ジュエリーOEM · 基礎知識
ロストワックス鋳造とは?原型・ゴム型・鋳造・仕上げの工程
ジュエリーの量産で使われるロストワックス鋳造の工程を、原型製作からゴム型、ワックス、鋳造、仕上げまで工場とメーカーの公開情報をもとに解説します。
このページでは、ジュエリーOEMの主流であるロストワックス鋳造の工程を説明します。根拠は鋳造工場と3Dプリンタメーカーが公開している情報です。
工程を知ると、見積もりの内訳と納期の理由が理解しやすくなります。
ロストワックス鋳造とは
ワックスの模型を石膏で包み、焼いてワックスを溶かし出し、できた空洞に地金を流し込む製法です。日本アイボリーは「ワックスが溶けた空洞に、溶かした地金を流し込み」形を作ると説明しています。
同じゴム型からワックスを何度も作れるため、同じ形を数量分そろえるのに向いています。
- 複雑な形や細かい模様を再現しやすい
- ゴム型があれば追加生産ができる
- 金型を使う圧造や切削に比べ、初期費用が低い
原産国の判定にも関わる製法です。日本ジュエリー協会の表示規定では、ロストワックス鋳造の原産国は本体の鋳込み工程を行った国で決まります。
工程の流れ
工程は、原型、ゴム型とワックス、鋳造、仕上げの4段階に分かれます。日本アイボリーの製造工程ページの説明に沿って順に見ていきます。
- 原型を作る
- ゴム型を取り、ワックスを複製する
- ツリーに組んで埋没し、鋳造する
- 研磨、石留め、めっきをして検品する
工程1:原型を作る
最初に製品の元となる原型を作ります。日本アイボリーは、原型作りをCADなどの技術と職人の熟練作業が融合する工程と説明しています。
原型の作り方は主に3つです。データがあるかどうかで選びます。
- 手作り原型:ワックスや地金を職人が削って作る
- CAD+切削:RhinocerosやJCADで設計し、CNCで切削する
- CAD+3Dプリント:レジンやワックスで造形する
日本アイボリーはNC彫刻を切削時間で課金し、1時間以内6,000円、12時間以内45,600円と公開しています。STL形式で出力できれば切削費を抑えられるとも記載しています。
3Dプリントの場合は、鋳造用レジンを選びます。FormlabsのTrue Castレジンは最大5mmの厚みで鋳造でき、灰分含有量0.03%で焼成時に燃え尽きると説明されています。
工程2:ゴム型とワックス
原型からゴム型を取り、ゴム型にワックスを流し込んでワックス型を作ります。日本アイボリーは、これが製品の元になると説明しています。
ゴム型には焼成するタイプと常温硬化のタイプがあり、縮みと耐久性が異なります。
| ゴム型の種類 | 縮み | 特徴(日本アイボリー公開情報) |
|---|---|---|
| 量産シリコンゴム型 | 約5% | 140度で焼成、量産向き |
| 常温シリコンゴム型 | ほとんどなし | 耐久性が劣り、料金は約2倍 |
ゴム型は消耗品です。日本アイボリーは、繰り返すうちにゴムの一部が切れて使えなくなることがあるため、原型の保管を勧めています。
工程3:ツリー組みと鋳造
ワックス型を木の枝のように組み、石膏(埋没材)に埋めて焼きます。熱で石膏が固まり、ワックスは溶けてなくなります。
空洞に溶かした地金を流し込み、冷めてから石膏を落とします。Formlabsは、3Dプリント原型の焼成で150℃、300℃、732℃と段階的に昇温する例を示しています。
- ワックス型をツリー状に組み立てる
- 石膏に埋没し、焼成でワックスを除去する
- 地金を流し込み、冷却後にツリーから切り離す
- 日本アイボリーは鋳造後の電解研磨を無料で行うと案内
工程4:仕上げと検品
鋳造したままの地金は表面が粗いため、研磨して輝きを出します。日本アイボリーは、形が歪まないよう力加減に気を付けて磨くと説明しています。
最後に1点ずつ検品し、基準を満たしたものだけを出荷します。石留めやめっきは、この段階の前後に入ります。
- 湯道(地金の通り道)の処理
- 研磨(鏡面、マット、いぶしなど)
- 石留め、めっき、刻印
- 検品と梱包
仕上げ料金を公開している例もあります。日本アイボリーは完成仕上げを基本料金1,800円+キャスト後重量×(銀地金相場+224円)とし、納期は14日間前後と案内しています。
同社は鏡面、マット、シルバー向けのいぶしを仕上げの種類として挙げています。仕上げの指定は、原型確認の段階で決めておきます。
3Dプリント原型と直接鋳造
3Dプリントした原型を、ゴム型を経ずにそのまま埋没して鋳造する方法もあります。Formlabsは鋳造用レジンを3種類公開し、原型を24時間以内に作れると説明しています。
1個から数個の製作や、試作品の確認に向く方法です。数量が増える場合は、ゴム型を取る方が一般的です。
| 方法 | 向く数量 | 特徴 |
|---|---|---|
| 直接鋳造 | 1個〜少数 | 金型不要、原型が焼失する |
| ゴム型鋳造 | 数十個以上 | 同じ形を繰り返し作れる |
Formlabsは、量産用のワックス型には引裂強さの高い有機ゴムが好まれ、繊細な3Dプリント原型にはRTVシリコンが向くと説明しています。
鋳造の受付サイクルと納期の例
鋳造は地金ごとにまとめて行うため、工場は地金別に受付日と仕上がり日を決めていることがあります。日本アイボリーは地金ごとのサイクルを公開しています。
K18ホワイトゴールドやPt900では、鋳造の回数が月2回に限られる例もあります。納期を読むときは、このサイクルを前提にします。
| 地金(日本アイボリー公開) | 受付と仕上がり |
|---|---|
| AG925(ワックスから) | 月曜午前着→水曜上がり、水曜午前着→金曜上がり |
| AG925(ゴム型から) | 金曜午前着→翌水曜上がり |
| K18YG・PG | 毎週月曜午前着→金曜上がり |
| K18WG・PT900・銅 | 月2回、月曜午前着→その週の金曜上がり |
| K10YG・PG | 月2回、月曜午前着→その週の金曜上がり |
同社は鋳造後の湯道処理に2〜3営業日、リングの真円出しに3営業日、バレル研磨に2営業日と工程別の日数も公開しています。鋳造そのものより、前後の工程が納期を左右します。
鋳造で起きやすいトラブル
鋳造には、工場が事前に免責を明示している事故があります。日本アイボリーは、地金の注入圧力でキャスト枠が破裂する場合があり、その際の弁償はできないと公開しています。
重量の見込み違いも起きやすいトラブルです。同社は、ワックス重量の約10倍がシルバー925の重量になると案内しています。
- 枠の破裂:預けた原型やワックスが失われることがある
- 縮み:焼成するゴム型は約5%縮む(日本アイボリー)
- 重量:ワックスの約10倍が銀の完成重量になる
- 肉厚不足:ワックスで0.7mm未満は鋳造できない例がある
- 石の破損:預かり石は鋳造や仕上げで割れるリスクがある
これらは仕様を決める段階で防げるものが多いです。厚み、サイズ、石の扱いを工場と先に確認しておきます。
この記事に出てくるメーカー
- 日本アイボリー株式会社料金体系が最も透明な鋳造工場
参照元
よくある質問
ロストワックス鋳造で作れるジュエリーの最小の厚みはどれくらいですか?
工場ごとに条件があります。日本アイボリーはワックスで最低0.7mmの厚みが必要とし、鋳造可能な大きさはシルバーで最大縦13cm×横6cmと公開しています。
ゴム型は何回使えますか?
回数の保証はありません。日本アイボリーはゴム型を消耗品と位置づけ、繰り返すうちにゴムの一部が切れて使えなくなることがあると説明しています。原型を保管しておくと作り直せます。
3Dプリントの原型はそのまま鋳造できますか?
できます。Formlabsは鋳造用レジンで作った原型を直接埋没して鋳造するワークフローを公開しています。数量が多い場合はゴム型を取る方法が一般的です。
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