軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
鋳造品の設計の基本|肉厚・抜き勾配・R・アンダーカットを協会の設計ガイドで押さえる【2026年版】
アルミ・亜鉛・マグネシウムの鋳造品を設計するときの基本を、日本ダイカスト協会の設計ガイドに沿って解説します。合金別の一般肉厚と最大質量、リブと均一肉厚、抜勾配、隅と角の丸み、大きな平面、アンダーカットと中子の扱い、試作工法(石膏鋳造など)で緩和できる点と量産で戻す点を、国内各社の公式記載とあわせて整理します。
鋳造品の図面は、削り出しの図面と同じ感覚で描くと、型が複雑になったり、欠陥が出やすくなったりします。肉厚・抜き勾配・R・アンダーカットの4点は、最初に押さえておきたい設計の基本です。
このページでは、日本ダイカスト協会の設計ガイドを軸に、試作工法との違いも含めて整理します。
設計がコストと品質を左右する(協会の考え方)
協会の設計ガイドは「設計はダイカストのコスト、品質に最も大きな影響を与える」としています。基本的な事項はDCS E(設計編)やDCS D1(金型編)に記載され、設計実務の一助になるとしています。
- 開発時の製品設計では、初期段階でダイカスト専業者と十分に話し合い、その知識と経験を織り込むことが品質とコストに良い結果をもたらす
- 実際の経験から得られた知見の設計への反映も重要
- 近年はCAEが普及し、設計をサポートする一手段となっている
- 寸法許容差は、標準以上のきびしい値を指定しないことが望ましい(DCS E1参照)
試作の段階は、まさにこの「初期段階の話し合い」に当たります。図面を固める前に鋳造会社へ相談すると、設計の手戻りを減らせます。
肉厚:合金別の一般肉厚と最大質量
協会の設計ガイドは、各種合金ダイカストの現状における最大質量と一般肉厚を表で示しています。
| 合金 | 最大質量 | 肉厚(大物) | 肉厚(小物) |
|---|---|---|---|
| アルミニウム | 40kg | 2.0〜6.0mm | 0.8〜3.0mm |
| 亜鉛 | 35kg | 1.0〜6.0mm | 0.5〜3.0mm |
| マグネシウム | 20kg | 2.0〜4.0mm | 0.8〜2.0mm |
| 銅 | 10kg | 2.5〜6.0mm | 1.5〜3.0mm |
同じガイドは、肉厚について次の指針を挙げています。
- 容易に鋳造ができ、かつ適当な強度と剛性を与える肉厚を選定する
- 可能な部分には、変形防止、強度増加、溶湯の流れを良くするためにリブを設ける
- できる限り均一な肉厚にする。ひけ巣の発生も軽減できる
- 肉厚の変化が必要な部分は、応力集中を避けるため徐々に肉厚を変える
- リブや中子の使用により駄肉を除去する。引け巣などの内部品質が向上し、原材料の節減にもなる
試作工法では、会社ごとに最小肉厚の公式値があります。量産の一般肉厚と並べて確認します。
| 工法 | 会社 | 公式の最小肉厚 |
|---|---|---|
| 石膏鋳造 | ジャノメダイカスト | 薄肉0.5mm実績 |
| 石膏鋳造 | プロテックジャパン | 0.6mmまで可能 |
| 石膏鋳造 | ニューテック、日邦産業 | 0.8mm〜 |
| 石膏鋳造 | 寿金属工業 | 2mm(部分的に1.5mm) |
| ロストワックス | 日本プレシジョンキャスチング | 非鉄系1.0mm〜 |
| 精密砂型 | イナテック | 1.5mm(肉厚公差±0.3mm) |
| 砂型 | JMC | 平均2.5mm・最小1.5mmを目安 |
試作で量産より薄く作れても、量産の工法で同じ肉厚が出るとは限りません。薄肉部は、量産の工法の一般肉厚に照らして判断します。
抜き勾配:量産金型には必要、試作では不要な場合も
協会の設計ガイドは、ダイカストを変形なく金型から離型させるため、側壁と中子に十分な抜勾配をつけることとしています(DCS E4参照)。抜勾配は、内側壁の深さに対する値のグラフで、銅・アルミニウム・亜鉛・マグネシウムの合金別に示されています。
- 抜勾配の定義(ガイドの用語解説):型込部側壁またはピン、中子などからダイカストが容易に抜けるように付けられた勾配
- ダイカスト金型に必要なもので、大きい方が望ましい
- 石膏鋳造では、型を崩して取り出すため抜き勾配ゼロを掲げる会社がある(ニューテック、日邦産業、共栄デザイン、モールドモデル、八百谷金属工業、ジャノメダイカスト)
試作を勾配ゼロで作ると、量産の金型で勾配を足したときに形が変わります。量産がダイカストなら、試作図面にも量産の勾配を入れておくか、差分を管理します。
隅と角の丸み・大きな平面
協会の設計ガイドは、隅と角、平面について次のように示しています。
| 項目 | ガイドの指針 |
|---|---|
| 隅と角 | 製品及び金型の損傷を避けるため、すべての内側の隅、及び外側の角には適当な丸みをつけることで割れを防止する |
| 大きな平面 | 大きく平らな表面は梨地にすることが望ましい。製品の変形を予測して金型に変形分を織り込むことも可能で、めっきや高度の仕上げ部品では必要 |
外観に大きな平面がある部品は、梨地にするか、めっきなどで平滑に仕上げるかを試作の段階で決めておきます。仕上げによって、金型に変形分を織り込む必要があるかが変わるためです。
プロテックジャパンは石膏鋳造でR無しのコーナーにも対応すると記載しています。試作ではRなしで形にできても、量産のダイカストではガイドのとおり丸みが必要になる点に注意します。
アンダーカットと中子の扱い
アンダーカットは、ガイドの用語解説で「固定と可動の型開き方向に対して平行に抜けない箇所」とされ、通常は引抜中子を用いて成形します。
- 引抜中子で抜けないアンダーカット部は、極力避けなければならない
- 形状により置中子や崩壊性中子など特殊な方法を使う場合もあるが、コストを十分に考慮すべき
- 置中子:金型の中に挿入し、ダイカストと共に取り出した後で除去し、製品の一部を成形する中子
アンダーカットを残すかどうかは、量産の型費に直接響きます。試作で形を確かめたあと、量産で中子に分けるか、形状を変えて型開き方向に抜けるようにするかを検討します。
試作工法では、アンダーカットや中空の対応を公式に掲げる会社があります。モールドモデルは抜き勾配ゼロ・アンダーカット・薄肉・中空一体成形、キャステムはロストワックスで中空・アンダーカット・ギア形状、イナテックは精密砂型で「薄い」「複雑」「中空」を掲げています。
試作図面と量産図面を分けて管理する
試作工法の自由度に合わせて描いた図面は、そのままでは量産に移せないことがあります。次の点を、試作図面と量産図面の差分として管理します。
- 抜き勾配:試作でゼロにした面と、量産で付ける勾配
- 隅と角:試作でRなしにした箇所と、量産で付ける丸み
- アンダーカット:試作で一体にした形状を、量産で中子に分けるか形状変更するか
- 肉厚:量産の一般肉厚の範囲に収まっているか、急な肉厚変化がないか
- リブ:試作で剛性を確かめたリブの位置と高さを、量産図面にも反映したか
3選のうち、ニューテックと共栄デザインは石膏鋳造で抜き勾配ゼロに対応し、JMCは3Dプリント砂型で複雑な中子に対応します。量産の工法も伝えたうえで試作を依頼すると、差分を含めた助言を受けられます。
この記事に出てくる会社
- 株式会社キャステム金型0円で1個から精密鋳造
- 株式会社イナテック薄肉砂型をCT6級で最短3日
- ジャノメダイカスト株式会社石膏試作→ダイカスト量産
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- 寿金属工業株式会社4工法保有、1個から耐圧試験まで
- 株式会社 共栄デザイン最短5日・価格例あり
- 有限会社モールドモデル石膏専業、5〜100個が得意
- 株式会社ニューテックADC12試作の定番、CT7保証
- 日邦産業株式会社大型石膏鋳造、1,500mmまで
- 日本プレシジョンキャスチング株式会社航空宇宙向け高強度ロストワックス
- 株式会社プロテックジャパン多工法の試作窓口、工場は要確認
- 八百谷金属工業株式会社(単品鋳物.com)単品を最速翌日、関西発
参照元
よくある質問
アルミ鋳物の肉厚はどれくらいにすればいいですか?
日本ダイカスト協会の設計ガイドでは、アルミニウム合金ダイカストの一般肉厚は大物で2.0〜6.0mm、小物で0.8〜3.0mm、最大質量は40kgです。できる限り均一な肉厚にし、変化が必要な部分は徐々に変えることとしています。試作工法の最小肉厚は会社で異なり、石膏鋳造のニューテックと日邦産業は0.8mm〜と公式に記載しています。
鋳造品に抜き勾配は必ず必要ですか?
量産のダイカストでは、協会の設計ガイドが側壁と中子に十分な抜勾配をつけることとしています。一方、石膏鋳造は型を崩して取り出すため、ニューテック、日邦産業、共栄デザインなどが抜き勾配ゼロに対応すると公式に記載しています。量産に移すときは勾配を付け直す必要があります。
アンダーカットのある形は鋳造できますか?
ダイカストでは通常、引抜中子で成形します。協会の設計ガイドは、引抜中子で抜けないアンダーカット部は極力避け、置中子や崩壊性中子を使う場合はコストを十分に考慮すべきとしています。試作ではモールドモデル(石膏鋳造、中空一体成形)やキャステム(ロストワックス、中空・アンダーカット)が対応を掲げています。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
大物・複雑形状・ギガキャスト級の砂型試作なら
株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
まず1個を、数日で手に取りたいなら
株式会社 共栄デザイン
石膏鋳造で最短5日。1個から月1個の少量生産まで、亜鉛や高熱伝導合金も
金型を使わない石膏鋳型で「最短5日で高精度な試作品」を製作し、1個からの試作・月1個の少量生産に対応。アルミ鋳物合金AC2A〜AC8A、ダイカスト用ADC12・ADC1・ADC6、亜鉛ZDC1・ZDC2、高熱伝導アルミHT-1・DMSに対応。寸法公差±0.2〜0.7mm、Carl Zeissの三次元測定機、社内マシニングで機械加工。5〜100個ならダイカスト相当の品質、小ロット製造は素材初品3週間〜。