軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
T5・T6などの熱処理記号(質別記号)の読み方と鋳造試作での指定方法【2026年版】
AC4C-T6のように材質記号の後ろに付くT5・T6などの質別記号について、規格(JIS H 0001 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号)の位置づけ、日本ダイカスト協会の資料が示すダイカスト品とT6熱処理の関係、国内各社が公式に記載する熱処理の対応範囲(T4〜T7)と試験設備、図面と見積での指定方法を解説します。
鋳造品の図面や見積で「AC4C-T6」のように書かれる「-T6」の部分が、質別記号です。熱処理の状態を表し、同じ合金でも質別が違えば機械的性質が変わります。
試作で強度を評価する場合、材質記号だけを指定して質別を書き忘れると、熱処理なしの状態で届くことがあります。
このページでは、質別記号の位置づけと、鋳造試作で熱処理を指定するときの実務を、規格と各社の公式記載から整理します。
質別記号を定める規格と書き方
質別記号は、JIS H 0001「アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号」で定められています。日本産業標準調査会(JISC)の規格一覧に、この規格名で掲載されています。
- 書き方:合金記号の後ろにハイフンを付けて質別を書く(例:AC4C-T6、AC4A-T6)
- 対象:アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金
- JIS H 5202(アルミニウム合金鋳物)では、F、O、T4、T5、T6などの質別が使われる
- 試作会社の公式記載には、T4〜T7の範囲の記号が登場する
- 各記号が表す処理の内容は、JIS H 0001の本文で定義されている
記号の意味を社内で確かめるときは、規格本文を参照してください。ここでは、試作の発注で質別をどう扱うかに絞って説明します。
質別まで書いて材質を示す会社の例
今回調査した34社の公式サイトには、対応材質を質別まで含めて書いている会社があります。書き方の実例として並べます。
| 会社 | 公式の材質表記 | 工法 |
|---|---|---|
| キングパーツ | Al-Cu-Mg系 AC1B-T6、Al-Si-Mg系 AC4C-T6、Al-Mg系 AC7A | ロストワックス |
| 東京鋳造所 | AC4C-T6、AC4A-T6 | 低圧鋳造・重力鋳造、試作は砂型 |
| 太陽パーツ | 計測機器用軸受け(AC4C-T6)の事例 | ロストワックス |
キングパーツの表記では、AC7Aには質別が付いていません。合金によって熱処理を前提にするものとしないものがあるため、図面では合金と質別をセットで指定します。
社内で熱処理できる範囲(各社の公式記載)
熱処理を社内の炉で行うか、協力会社で行うかは、納期と責任の範囲に影響します。公式に熱処理の対応を記載する会社を並べます。
| 会社 | 公式の記載 |
|---|---|
| JMC | 熱処理(T4/T5/T6/T7)を社内一貫 |
| ニューテック | T5・T6・T7処理、熱処理炉2基 |
| 東京鋳造所 | T5・T6処理炉 |
| 前橋橋本合金 | T6処理炉(九州工場) |
| 光軽金属工業 | 熱処理炉2基 |
| ハヤカワロストワックス | アルミニウム合金の熱処理炉1基 |
| コイワイ | 熱処理を内製 |
| 共栄デザイン | めっき・アルマイト・含浸・熱処理に対応(石膏鋳造) |
| 日邦産業 | 精密鋳造から二次加工、熱処理まで一貫対応(石膏鋳造) |
| キングパーツ | 各種熱処理や表面処理にも対応(ロストワックス) |
| キャステム | 熱処理は協力会社との連携により一気通貫 |
工法で見ると、石膏鋳造(ニューテック、共栄デザイン、日邦産業)、砂型(JMC、東京鋳造所、前橋橋本合金、コイワイ)、ロストワックス(キングパーツ、ハヤカワロストワックス、キャステム)のいずれにも、熱処理まで受ける会社があります。
質別の記号まで公式に書いているのは、JMC(T4〜T7)、ニューテック(T5〜T7)、東京鋳造所(T5・T6)、前橋橋本合金(T6)です。ほかの会社には、指定したい質別に対応できるかを確認します。
ダイカスト品とT6の関係(協会資料)
日本ダイカスト協会の資料は、普通ダイカスト法について、高速で射出し短時間で凝固するため製品内部に鋳巣(巻き込み巣、ひけ巣)を発生させ、気密性や熱処理性(T6)など品質的に十分とは言えないとしています。
- 高真空ダイカスト法:ガスの巻き込みが極めて少ないため、T6熱処理や溶接が可能
- PFダイカスト法:耐圧性に優れ、T6熱処理や溶接が可能
- スクイズダイカスト法:T6熱処理や溶接が可能で高品質なダイカストが得られる
- セミソリッドダイカスト法:効果の表でT6の可否に○
表のとおり、T6に効く方法は巻き込み巣を減らす方法と重なっています。熱処理の可否は、鋳巣の少なさと結び付けて考える必要があるということです。
量産がダイカストでT6を前提にする部品は、量産でこうした方法を使えるかが先に問題になります。試作が石膏鋳造や砂型でT6を実現できても、量産品で同じ質別を指定できるとは限りません。
熱処理の結果を確かめる試験設備
質別を指定したら、機械的性質や硬さで結果を確かめます。公式に試験設備を記載する会社を並べます。
- 引張試験:JMC(引張試験)、東京鋳造所(引張試験機)、ヒノデキャスティング&メタルワークス(引張・硬さ試験)
- 硬さ試験:東京鋳造所(ブリネル硬度計)、キングパーツ(硬さ試験機5台)
- 成分分析:JMC(分光分析)、東京鋳造所(発光分光分析器)、キングパーツ(真空型発光分析装置2台)、光軽金属工業(発光分析装置)
- 検査成績書:白銅は引張・硬さ・密度・寸法・成分分析の検査成績書を発行できると記載(金属3Dプリント)
- 金属3Dプリントの熱処理:白銅(アニール処理・時効硬化処理・析出硬化処理)、J・3D(電気炉による熱処理)、NTTデータザムテクノロジーズ(熱処理条件の開発)
試験片を製品と同じ炉で処理するか、製品から切り出すかで結果の意味が変わります。どちらで確認するかを、見積の前に決めておきます。
図面と見積で熱処理を指定するときの手順
熱処理の指定があいまいだと、見積の前提がずれます。熱処理の工程は納期にも加わるため、試作の日程にも関わります。
次の順で指定します。
- 材質と質別をセットで書く(例:JIS H 5202 AC4CH-T6)。規格番号も併記すると解釈がぶれない
- 熱処理と機械加工の順番を決める(熱処理後に仕上げ加工する面を指示)
- 確認方法を決める(硬さ・引張試験の有無、試験片の取り方)
- 量産の工法でも同じ質別を指定できるかを、量産の方法とあわせて確認する
- 社内炉か協力会社かを確認し、完成までの日数を見積に含めてもらう
3選のうち、JMCはT4〜T7、ニューテックはT5〜T7を社内で行うと公式に記載しています。共栄デザインも熱処理への対応を記載しており、質別の範囲は問い合わせで確認できます。
この記事に出てくる会社
- 株式会社キャステム金型0円で1個から精密鋳造
- 白銅株式会社型レス最短4日、1品から
- 株式会社ハヤカワロストワックス航空品質のアルミ精密鋳造
- 光軽金属工業株式会社3工法を数量で使い分け
- ヒノデキャスティング&メタルワークス株式会社(旧 眞工金属・山形精密鋳造・栄製作所)鋳包み・高剛性アルミが強み
- 株式会社J・3DAlSi10MgのAM、1点から
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- キングパーツ株式会社AC4C-T6を5個から3週間
- 株式会社コイワイ3D砂型で1個から、CAE付き
- 株式会社 共栄デザイン最短5日・価格例あり
- 前橋橋本合金株式会社200kg大物を1個から
- 株式会社ニューテックADC12試作の定番、CT7保証
参照元
- JIS H 0001 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS検索)
- ダイカストって何? 特殊ダイカスト法(日本ダイカスト協会 p.27)
- 材質(キングパーツ株式会社)
- 設備(キングパーツ株式会社)
- アルミ鋳造(株式会社東京鋳造所)
- 工場(株式会社東京鋳造所)
- 事例(太陽パーツ株式会社 ロストワックス鋳造.com)
- 株式会社JMC
- 設備(株式会社JMC)
- 設備(株式会社ニューテック)
- 設備一覧(前橋橋本合金株式会社)
- 設備(光軽金属工業株式会社)
- 設備(株式会社ハヤカワロストワックス)
- 設備紹介(株式会社コイワイ)
- ロストワックス(株式会社キャステム)
- アルミ鋳物(ヒノデキャスティング&メタルワークス株式会社)
- 金属3Dプリンター受託造形サービス(白銅株式会社)
- 設備(株式会社J・3D)
- AMbition(株式会社NTTデータザムテクノロジーズ)
- 石膏鋳造の工程(株式会社共栄デザイン)
よくある質問
AC4C-T6の「T6」は何を表していますか?
熱処理の状態を表す質別記号です。質別記号はJIS H 0001「アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号」で定められ、合金記号の後ろにハイフンを付けて書きます。各記号の処理内容は規格本文で定義されています。キングパーツはAC4C-T6、東京鋳造所はAC4C-T6・AC4A-T6のように質別まで含めて対応材質を記載しています。
T6の熱処理まで社内でできる鋳造試作会社はどこですか?
公式に質別まで記載しているのは、JMC(T4/T5/T6/T7を社内一貫)、ニューテック(T5・T6・T7処理、熱処理炉2基)、東京鋳造所(T5・T6処理炉)、前橋橋本合金(T6処理炉、九州工場)です。光軽金属工業(熱処理炉2基)やハヤカワロストワックス(アルミ合金の熱処理炉1基)も熱処理炉を記載しています。
ダイカスト品にT6熱処理はできますか?
日本ダイカスト協会の資料は、普通ダイカスト法では製品内部に鋳巣が発生するため熱処理性(T6)が十分とは言えないとしています。一方、高真空ダイカスト法、PFダイカスト法、スクイズダイカスト法はT6熱処理や溶接が可能と説明しています。量産の方法を確認したうえで質別を指定してください。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
大物・複雑形状・ギガキャスト級の砂型試作なら
株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
まず1個を、数日で手に取りたいなら
株式会社 共栄デザイン
石膏鋳造で最短5日。1個から月1個の少量生産まで、亜鉛や高熱伝導合金も
金型を使わない石膏鋳型で「最短5日で高精度な試作品」を製作し、1個からの試作・月1個の少量生産に対応。アルミ鋳物合金AC2A〜AC8A、ダイカスト用ADC12・ADC1・ADC6、亜鉛ZDC1・ZDC2、高熱伝導アルミHT-1・DMSに対応。寸法公差±0.2〜0.7mm、Carl Zeissの三次元測定機、社内マシニングで機械加工。5〜100個ならダイカスト相当の品質、小ロット製造は素材初品3週間〜。