軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
鋳巣など鋳造品の代表的な欠陥と対策|巻き込み巣・ひけ巣の原因と検査・後処理【2026年版】
アルミ・マグネシウム鋳造品で問題になる鋳巣(巻き込み巣=ブローホール、ひけ巣)について、日本ダイカスト協会の資料が示す発生の理由と特殊ダイカスト法の効果、均一肉厚などの設計上の対策、CAE・流動解析による事前予測、X線CT・浸透探傷・超音波などの検査設備、含浸・HIPの後処理を、国内34社の公式記載とあわせて解説します。
鋳造品の不良で最も多く話題になるのが、内部にできる空洞、いわゆる鋳巣です。外から見えないため、加工して初めて見つかったり、気密試験で漏れて気付いたりします。
このページでは、日本ダイカスト協会の資料をもとに鋳巣の種類と対策を整理し、試作会社の検査・後処理の体制を並べます。
協会資料が挙げる鋳巣の2つの型
日本ダイカスト協会の資料は、普通ダイカスト法について、高速で射出し短時間で凝固するため、製品内部に鋳巣(巻き込み巣、ひけ巣)を発生させるとしています。
| 鋳巣の種類 | 協会資料の記載から読み取れる原因 | 資料が挙げる影響 |
|---|---|---|
| 巻き込み巣(ブローホール) | 射出時の空気やガスの巻き込み(高真空法やPF法でガスの巻き込みを減らすと説明) | 気密性、熱処理性(T6)が不十分になる |
| ひけ巣 | 凝固時の収縮(局部加圧法は凝固収縮相当量の溶湯を補給してひけ巣を減らすと説明) | 同上 |
2つの巣は原因が違うため、効く対策も違います。どちらの巣が問題かを見分けることが、対策の出発点になります。
なお、協会資料は普通ダイカスト法について「非常に多くの製品を生産している」とも書いています。巣は工法の弱点ですが、用途に応じて管理しながら使われているということです。
欠陥ごとに効く特殊ダイカスト法
協会資料は、より高い品質をねらう特殊ダイカスト法と、その期待できる効果を表で示しています。
| 方法 | 巻き込み巣 | ひけ巣 | T6の可否 | 薄肉化 |
|---|---|---|---|---|
| 高真空ダイカスト法(10kPa以下の真空度) | ○ | — | ○ | ○ |
| PFダイカスト法(活性ガス置換) | ○ | — | ○ | ○ |
| スクイズダイカスト法 | ○ | ○ | ○ | — |
| 局部加圧ダイカスト法 | — | ○ | — | — |
| セミソリッドダイカスト法 | ○ | ○ | ○ | — |
表の○は、協会資料で「優または適用可」とされている項目です。高真空法、PF法、スクイズ法は、いずれもT6熱処理や溶接が可能になると説明されています。
PF法は耐圧性に優れるとも書かれています。試作で気密や熱処理を評価する部品は、量産でどの方法を使うかを先に確認しておくと、試作の評価項目がそろいます。
設計でひけ巣を減らす
ひけ巣は、形状の影響を強く受けます。協会の設計ガイドは、肉厚について次の指針を示しています。
- できる限り均一な肉厚にする。ひけ巣の発生も軽減できる
- 肉厚の変化が必要な部分は、応力集中を避けるため徐々に肉厚を変える
- 可能な部分には、変形防止、強度増加、溶湯の流れを良くするためにリブを設ける
- アルミニウムの一般肉厚は大物2.0〜6.0mm、小物0.8〜3.0mm
厚肉の塊が局所的にある形状は、試作の段階で肉抜きやリブへの置き換えを検討します。試作品のX線CTで巣の位置を見ると、設計を直す場所が分かります。
鋳造前に予測するCAE・流動解析
協会の設計ガイドは、CAEを構造解析・湯流れ解析・凝固解析などを行うことと説明し、設計をサポートする一手段としています。公式に解析を掲げる会社を並べます。
| 会社 | 公式の記載 |
|---|---|
| FIRMS | 流動解析ソフトでガスの発生・空気の巻き込みを予測し、品質管理を徹底 |
| 木村鋳造所 | CAE解析による高い初品成功率(3Dプリント砂型DMP) |
| コイワイ | CAE鋳造解析と3Dプリンタ砂型鋳造、熱処理技術で高速試作 |
| イナテック | 品質・検査の記載にCAE |
解析で巻き込みや凝固の遅い部分が予測できれば、湯口の位置や形状を鋳造前に見直せます。試作の依頼時に、解析結果を共有してもらえるかを確認しておくと、設計側の対策にも使えます。
溶湯側の対策として、ハヤカワロストワックスはアルミ真空脱ガス溶解炉(最大溶解量300kg)を、三協ダイカストは真空装置2台を保有すると記載しています。
鋳巣を見つける検査設備
内部の欠陥は、非破壊検査で見つけます。公式に検査設備を記載する会社を、方法別に整理します。
- X線CT:JMC(計6台)、ニューテック(XT H 320LC)、三協ダイカスト(CTスキャナで内部巣を監視・分析)、東京鋳造所、寿金属工業、マルサン木型製作所、コイワイ(TOSCANER-20000AV)
- X線透視・X線探傷:光軽金属工業(マイクロフォーカスX線透視装置)、ハヤカワロストワックス(X線検査装置)、キングパーツ(X線探傷検査装置2台)
- 蛍光浸透探傷:イナテック、ハヤカワロストワックス
- 超音波探傷:光軽金属工業、キングパーツ、三和軽合金製作所、ヒノデキャスティング&メタルワークス
- 浸透探傷・磁粉探傷など:木村鋳造所(UT・MT・PT)
- ピンホール検査:八百谷金属工業(ピンホール検査機)
X線CTは巣の位置と大きさを立体で見られる一方、部品の大きさに上限があります。キャステムと木村鋳造所はCTの最大サンプル重量を50kgと記載しています。
試作の段階で鋳巣を評価しておく理由
鋳巣は量産に入ってから見つかると、型や方案の修正に時間がかかります。試作の段階で内部を確かめる意義を、各社の公式記載から整理します。
| 会社 | 公式の記載 | 試作で得られること |
|---|---|---|
| 協和合金 | 開発試作からダイキャスト品で評価しておけば量産時の不具合を未然に防ぐことができる | 量産と同じダイカストでの内部品質 |
| クライム・ワークス | ダイカストスピード試作、リーク試験機・三次元測定機を保有 | ADC12材のダイカスト品での気密確認 |
| 光軽金属工業 | リーク検査NG対策の提案事例 | 漏れの原因と対策案 |
| 三協ダイカスト | CTスキャナによる非破壊検査で内部巣を監視・分析 | 巣の位置と大きさの記録 |
試作の工法が量産と違う場合、巣の出方も同じとは限りません。量産の工法で作った試作品で最終確認をするかどうかを、開発の計画に入れておきます。
見つかった鋳巣への後処理と合否の決め方
鋳巣をゼロにするのが難しい場合は、後処理で封じるか、合否の基準を決めて扱います。公式に後処理を記載する会社は次の通りです。
- 含浸:JMC、共栄デザイン、コイワイ(含侵処理を内製)
- HIP:JMC(後処理に含む)
試作の段階で、次の項目を決めておくと、量産での判定がぶれません。
- 巣を許さない部位(シール面、ねじ部、応力の高い部位)
- 検査の方法(X線CT、X線透視、浸透探傷、リーク試験)
- 後処理の可否(含浸・HIPを認めるか)
3選のうち、JMCはX線CT計6台と含浸・HIP、ニューテックはX線CTと三次元測定、共栄デザインは含浸処理を公式に記載しています。
この記事に出てくる会社
- 株式会社キャステム金型0円で1個から精密鋳造
- 株式会社クライム・ワークス量産同材ダイカストで10台以下
- FIRMS株式会社3金属のダイカストを1個から
- 株式会社ハヤカワロストワックス航空品質のアルミ精密鋳造
- 光軽金属工業株式会社3工法を数量で使い分け
- ヒノデキャスティング&メタルワークス株式会社(旧 眞工金属・山形精密鋳造・栄製作所)鋳包み・高剛性アルミが強み
- 株式会社イナテック薄肉砂型をCT6級で最短3日
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- 株式会社木村鋳造所AC4C試作を3D砂型で7日から
- キングパーツ株式会社AC4C-T6を5個から3週間
- 株式会社コイワイ3D砂型で1個から、CAE付き
- 寿金属工業株式会社4工法保有、1個から耐圧試験まで
参照元
- ダイカストって何? 特殊ダイカスト法(日本ダイカスト協会 p.27)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.29)
- ダイカスト(FIRMS株式会社)
- ダイレクトモールディングプロセス(株式会社木村鋳造所)
- 事業内容(株式会社コイワイ)
- 設備紹介(株式会社コイワイ)
- 精密砂型鋳造(株式会社イナテック)
- 設備(株式会社ハヤカワロストワックス)
- 三協ダイカスト株式会社
- 設備(株式会社JMC)
- 株式会社JMC
- 設備(株式会社ニューテック)
- 工場(株式会社東京鋳造所)
- 設備(寿金属工業株式会社)
- 小ロット量産(株式会社マルサン木型製作所)
- 設備(光軽金属工業株式会社)
- 設備(キングパーツ株式会社)
- 株式会社三和軽合金製作所
- 会社概要(八百谷金属工業株式会社)
- 簡易金型 3CDプロセス(有限会社協和合金)
- 設備(株式会社クライム・ワークス)
- 実績(光軽金属工業株式会社)
- アルミ鋳物(ヒノデキャスティング&メタルワークス株式会社)
- 産業用CTスキャン(株式会社キャステム)
- 設備(株式会社木村鋳造所)
- 石膏鋳造の工程(株式会社共栄デザイン)
よくある質問
鋳巣(いす)とは何ですか?
鋳造品の内部にできる空洞です。日本ダイカスト協会の資料は、普通ダイカスト法は高速で射出し短時間で凝固するため、製品内部に巻き込み巣(ブローホール)やひけ巣が発生し、気密性や熱処理性(T6)が十分とは言えないと説明しています。
ひけ巣を減らすにはどう設計すればいいですか?
日本ダイカスト協会の設計ガイドは、できる限り均一な肉厚にするとひけ巣の発生も軽減できるとし、肉厚の変化が必要な部分は徐々に変えることを勧めています。工法面では、スクイズダイカスト法や局部加圧ダイカスト法がひけ巣の抑制に効く方法として協会資料に挙げられています。
鋳巣をX線CTで検査できる試作会社はどこですか?
公式にX線CTを記載しているのは、JMC(計6台)、ニューテック(XT H 320LC)、三協ダイカスト(内部巣を監視・分析)、東京鋳造所、寿金属工業、マルサン木型製作所、コイワイなどです。キャステムと木村鋳造所はCTの最大サンプル重量を50kgと記載しています。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
大物・複雑形状・ギガキャスト級の砂型試作なら
株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
まず1個を、数日で手に取りたいなら
株式会社 共栄デザイン
石膏鋳造で最短5日。1個から月1個の少量生産まで、亜鉛や高熱伝導合金も
金型を使わない石膏鋳型で「最短5日で高精度な試作品」を製作し、1個からの試作・月1個の少量生産に対応。アルミ鋳物合金AC2A〜AC8A、ダイカスト用ADC12・ADC1・ADC6、亜鉛ZDC1・ZDC2、高熱伝導アルミHT-1・DMSに対応。寸法公差±0.2〜0.7mm、Carl Zeissの三次元測定機、社内マシニングで機械加工。5〜100個ならダイカスト相当の品質、小ロット製造は素材初品3週間〜。