5軸マシニングセンタ · 基礎知識
5軸マシニングセンタの構造3種|トラニオン・主軸傾斜・テーブル旋回の違いと向くワーク
5軸マシニングセンタの構造(トラニオン型、主軸傾斜型、テーブル旋回+主軸傾斜型、横形・門型)の違いと向くワークを、掲載16社の公式の機種例と積載・寸法の数値で整理します。
5軸マシニングセンタは、直線3軸に回転2軸を足した工作機械です。回転2軸をテーブル側に持たせるか、主軸側に持たせるかで、載せられるワークの大きさと重さが変わります。
このページでは、掲載16社の公式サイトに書かれた機種を例に、構造の違いと向くワークを整理します。
回転2軸をどこに持たせるかで3つに分かれる
構造は大きく、テーブル側で傾けて回す型、主軸側で傾ける型、テーブルで回して主軸で傾ける型の3つに分かれます。どれが優れているかではなく、ワークの大きさと重さに合うかで選びます。
| 構造 | 回転2軸の場所 | 公式の機種例 |
|---|---|---|
| トラニオン型(テーブル傾斜・回転) | テーブル側に2軸 | オークマ MU-V、キタムラ機械 Mytrunnion、ニイガタマシンテクノ HN-5X、牧野フライス製作所 D300・a630iT |
| 主軸傾斜型(主軸側に2軸) | 主軸側に2軸 | 牧野フライス製作所 V80S・V90S・V100S(A軸傾斜・C軸回転)、新日本工機 RB-FⅡ(門型の5軸ヘッド) |
| テーブル旋回+主軸傾斜型 | テーブルに1軸、主軸に1軸 | 新日本工機 CMV(テーブル回転・主軸ティルト)、ジェイテクト FH630SX-5A(傾斜旋回式主軸) |
同じメーカーでも、ワークの大きさに応じて構造を使い分けています。牧野フライス製作所は、立形の小〜中物にトラニオン構造のD300、自動車の大物金型に主軸旋回のV80Sを用意しています。
トラニオン型:テーブルごとワークを傾ける
トラニオン型は、テーブルを両側または片側で支えて傾け、さらにテーブルを回します。オークマのMU-Vは両端支持のトラニオンテーブルで、トラニオンがスイングしたまま工具交換ができると説明しています。
- オークマ MU-5000V/6300V/8000V:テーブルø500〜ø800×630幅、主軸10,000/6,000min-1
- キタムラ機械 Mytrunnion-4G/5G:5軸駆動部にローラーギアカム、同時5軸時の最大加工サイズφ550×400mm/φ630×500mm
- ニイガタマシンテクノ HN50E-5X〜HN80E-5X:横型のトラニオン、パレット積載600〜1,500kg
- ヤマザキマザック VARIAXIS j・C:両端支持のチルト・ロータリーテーブル(C-700は最大ワーク質量700kg)
ワークの重さがそのまま回転軸にかかるため、積載質量の上限が機種ごとにはっきり決まっています。公式の積載はブラザー工業U500Xd1の100kgから、キタムラ機械Mytrunnion-7Gの2,000kgまで幅があります。
主軸傾斜型と門型:ワークは動かさず刃物を傾ける
主軸側を傾ける型は、テーブルに大きく重いワークを載せたまま、刃物の角度を変えて削ります。牧野フライス製作所のV80S〜V100Sは、テーブル1,300×1,000mm〜2,000×2,500mmで自動車関連の大物金型向けと説明しています。
| 機種 | 構造 | 公式に書かれた大きさ・用途 |
|---|---|---|
| 牧野フライス製作所 V100S | 主軸旋回(A/C軸) | テーブル2,000×2,500mm、最大ワーク2,000×2,500×1,050mm |
| 新日本工機 RB-FⅡ | 門型・連続5軸ヘッド | テーブル3,000×1,500〜6,000×3,500mm、旋回トルク最大6,600N・m |
| 新日本工機 HGM・PS・MKS・HLM | ガントリー型 | 大型アルミワーク、デザインモデル、複合材 |
| ジェイテクト FH630SX-5A | 横形・傾斜旋回式主軸 | パレット積載1,500kg、工作物最大φ1,170×1,600mm |
ジェイテクトは、主軸側に旋回軸を持たせることでパレット上に大きな工作物を載せられると説明しています。数メートル級のワークや1トンを超える部品は、この型から候補を探すのが近道です。
横形5軸という選択肢
5軸機には立形だけでなく横形もあります。横形は加工面が横や下を向くため、切粉が下に落ちやすい構成です。
- コマツNTC CX500:テーブルが逆さ姿勢になるオーバーヘッド加工で、切粉が直下のトラフへ落ちる
- 牧野フライス製作所 a500iR:B軸−110°〜+180°、作業者に配慮した水平段取り仕様
- ニデックオーケーケー HX500・HM-X6100、オークマ MU-10000H、DMG森精機 INH 63・80
- 安田工業 H40i:横形5軸、主軸200〜20,000min-1、ATC240本・APC24パレットまで拡張可能
- 新日本工機 GHP:アルミ部品加工機、主軸150〜30,000min-1
今回の16社のうち、横形の5軸機を掲載しているのは牧野フライス製作所、オークマ、DMG森精機、コマツNTC、ニデックオーケーケー、ジェイテクト、ニイガタマシンテクノ、新日本工機、松浦機械製作所(MAM72シリーズに立形・横形)、安田工業(H40i)の10社でした。
旋削も載せた複合型という構造
5軸機の中には、テーブルを旋盤の主軸のように回して旋削までこなす機種があります。丸物とフライス加工が混ざる部品では、構造と同時に旋削の有無も確認してください。
| メーカー・機種 | 公式の区分 | 公式に書かれた内容 |
|---|---|---|
| オークマ MU-5000V/6300V/8000V | 旋削仕様(L) | 旋削能力の実績値は加工径ø164mm(MU-6300Vはø250mm) |
| ヤマザキマザック VARIAXIS i-700T/800T/1050T | 旋削機能付き5軸加工機 | i-700TはパレットΦ630mm |
| 松浦機械製作所 MX-520T・CUBLEX-35/63 | 5軸複合マシニングセンタ | CUBLEXは5軸化×複合化×無人化 |
| キタムラ機械 Mytrunnion-1 | 複合型 | マシニング・グラインディング・ターニングを1台に集約 |
今回の16社のうち、5軸機に旋削の仕様や複合型を公式に載せていたのは、オークマ、ヤマザキマザック、松浦機械製作所、キタムラ機械の4社でした。旋削を集約する詳しい考え方は、用途別のページで整理しています。
小物専用の小型機という構造
小物の量産部品なら、テーブルを小さくして機械全体を小さくした機種が向きます。床面と機械幅を先に確認すると、既存のラインに入るかが分かります。
- ブラザー工業 U500Xd1:30番、テーブル⌀260mm・積載100kg、所要床面1,560×2,026mm
- キタムラ機械 MedCenter5AX:1.2m×2.0mの機体、最大ワークφ230×175mm、30,000回転主軸
- ホーコス NJ35-5AX:ベッドレス構造で機械幅990mm、両サイドのメンテナンススペースが不要
- 三井精機工業 Vertex55X Ⅲ:設置スペース2m×3mでφ750×525mmのワークを積載(一部制限あり)
構造を決めるためのチェック表
構造は、最大ワークの寸法と質量、そして切粉の量で絞れます。迷ったら次の順に確認してください。
- 最大ワークの外形(直径×高さ)と質量を書き出す
- 質量が回転テーブルの積載以内か、各社の積載値と比べる
- 超える場合は主軸傾斜型・門型・横形の主軸旋回型を候補にする
- アルミの大量切削など切粉が多い場合は横形を候補に入れる
- 候補が決まったら、テストカットができるメーカーで実ワークを削る
構造ごとの具体的な機種は、用途別のページでも整理しています。小物の量産なら30番の小型機、重量物なら横形トラニオンと、入口の機種は大きく違います。
この記事に出てくるメーカー
- ブラザー工業株式会社小物量産の省スペース5軸
- DMG森精機株式会社テスト加工の窓口が明確
- ホーコス株式会社ライン向けの幅990mm機
- 株式会社ジェイテクト横形ラインに足す重量5軸
- キタムラ機械株式会社小物〜大物のトラニオン
- コマツNTC株式会社切粉の多い横形5軸
- 株式会社牧野フライス製作所金型・航空機・難削材の専用系列
- 株式会社松浦機械製作所初めての5軸と無人運転
- ヤマザキマザック株式会社系列が広く比べやすい
- 三井精機工業株式会社省スペースの立形5軸
- ニデックオーケーケー株式会社加工テスト付きの立形5軸
- 株式会社ニイガタマシンテクノ難削材・重量物の横形5軸
参照元
よくある質問
トラニオン型と主軸傾斜型はどちらが精度が高いですか?
構造だけで精度は決まりません。各社は回転軸の割出し精度(オークマはMU-5000VでA軸±0.68秒・C軸±0.78秒の実績値を公開)や補正機能で精度を出しています。自社のワークでテストカットをして比べてください。
1トンを超えるワークは5軸で削れますか?
削れます。ニイガタマシンテクノのHN80E-5Xはパレット積載1,500kg、ジェイテクトのFH630SX-5Aは1,500kg、キタムラ機械のMytrunnion-7Gは最大積載2,000kgと公式に書いています。さらに大きいワークは新日本工機の門型RB-FⅡのような機種が候補です。
横形の5軸機はどんな会社に向きますか?
切粉が多い部品や、パレットで自動化したい量産部品に向きます。コマツNTCのCX500はテーブルが逆さ姿勢になり切粉が直下に落ちる構造で、牧野フライス製作所は5軸横形すべてに自動化システムを付けられると説明しています。
【用途別】5軸マシニングセンタメーカーおすすめ3選
アルミ・鉄の小物部品を、省スペースで多面・5軸加工するなら
ブラザー工業株式会社
床面1,560×2,026mmの30番機。テクノロジーセンターで実機デモ
U500Xd1は治具エリア最大⌀500の傾斜ロータリーテーブル(A軸120〜−30度・C軸360度)を持つ30番の立形機で、テーブル作業面⌀260mm・最大積載100kg、主軸10,000min-1(オプション16,000)。所要床面は1,560×2,026mm。5AX仕様のCNC装置はCNC-D00v。東京・大阪などのブラザーテクノロジーセンターで実機デモとセミナーを行っている。
旋削も含めて1台に工程集約するなら
オークマ株式会社
両端支持トラニオンに旋削仕様。本社ショールームでテストカット
MU-V seriesは剛性の高い両端支持のトラニオンテーブルで、テーブルø500〜ø800×630幅、主軸10,000/6,000min-1。MU-5000V/6300V/8000Vには旋削仕様(L)があり、旋削能力の実績値(加工径ø164mm、MU-6300Vはø250mm)を公表している。本社にはテストカットを実施するショールームがある。
難削材・重量物の中物〜大物を横形5軸で削るなら
株式会社ニイガタマシンテクノ
トラニオンの横形HN-5X。積載1,500kgまで、テックセンターで実ワークを試す
HN50E-5X〜HN80E-5Xは高剛性トラニオンテーブルを載せた5軸横型で、パレット500×500〜800×800mm、最大積載600〜1,500kg、最大ワークФ750×700〜Ф1,250×1,000mm。難削材部品の加工に適した剛性を打ち出す。テックセンターで実際のワークのテストカットができ、加工可否・精度・サイクルタイムを導入前に確認できる。