、偏芯穴や止まり穴への対応をまとめました。
深い穴を明けるには、BTA方式かガンドリル方式の専用機を使うのが一般的です。2つの方式は得意な穴径が違い、選び方を間違えると見積が高くなったり、断られたりします。
この記事では、掲載各社の公式情報をもとに、2つの方式の仕組みと対応範囲、精度の違いを整理します。
2つの方式は切りくずの出し方が違う
深穴加工の一番の課題は、穴の奥で出た切りくずをどう外に出すかです。BTAとガンドリルは、切削油の流し方と切りくずの通り道が逆になっています。
| 方式 | 切削油の流れ | 切りくずの出口(藤原製作所の説明) |
|---|---|---|
| ガンドリル | ドリル内部の油穴を通って刃先から噴射 | ドリル外周のV溝を通って外部へ |
| BTA | 加工物とボーリングバーの隙間を通って刃先へ | 切屑とともにボーリングバーの中を通って戻る |
日本ビーテーエーは、BTA方式では切屑が明けられた孔の内面に接触しないため、孔の内面を害さないと説明しています。どちらの方式も、高圧の切削油が切りくずを運ぶ点は共通です。
穴径で方式を使い分ける
一般に、小径の穴はガンドリル、中・大径の穴はBTAが受け持ちます。公式に両方の範囲を出している会社を並べます。
| 会社 | ガンドリルの穴径 | BTAの穴径 |
|---|---|---|
| 不二新製作所 | φ0.5mm〜(能力はφ0.5〜φ30) | φ12.0〜φ200.0mm超 |
| ミロク機械 | Φ1〜35mm | Φ15〜500mm |
| 藤原製作所 | Φ2〜Φ32mm | Φ20〜Φ130mm |
| 加福製作所 | φ4〜φ32 | φ20〜φ300 |
| ハイタック | φ0.5〜φ30.0(ガンドリル専門) | 記載なし |
BTA専業に近い会社では、さらに大きな穴も扱います。日本ビーテーエーの明石工場は加工径10〜700mm、日本高速削孔の広島工場は4〜750mm、ダイニチ工業は内径φ946の実績を挙げています。
大径・長尺の深穴を受ける会社
直径100mmを超える穴や、長さ5mを超えるワークは、大型のBTA機を持つ会社に限られます。公式の数字を並べます。
| 会社 | 公式の穴径 | 公式の長さ |
|---|---|---|
| 日本ビーテーエー(明石) | 10〜700mm | 最大17,000mm(1号機) |
| 日本高速削孔 | 3〜750mm(工場により異なる) | 両端加工で最大10,000mm(広島) |
| ダイニチ工業 | 内径φ946の実績 | 長尺BTA 12mの実績 |
| 加福製作所 | φ20〜φ300(BTA) | 最大3750mm |
| 大阪鋳鋼所 | 3φ〜250φ | 最大5m |
日本高速削孔と大阪鋳鋼所は、長い材料を両端から加工する方法も示しています。片側からでは届かない長さでも、両端加工なら対応できる場合があります。
深さはL/D(穴径の何倍か)で考える
深穴加工の難しさは、穴の深さそのものより、穴径に対する深さの比(L/D)で決まります。公式に比率を書いている会社があります。
- 藤原製作所:ガンドリルの加工長はL/D=125
- ミロク機械:ドリル径の100〜200倍の深穴加工が可能
- 不二新製作所:ガンドリルの最大深さは径の約100倍〜300倍(材質・径により変動)
- 日本ビーテーエー:BTA方式の孔明け可能長さは孔径の100倍以上に達する
同じ深さでも、穴径が小さいほど難しくなります。図面を送るときは、穴径と深さの両方を必ず書いてください。
BTAには3つの加工方法がある
BTA加工は、材料の状態と穴の大きさで3つの方法を使い分けます。日本高速削孔と日本ビーテーエーが公式で説明しています。
| 方法 | 使う場面 |
|---|---|
| ソリッドボーリング | ムクの材料に穴を明ける。穴になる部分は全て切粉になる |
| トレパニング | 大径の穴を明けるときに、中心部(芯材)を残して加工する |
| カウンターボーリング | すでに穴が明いている材料やパイプの穴を広げる。面粗度や精度が必要な場合にも使う |
パイプ材の内径を広げたいだけなら、カウンターボーリングで済む場合があります。素材の形を伝えると、最適な方法を選んでもらえます。
精度と面粗度の公式の表記
深穴の精度は、方式と会社で書き方が違います。公式の表記をそのまま並べます。
| 会社 | 方式 | 公式の精度・面粗度の記載 |
|---|---|---|
| ハイタック | ガンドリル | 穴径精度±0.05以内、面粗度3.2S、同芯度φ0.05以内の実績 |
| ミロク機械 | ガンドリル | はめあい公差H7〜H9程度。面粗度はS45Cで8S〜16S、FCで6S〜10S、Alで3S以下 |
| 日本ビーテーエー | BTA | 基本的に一般公差。面粗度は25S程度が限界で、それ以上はホーニング |
BTAで細かい公差や良い面粗度が要る場合は、ホーニングを後工程に入れるのが前提です。ガンドリルでもH7より厳しい公差が必要なら、仕上げの方法を事前に相談してください。
難削材や樹脂への対応
深穴加工は、材料が硬かったり粘ったりすると難しくなります。公式に対応材質を広く書いている会社を挙げます。
- 日本高速削孔:チタン、アルミ、窒化鋼、ハステロイ、インコネル、銅、ベリリューム銅、MCナイロンなど樹脂の実績
- ハイタック:インコネル、ハステロイ、βチタン、Co合金、Ni合金、PEEKなどの樹脂
- ミロク機械:超硬チップでHRc40〜50位までの材料に対応
- 不二新製作所:ハステロイ、インコネル、チタン合金、アクリルなどの樹脂
熱処理後の硬い材料に穴を明けるのか、穴を明けてから熱処理するのかで、工程と費用が変わります。熱処理の順番も、見積の前に決めておきましょう。
偏芯穴・交差穴・止まり穴にも対応できる
深穴は、中心を通るまっすぐな貫通穴だけではありません。公式に特殊な穴への対応を書いている会社を挙げます。
- 日本高速削孔:ヘッド回転方式の機械で偏芯穴を加工(川崎工場と九州工場)
- 不二新製作所:偏芯加工、交差穴、止まり穴、段付き穴に対応
- 大阪鋳鋼所:センター穴だけでなく、偏芯・角度のある深穴に対応
- 日本ビーテーエー:BTA工具を自社製造し、孔の奥部のR加工やテーパーにも対応
止まり穴の底の形は、工具の先端の形で決まります。大阪鋳鋼所は、止まり穴や段付き穴は図面で寸法の基準を示すよう求めています。
まとめ:方式選びは穴径・深さ・精度の3点で
BTAとガンドリルのどちらを使うかは、多くの場合、穴径で決まります。深さの比と必要な精度を加えて、対応できる会社を絞り込みましょう。
- 穴径がおおむね30mm前後までならガンドリル、それより大きければBTAを持つ会社に相談する
- L/Dが大きいときは、公式に比率を書いている会社(藤原製作所・ミロク機械・不二新製作所)に確かめる
- 公差が細かいときは、ホーニングまで受けられるかを聞く
この記事に出てくる会社
- ダイニチ工業株式会社熱処理込みの大径深穴なら
- 株式会社不二新製作所深穴と前後工程を一括で
- 株式会社藤原製作所首都圏で中小径の深穴なら
- 株式会社ハイタック小径深穴の精度で選ぶなら
- 株式会社加福製作所中部で深孔をまとめて
- ミロク機械株式会社全国5工場で深穴をまとめて
- 日本ビーテーエー株式会社大径・超長尺の深孔なら
- 株式会社日本高速削孔長尺の深穴を3工場の能力で
参照元
よくある質問
BTAとガンドリルはどう使い分けますか?
主に穴径です。藤原製作所はBTAは中・大径穴、ガンドリルは小径穴(φ2〜φ32)に向くとしています。ミロク機械はガンドリルΦ1〜35mm、BTAΦ15〜500mmを対応範囲としています。
深穴は穴径の何倍まで明けられますか?
公式の表記では、藤原製作所がガンドリルでL/D=125、ミロク機械がドリル径の100〜200倍、不二新製作所がガンドリルで径の約100〜300倍(材質・径により変動)としています。
BTA加工で細かい公差は出せますか?
日本ビーテーエーは、BTA加工は基本的に一般公差で、細かい公差はBTA加工後のホーニングで対応するとしています。
【用途別】ボーリング加工の会社おすすめ3選
工作機械やプレスの大物部品を、横中ぐりで1品だけ仕上げたいなら
有限会社山崎製作所
横中ぐり加工に特化し横中ぐり盤11台。常温室工場で、単品・短納期・特急品にも対応
愛知県美浜町の会社で、横中ぐり盤による加工に特化しており、横中ぐり盤を計11台(東芝機械9台、倉敷機械2台)保有すると公式に書いている。精度を保つための常温室工場を2001年6月に設けた。よくある質問では単品・短納期・特急品も相談可能とし、初物1品製作がほとんどだと答えている。
長さ10mを超えるシャフトやロールに、大径の深い穴を通したいなら
日本ビーテーエー株式会社
加工径10〜700mm、ワーク長さ17m・35トン。BTA工具を自社製造し、孔奥のRやテーパーにも
1959年4月に設立した深孔明け加工の会社で、明石工場はワーク最大長さ17m、重量35トンの重量物に対応し、加工径10〜700mmのBTA工具をそろえている。1号機は加工孔径30〜700mm、加工長さ900〜17,000mm。BTA工具を自社で作り、孔の奥のR加工やテーパーにも対応するとしている。
金型の冷却穴や医療部品など、細い深穴を精度の数字で選びたいなら
株式会社ハイタック
φ0.5×30L〜φ30×1,500L、穴径精度±0.05以内。見積は当日、遅くとも翌営業日
静岡県沼津市のガンドリルマシンメーカーで、受託深穴加工の対応寸法をφ0.5×30Lからφ30.0×1,500Lと公開している。穴径精度は±0.05以内、面粗度3.2S、要求同芯度φ0.05以内の実績を挙げる。見積は依頼日当日、遅くとも翌営業日に回答するとしている。