超硬合金のメーカー · 基礎知識
超硬合金の加工方法|研削・放電加工・ラップ・鏡面の使い分けと、放電後の割れの注意点【2026年版】
超硬合金は普通の刃物ではほとんど削れないため、ダイヤモンド砥石の研削と放電加工が加工の中心です。それぞれの得意な形、放電加工後の変質層の扱い、仕上げ精度の目安を、掲載会社の公式情報で整理しました。
超硬合金は非常に硬いため、鉄やアルミのように刃物で削る加工はほとんど使えません。加工の中心は、ダイヤモンド砥石で削る研削と、電気の火花で溶かして形を作る放電加工です。
このページでは、超硬の加工方法ごとの得意な形と注意点を、掲載会社の公式情報をもとに整理します。
超硬の主な加工方法を比べる
まずは、超硬合金で使われる加工方法を一覧にします。形と求める精度で、使う方法が決まります。
| 加工方法 | 得意な形 | 注意点 |
|---|---|---|
| 研削(ダイヤモンド砥石) | 平面、円筒、R・テーパーなどの外形と内径 | 研削熱や加工圧が大きいとクラックの原因になる |
| ワイヤー放電加工 | パンチやダイの輪郭、異形の穴、細い溝 | 加工面に変質層が残ることがある |
| 形彫り放電加工 | 止まり穴、立体的なくぼみ、ギア形状 | 電極の材料と消耗が仕上がりに影響する |
| 細穴放電加工 | 小さな貫通穴 | 穴の深さと径の比に限界がある |
| ラップ・手仕上げ | 鏡面、最終の寸法合わせ | 手間がかかり、費用が上がりやすい |
サンアロイ工業は、超硬合金の加工をダイヤモンド砥石の研削加工と、ワイヤーや電極を使う放電加工で行うと説明しています。データを支給すればマシニング加工にも対応すると書いています。
研削:外形と内径を精度よく仕上げる
研削は、ダイヤモンドの砥石で表面を少しずつ削って形と寸法を出す方法です。共立合金製作所は、超硬の研削は一般の鉄鋼材料より難しく、ダイヤモンド砥石など適切な工具が必要だと説明しています。
- 大伸ダイス工業: R・テーパー・ストレートを一筆書きで研削し、ラップ加工まで研削盤で仕上げる。R形状公差±0.01、真円度0.16μm、面粗さRa0.015μmの実績
- 日本ハードメタル: 研削加工で0.001mmオーダーを受ける
- 関西超硬合金: 加工部門に研削機械15台
- シルバーロイ: プロファイル研削盤や高精度平面研削盤を導入
- トーカロイ: 丸物・板物の研磨・研削加工
大伸ダイス工業は、従来は形彫り放電の後に内径を磨いて仕上げていた形状を、研削だけで仕上げることで精度を安定させたと書いています。放電加工を減らせる形なら、研削で仕上げる選択肢も検討できます。
研削で注意したいのは熱です。砥石の当て方や送りを誤ると、仕上げの段階でも細かな割れが入ることがあるため、超硬の研削に慣れた会社を選ぶことが大切です。
放電加工:硬さに関係なく複雑な形を作る
放電加工は、電極と材料の間に火花を飛ばして少しずつ溶かす方法です。材料の硬さに左右されにくいため、超硬の複雑な形で多く使われます。
| 会社 | 放電加工についての公式の記載 |
|---|---|
| 阪神精工 | ワイヤーカット・形彫り・細穴放電(細穴はφ0.3mm〜)。超硬部品を1個・小ロットから、異形穴・細溝・キー溝など |
| トーカロイ | ワイヤー・型彫り放電加工で、さまざまな形状に対応 |
| 関西超硬合金 | 加工部門に放電加工機4台 |
| 大伸ダイス工業 | 放電加工はミクロンレベルで対応。納期は加工内容によるが最短2日などの短納期も可 |
阪神精工は、銅グラファイト電極を使って超硬のヘリカルギア形状を形彫り放電で加工した事例を載せています。刃物では作れない形でも、放電加工なら形にできる場合があります。
放電加工の後に残る変質層に注意する
放電加工は便利な一方で、加工面に熱の影響が残ります。共立合金製作所は、放電加工後の表面には変質層や微細なクラックが残る場合があると説明しています。
- 高い耐久性や信頼性が必要な場合は、研磨などで変質層を除去してから使う(共立合金製作所)
- 放電加工をする前提なら、放電加工向けの材種を選ぶ(共立合金製作所はA10Wを推奨)
- 研削でも、研削熱や加工圧が大きいと熱クラックの原因になる(共立合金製作所)
パンチやダイが使い始めてすぐに欠ける場合、放電加工の変質層が原因のこともあります。材種と仕上げ方の両方を見直すと、寿命が延びる可能性があります。
放電加工の電極も、仕上がりを左右する
形彫り放電加工では、電極の材料によって加工の速さと仕上がりが変わります。シルバーロイは、超硬合金の放電加工に使う電極材を在庫しています。
| 電極材 | シルバーロイの説明 |
|---|---|
| 銅タングステン | 超硬合金の粗加工および仕上げ放電加工用。能率やコストのバランスがよい |
| 銀タングステン | 超硬合金の精密仕上げ用。低消耗で仕上げ精度がよい |
放電加工を外注する場合は、電極の手配も加工会社に任せるのが一般的です。自社で放電加工をする場合は、素材と電極を同じ会社から手配すると話が早く進みます。
鏡面と最終仕上げ
金型の成形面やスリッターの刃先などは、鏡面に近い仕上げが求められます。研削の後に、ラップや手仕上げで面を整えます。
- トーカロイ: 加工機では難しい磨きも手で行い、丸物・板物ともに形状・精度を保って鏡面加工
- 大伸ダイス工業: ラップ加工まで研削盤で仕上げ、面粗さRa0.015μmの実績
- 共立合金製作所: 表面粗さを含めて図面で加工方法を検討
鏡面は手間がかかるため、必要な面だけに指定すると費用を抑えられます。図面では、面ごとに表面粗さを指示してください。
ねじ穴など、焼結前に作る形もある
超硬合金は焼結した後に加工するのが難しいため、焼結前の柔らかい状態で形を作っておく方法もあります。素材を注文する段階で決めておく必要があります。
- 共立合金製作所: ねじ穴は焼結前のタップ加工(直タップ)を推奨。ピッチ精度が必要なら放電タップかブッシュのろう付け
- サンアロイ工業: 焼結で約20%収縮するのを見越して成形加工
- トーカロイ: 素材からつくれるため、最終製品に近い形状で納品
最終形に近い形で素材を作れば、後の研削や放電の量が減ります。素材から作る会社に、形状を早めに伝えるのが効果的です。
加工方法を決めるときの確認リスト
加工方法は加工会社が提案してくれますが、依頼する側も次の点を伝えておくと、最適な方法を選んでもらいやすくなります。
- 精度が必要な寸法と、表面粗さの指示
- 使い方(打ち抜き、成形、切断など)と、かかる力
- 放電加工の面をそのまま使ってよいか、研磨が必要か
- ねじ穴など、素材の段階で作れる形があるか
- 数量(1個か、繰り返し発注か)
同じ形でも、数量と精度で最適な加工方法は変わり、費用と日数にも差が出ます。複数の方法を持つ会社に相談すると、比較した提案がもらえます。
この記事に出てくる会社
- 大伸ダイス工業株式会社超硬の精密加工・修理に
- 阪神精工株式会社超硬の放電加工を1個から
- 関西超硬合金株式会社素材と加工を一つの工場で
- 株式会社共立合金製作所材種から選べる素材メーカー
- 日本ハードメタル株式会社工具用丸棒を1本から
- サンアロイ工業株式会社特性表が詳しい素材メーカー
- 株式会社シルバーロイ素材を当日発送できる
- 株式会社トーカロイホールディングス素材から鏡面まで一貫
参照元
よくある質問
超硬合金は普通に削れますか?
刃物で削る加工はほとんど使えず、ダイヤモンド砥石の研削と放電加工が中心です。サンアロイ工業はこの2つで加工すると説明し、データ支給によるマシニング加工にも対応すると書いています。
放電加工した超硬がすぐ欠けるのはなぜですか?
放電加工面の変質層や微細なクラックが原因のことがあります。共立合金製作所は、高い耐久性が必要な場合は研磨などで変質層を除去してから使うこと、放電加工をするならA10Wのような放電加工向けの材種を選ぶことを勧めています。
超硬の研削でどのくらいの精度が出ますか?
公式の記載では、大伸ダイス工業がR形状公差±0.01、真円度0.16μm、面粗さRa0.015μmの実績を示し、FAQで±0.001に対応すると答えています。日本ハードメタルは研削加工で0.001mmオーダーを受けると書いています。
【用途別】超硬合金メーカーおすすめ3選
金型をつくるための超硬素材を、1個から急いで手に入れたいなら
株式会社シルバーロイ
角形状の素材は午前10時30分までの注文で当日発送。1個から製作、φ0.08mmの孔開けも
兵庫県加西市の超硬合金メーカーで、午前10時30分までに注文した角形状の超硬合金素材は当日発送、それ以降と丸形状は翌日発送と公式に書いている。FAQでは1個からでも製作できると答え、材質表には「JIS記号」の欄を設けてVM20・VM30・VM40などを示し、用途例も載せている。
超硬のダイスや金型部品を、ミクロン精度で加工・修理したいなら
大伸ダイス工業株式会社
±0.001、真円度0.16μm。丸はφ0.3〜400mm程、在庫品は最短1〜2週間、図面なし・修理も
大阪市平野区で1965年に創業した超硬合金の加工会社で、FAQで±0.001の精度に対応し、自社設備で丸製品は最小径0.3mmから最大径400mm程、角製品は750×300×400tまでと答えている。R形状公差±0.01、真円度0.16μm、面粗さRa0.015μmの実績も公開している。
割れや欠けが出る金型部品を、材種の選び方から見直したいなら
株式会社共立合金製作所
自社開発の材種にJIS規格の分類を併記。放電加工向けA10W、試作・寿命確認にも対応
兵庫県西宮市で1938年に創業したエバーロイのメーカーで、材種一覧にKD20は「JIS規格:VF-40」、A10Wは「JIS規格:VM-30」などと分類を併記している。FAQではワイヤー放電や型彫り放電を行う場合にA10Wを勧め、試作品や少量の部品、量産前の材種評価や寿命確認の試作にも対応すると答えている。