ジュエリーブランド立ち上げ支援 · 基礎知識
ブランドのデザイン・3Dデータ・原型は誰のものか|秘密保持契約と型の権利を立ち上げ前に決める
ジュエリーブランドを立ち上げるとき、ブランド名・デザイン・3Dデータ・原型や型の4つが誰のものになるかを、製造会社の公式記載とともに整理しました。秘密保持契約の結び方、類似品にしないための確認、ブランド名の商標、発注書に書く項目までまとめています。
ブランドを立ち上げると、名前やデザインのほかに、3Dデータや原型といった形のある財産が手元に残ります。ところが、それらが依頼者のものになるのか製造会社のものになるのかは、会社と契約によって違います。
このページでは、立ち上げの段階で決めておくべき権利の扱いを整理します。会社の事実は各社の公式サイトの記載に、制度の説明は特許庁の公式ページにもとづきます。
立ち上げで持ち物になる4つ
ジュエリーブランドの立ち上げでは、次の4つが生まれます。それぞれ、誰が持ち、誰が使えるのかを決めておく必要があります。
| 持ち物 | 中身 | 確かめること |
|---|---|---|
| ブランド名・ロゴ | 名前、マーク | 商標を出願するか、他人の登録と重ならないか |
| デザイン | 形、模様、組み合わせ | 製造会社が別の依頼者に同じ形を使わないか |
| 3Dデータ | CADのデータ | 受け取れるか、費用はかかるか |
| 原型・型 | 原型、ゴム型 | 保管期間、返却の可否、別の工場へ持ち込めるか |
この4つは、製造会社を変えたいときや、ブランドを譲るときに問題になります。最初の契約で決めておくと、あとで揉めずに済みます。
各社が公式に書いている、データと型の扱い
デザインやデータ、型の扱いを公式サイトに書いている会社を並べます。書き方は会社ごとにかなり違います。
| 会社 | 公式記載 |
|---|---|
| GEMILYA | 起こした3D CADデータと原型は同社が保管して追加生産に使う。依頼のために作ったデザインや預かったデータは、依頼製作以外やほかの人の製作には使わない。データの譲渡は有償。原型は希望があれば返却 |
| スペース | 預かったデザインデータは受託した製造・試作の目的に限って扱い、類似品や流用品には使わない。デザインや金型の権利帰属、型の保管・返却条件は個別の契約内容を確認して決定 |
| 石友 | 社内一貫生産のため、依頼主のデザインや商品が外部に漏れることはないと記載 |
多くの会社は、データや型の扱いを公式サイトに書いていません。書いていない会社に頼む場合は、見積の段階で質問し、答えを書面で受け取ってください。
秘密保持契約を結べるか
発表前のデザインやブランド名を製造会社に渡すときは、秘密保持契約(NDA)を結ぶと安心です。公式に対応を書いている会社を並べます。
- GEMILYA: 未発表の企画やロゴを預かる場合は秘密保持契約を結んでから進める。依頼者の雛形でも締結できる
- スペース: 相談内容に応じて秘密保持契約(NDA)を締結
- 石友: 工程を外部に出さない社内一貫生産で、デザインが外に漏れないことを強みにする
NDAの雛形を自分で用意できない場合は、製造会社の雛形を使っても構いません。対象となる情報、期間、終了後の扱いの3点は必ず確認してください。
類似品にしないための確認
参考にしたい既存のジュエリーがあると、似た形を作りたくなります。ただし、他社の商品をそのまま複製する依頼を受けない製造会社もあります。
- GEMILYA: 複製・改変を受けるのは、依頼者が権利を持つもの、または権利者の許諾があるものに限る。許諾範囲は必要に応じて書面で確認
- 石友: OEMの問い合わせページに、類似商品の製作は受けられないと記載
- トラスト: 弁理士と連携し、不正競争防止法にも配慮していると記載
参考画像は雰囲気を伝えるものとして渡し、形そのものは自分のブランドとして作り直す前提で相談してください。独自の要素を言葉で伝えると、提案もそちらに寄っていきます。
ブランド名は、商標で守る
ブランド名やロゴは、デザインとは別に商標として守ります。特許庁の公式ページは、商標と出願について次のように説明しています。
- 商標権を取得するには、特許庁へ出願して商標登録を受けることが必要
- 登録を受けないまま使っていると、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その商標権の侵害にあたる可能性がある
- 同一または類似の商標の出願があった場合、先に使っていたかにかかわらず、先に出願した者に登録を認める(先願主義)
- 商標権の存続期間は設定登録の日から10年で、更新の申請により何度でも更新できる
ブランド名を刻印や箱に入れる前に、調べて出願の要否を決めておくと安全です。調べ方は用途別の商標のページで詳しく説明しています。
製造会社を変えたくなったときに困ること
ブランドが育つと、量産の数や価格の都合で製造会社を変えたくなることがあります。そのとき、原型やデータを持ち出せるかどうかで、作り直しの費用が大きく変わります。
| 困ること | 事前に確かめること | 公式記載の例 |
|---|---|---|
| 原型が手元にない | 返却してもらえるか、送料は誰が持つか | GEMILYA: 希望があれば原型を返却 |
| ゴム型が使えない | ゴム型は消耗品で、劣化すると作り直しになる | GEMILYA: 劣化した場合は原型から作り直す費用が発生することがある |
| 3Dデータがない | データを受け取れるか、形式と費用 | GEMILYA: データの譲渡は有償 |
| 型の権利があいまい | 型を別の工場で使ってよいか | スペース: デザインや金型の権利帰属、型の保管・返却条件は個別の契約で決定 |
別の工場で作るときは、持ち込んだ原型やデータを受け入れてくれるかも確かめる必要があります。スペースは、CADデータや原型がある場合は確認のうえ対応可否を判断し、見積を出すとQ&Aで答えています。
インフルエンサーや芸能人の名前で出すブランド
本人の名前や肖像を使うブランドでは、デザインの権利に加えて、名前を使う許可を誰が出すのかを整理します。事務所に所属している場合は、事務所との取り決めも関わります。
- JEWELRY TAKEDA: タレント・インフルエンサーブランドの製品開発を実績に挙げる(社名は非公表)
- ラッキーアンドカンパニー: 取引は法人格のある事業者のみだが、インフルエンサー・芸能事務所所属者は相談可との記載がある
- ブランド名を本人の名前にする場合も、商標の出願を誰の名義にするかを決める
本人が辞めたり事務所を移ったりしたときに、ブランドを続けられるかは名義で決まります。名義と権利の持ち主を、立ち上げの時点で書面にしておいてください。
発注書に書き込む権利の項目
最後に、発注書や契約書に書いておきたい項目です。口頭で聞いた答えも、この形で書面に残してください。
- デザインの帰属: 依頼者のデザインを製造会社がほかに使わないこと
- 3Dデータ: 受け取れるか、形式と費用
- 原型・型: 保管期間、期間後の扱い、返却の可否と送料
- 秘密保持: 対象、期間、終了後の扱い
- 事例としての公開: 製作事例に載せてよいか
- 工場への共有: 製造に必要な範囲の情報だけを渡すか
GEMILYAは、工場へ共有するのは製造に必要な範囲の情報だけと書いています。こうした方針を公開している会社は、質問への答えも具体的に返ってきやすくなります。
この記事に出てくる会社
- GEMILYA(ジェミリア)ラフ1枚から、1個のサンプルで始める
- 株式会社石友秘密を守って貴金属ブランドを
- JEWELRY TAKEDAインフルエンサーブランドを1個から
- 株式会社ラッキーアンドカンパニー法人ブランドをコンセプトから
- 有限会社スペース売れ筋データで最初のコレクションを
- 株式会社トラスト企画ゼロから提案で始める
参照元
よくある質問
OEMで作ったデザインは自分のものになりますか?
会社と契約によります。GEMILYAは依頼のために作ったデザインやデータを依頼製作以外やほかの人の製作には使わないとし、ブランド名は依頼者のものと書いています。スペースはデザインや金型の権利帰属を個別の契約で決めるとしています。
3Dデータはもらえますか?
もらえる会社とそうでない会社があります。GEMILYAは、起こした3D CADデータは同社で保管して追加生産に使い、データの受け渡しを希望する場合は形式と費用を個別に案内する(有償)としています。
ブランド名は先に使っていれば守られますか?
守られるとは限りません。特許庁は、登録を受けないまま使っていると、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば侵害にあたる可能性があると説明しています。日本は先に出願した者に登録を認める先願主義です。
【条件別】ジュエリーブランド立ち上げ支援おすすめ3選
ラフ1枚から、サンプル1個で始めるなら
PRGEMILYA(ジェミリア)
OEMもODM型も同じ窓口。個人も法人と同じ条件
図面や3Dデータを持ち込むOEMと、手描きのラフや参考画像から形を起こすODM型の両方を、サンプル1個から同じ窓口で受ける。最低ロットはなく、SV925・K18・K10・Pt900・真鍮の5種を1個から作れる。個人・個人事業主・法人で対応内容に差はないと公式に明記し、未発表の企画は秘密保持契約を結んでから預かる。
売れ筋の情報を取り入れて、素材別の小ロットで組むなら
有限会社スペース
卸の商品動向分析でデザインを提案。K10・K18・Ptは1色6個から
上野のOEM・ODM会社で、約20年で200社ほどと取引。卸事業での商品動向の分析・予測をもとにデザインを提案でき、個人でも条件に同意すれば取引できるとQ&Aで答えている。最小ロットは素材ごとに公開されていて、K10・K18・プラチナが1色6個から、SV925が12個から、合金が30個から(いずれも国内生産)。
K18・プラチナで本格的に始め、テスト販売から量産するなら
株式会社ダイアート三枝
コンセプトと価格帯から素材・製法を提案。甲府と高岡の自社工場で
1966年創業(法人設立1976年)、甲府の本社工場と高岡工場で、デザイン・CAD・原型・鋳造・研磨・石留め・検品まで社内一貫。ISO9001認証、貴金属装身具製作技能士22名。イメージやラフ案の段階から相談でき、ブランドコンセプトや販売価格帯に合わせて素材・仕様・製造方法を提案する。まずは少量のサンプルやテスト販売用の製造から相談できるとFAQにある。