撹拌脱泡機 · 基礎知識
撹拌脱泡機は真空型と大気圧型のどちらを選ぶか|到達真空度・溶剤・シリンジ充填で判断する【2026年版】
自転公転式の撹拌脱泡機には、大気圧で遠心力だけで泡を抜く型と、真空ポンプを付けて減圧しながら処理する型があります。掲載メーカーの公式仕様から、真空型が要る場面、要らない場面、確認すべき数値をまとめました。
撹拌脱泡機を選ぶとき、最初に迷うのが真空型にするかどうかです。真空型は脱泡力が上がる一方で、装置が大きくなり、材料によっては向きません。
大気圧型と真空型の違いを整理する
自転公転式は大気圧でも遠心力で泡を抜けます。真空型は、その動作を減圧した中で行い、より細かい泡まで抜きます。
| 項目 | 大気圧型 | 真空型 |
|---|---|---|
| 脱泡のしくみ | 遠心力で気泡を中心に集め、表面に押し上げて破泡 | 同じ動作を減圧中で行い、気泡を膨らませて抜く |
| 向く材料 | 溶剤が揮発しやすい材料、真空で成分が変わる材料 | 微細な泡も許されない封止材・接着剤など |
| 装置 | 小型卓上機が多い | 真空ポンプが付く。クラボウKK-V350WEは消費電力約2.0kW |
共立精機は、自転公転の動作を真空中で行えば、さらに微細な気泡まで脱泡できると説明しています。どこまでの泡を許すかを、先に品質基準で決めておくと選びやすくなります。
大気圧型と真空型を両方そろえるメーカー
同じメーカーで両方を比べられると、デモで違いを確かめやすくなります。掲載メーカーの大気圧型と真空型の範囲は次のとおりです。
| メーカー | 大気圧型 | 真空型 |
|---|---|---|
| シンキー | AR-100(140g)〜ARX-5000TWIN(5kg×2) | ARV-310P(310g)〜ARV-10kTWIN(14.5kg×2) |
| EME | A-mini350〜UFO-A25 | V-mini330(330g)〜UFO-36(50kg) |
| クラボウ | KK-250S〜KK-10000(10kg×2カップ) | KK-V350WE(350g×2)、KK-V1000W(1kg×2) |
| 共立精機 | HM-50SE〜HM-20000W | HM-200WV〜HM-2500WV(2,500ml×2) |
| 写真化学 | SK-300SⅡ〜SK-10000T | SK-300TVS-A〜SK-10000TV |
大容量の真空型が必要なら、EMEのUFO-36(18L容器×2個掛、最大積載量50kg)やシンキーのARV-10kTWIN(14.5kg×2)に加え、20L×4個の三星工業HR200も真空仕様の型(HR200-04A/V)を載せています。真空型の上限はメーカーによって大きく違います。
真空型で確認したい仕様の数値
真空型を比べるときは、到達できる真空度と、真空を制御できるかを見ます。数値を公式に出しているメーカーは多くありません。
- 到達真空度: クラボウKK-V350WEは真空度能力100Pa、100Paまで2分と記載(KK-V1000Wは6.7Pa)。三星工業はHR003-04A/Vなど標準タイプで到達真空度40Pa、RSタイプで100Pa(材料なしの状態)と記載
- 真空度の設定: クラボウは各ステップごとに真空度kPaを任意設定できる
- 減圧する範囲: クラボウは容器回転領域のみを減圧する独立チャンバーと記載
- 排気速度: クラボウKK-V350WEは100L/120L/分(50/60Hz)
製品ページに数値がないメーカーは、カタログや資料請求で確認してください。真空度を段階的に変えられるかは、突沸や吹きこぼれを防ぐうえで大事な点です。
真空を使わない方がよい材料もある
真空をかけると、揮発しやすい成分が抜けて材料の性質が変わることがあります。クラボウは、材料成分が変わるので真空装置を使いたくないという課題を公式に挙げ、遠心力と容器の自転調整で真空を使わずに脱泡できると説明しています。
- 溶剤を含む塗料やインキ
- 水分や低沸点成分を含む材料
- 減圧で発泡しやすい材料
こうした材料では、まず大気圧型でテストし、泡が残るときだけ真空型を試す順番が安全です。EMEは、運転中の吹きこぼれの心配はないとしつつ、真空脱泡に対応した容器のフタも用意しているとFAQで答えています。
シリンジ充填まで真空でつなぐ
封止材や接着剤は、撹拌脱泡したあとにシリンジへ移す工程で泡が入り直すことがあります。ここを真空でつなぐ装置もあります。
- EME: 遠心力充填専用機(V10-8ight、V30-6th、VCF)。真空下で容器からシリンジへ遠心充填するため気泡の再混入はないとFAQで説明
- 三星工業: 小型・大型の真空シリンジ充填機、真空シリンジ遠心脱泡機
- 写真化学: 自動シリンジ充填機SJ-1200
- シンキー: 製品ラインにシリンジ充填機(導入検討ページに記載)
シリンジの中で直接撹拌するのは難しいと、EMEはFAQで説明しています。内径の大きい容器で撹拌脱泡してから、専用治具で充填するのが基本の流れです。
真空型を入れるときの設備と保守
真空型は真空ポンプと真空槽が加わるぶん、設置と保守で確かめることが増えます。メーカーの設計の違いも公式に書かれています。
- クラボウ: 磁性流体シールで減圧運転時だけ独立チャンバーを遮断し、回転部のみを減圧。モーター・電気系統への真空遮断構造
- トリイ: 真空ポンプ(50ℓ/分)を内蔵した一体型で、省スペース・軽量
- 日本ソセー工業: ZEROMAZE-20は真空ポンプを外置きにして、オイルの交換や管理を容易にした
- EME: 小型〜中型はほぼメンテナンスフリー、大型は条件に応じて技術者が保守(FAQ)
ポンプのオイル交換や消耗品の費用は、見積の段階で年間の目安を聞いておくと安心です。設置場所の電源(クラボウKK-V350WEはAC200〜240V)も事前に確認してください。
真空型の要否を決める目安
真空型が要るかは、最終製品で泡が何を引き起こすかで決まります。判断の目安を整理します。
- 泡が電気的な不良や強度の低下につながる封止材・接着剤: 真空型を候補に入れる
- シリンジで細く吐出する材料: 撹拌脱泡から充填まで真空でつなぐ構成を検討する
- 溶剤や水分を含み、成分を変えたくない材料: 大気圧型から試す
- 高粘度で大気圧では泡が抜けにくい材料: 真空型と大気圧型を比べる
どの場合も、決め手は自社の材料でのテスト結果です。目安はあくまで候補を絞るために使ってください。
判断に迷ったら、両方を同じ材料で試す
真空型が要るかどうかは、最終的には自社の材料で比べるのが確実です。デモの段取りは次のとおりです。
- 同じメーカーで大気圧型と真空型の両方を試せるかを聞く
- 同じ材料・同じ容器・同じ処理時間で比べる
- 泡の残り方を、断面や硬化後の外観、顕微鏡で確認する
- 真空型で成分が変わらないか、重量や粘度の変化も見る
シンキーのアプリケーションラボのように評価機器があれば、処理後の状態をデータで受け取れます。デモの頼み方は別の記事で詳しく扱います。
この記事に出てくるメーカー
参照元
よくある質問
大気圧型でも泡は抜けますか?
抜けます。自転公転式は遠心力で気泡を中心に集めて表面に押し上げ、破泡させます。より細かい泡まで抜きたい場合に真空型を選びます。
真空型の到達真空度はどれくらいですか?
公式に数値を出している例では、クラボウのKK-V350WEが真空度能力100Pa、100Paまで2分と記載しています。ほかのメーカーはカタログで確認してください。
溶剤を含む材料に真空型を使ってもいいですか?
成分が抜けて性質が変わるおそれがあります。クラボウは、遠心力と容器の自転調整で真空を使わずに脱泡できると説明しています。大気圧型で試してから判断してください。
【用途別】撹拌脱泡機メーカーおすすめ3選
研究開発の少量試料を、自分の材料で試してから選ぶなら
株式会社シンキー
大気圧型と真空型を140g機から14.5kg×2の量産機まで。評価機器のあるラボでテストできる
自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎の開発元。大気圧タイプは最大積載量140gのAR-100から5kg×2のARX-5000TWINまで、真空タイプは310gのARV-310Pから14.5kg×2のARV-10kTWINまでそろえる。デモは本社アプリケーションラボでのテスト、材料預かり、デモ機貸出(通常1週間程度)の3方法から選べる。
接着剤・封止材を真空で脱泡し、シリンジ充填までつなぐなら
株式会社EME
真空式は330gから18L容器×2個掛(50kg)まで。遠心力のシリンジ充填機も自社製
自公転式の真空撹拌脱泡ミキサーを、V-mini330(最大積載量330g)から18L容器×2個掛で最大積載量50kgのUFO-36までそろえる。撹拌脱泡した材料を真空下で遠心充填する専用機も自社製で、FAQでは気泡の再混入はないと説明。装置はクリーンクラス1000に対応し、小型機の貸出は初回1週間無償とFAQに記載。
ペール缶のまま量産し、無償デモで確かめてから買うなら
共立精機株式会社
50mLからペール缶2缶同時(20,000ml×2)まで。各機種でデモ機を無償貸出
自転公転式撹拌脱泡機ハイマージャを、最大50mLのHM-50SEから、ペール缶を2缶同時に撹拌できるHM-20000W(20,000ml×2)までそろえる。真空タイプは4機種。最大400Gの遠心力、自転・公転比率110通りのメカ式変速モデルもある。各製品ページでデモ機無償貸出中と案内し、加工テストも随時受け付ける。