軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
アルミ・マグネシウム・亜鉛の材質記号(JIS H 5202/5302/5303/5301)の読み方【2026年版】
鋳造試作の図面に書くAC4C・ADC12・MDC1D・ZDC2などの材質記号を、JIS H 5202(アルミニウム合金鋳物)、JIS H 5302(アルミニウム合金ダイカスト)、JIS H 5303(マグネシウム合金ダイカスト)、JIS H 5301(亜鉛合金ダイカスト)の区分で解説します。日本ダイカスト協会の生産比率、質別記号、国内34社が公式に挙げる合金の傾向、図面への書き方まで。
鋳造試作の見積で最初に聞かれるのが材質です。同じアルミでも「鋳物用のAC」と「ダイカスト用のADC」では規格が違い、会社によって対応の有無も変わります。
このページでは、JISの4つの規格に沿って記号の読み方を整理します。
JIS記号の体系:AC・ADC・MDC・ZDC・MCの意味
軽金属鋳造の材質記号は、金属の種類と鋳造方法の組み合わせで頭文字が決まります。JISCの規格一覧に掲載されている規格名と、記号の対応は次の通りです。
| 規格番号 | 規格名 | 記号の頭文字 | 対象 |
|---|---|---|---|
| JIS H 5202 | アルミニウム合金鋳物 | AC | 砂型・金型・LW型(ロストワックス)の鋳物 |
| JIS H 5302 | アルミニウム合金ダイカスト | ADC | ダイカスト |
| JIS H 5303 | マグネシウム合金ダイカスト | MDC | ダイカスト |
| JIS H 5203 | マグネシウム合金鋳物 | MC | 砂型・金型・精密鋳造 |
| JIS H 5301 | 亜鉛合金ダイカスト | ZDC | ダイカスト |
「D」が入る記号(ADC・MDC・ZDC)はダイカスト用、入らない記号(AC・MC)は砂型・金型・精密鋳造用と覚えると読み分けられます。石膏鋳造や砂型で「ダイカスト用合金ADC12」を鋳る試作も多く、記号と工法は必ずしも一致しません。
JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物(AC記号)
JIS H 5202は金型鋳物・砂型鋳物などのアルミニウム合金鋳物を規定します。合金記号はAC1B、AC2A、AC2B、AC3A、AC4A、AC4B、AC4C、AC4CH、AC4D、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9Bです。
- 鋳造方法として砂型鋳物・金型鋳物・LW型鋳物(ロストワックス)を区別する
- 質別はJIS H 0001によりF、O、T4、T5、T6などで表す
- AC4CHはハヤカワロストワックスが「356.0(AMS 4260/JIS H 5202(AC4CH))」と海外規格との対応を記載している
- 三和軽合金製作所は系統別に、Al-Si-Mg系AC4A/4C/4CH、Al-Si-Cu系AC2A/2B/4B、Al-Mg系AC7A/7B、Al-Si系AC3A、Al-Si-Cu-Mg系AC8A/8B/8C、その他AC1A/1Bと整理している
今回調査した34社では、AC4CとAC4CHを挙げる会社が多く、前橋橋本合金の製造事例はすべてAC4C/AC4CH、東京鋳造所はAC4C-T6・AC4A-T6、木村鋳造所の試作事例はJIS AC4Cです。
JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト(ADC記号)と生産比率
JIS H 5302の種類記号は、合金系ごとに次のように分かれます。日本ダイカスト協会の資料では20種類が規定されているとされています。
| 記号 | 合金系 | 協会資料の特徴 |
|---|---|---|
| ADC1 | Al-Si系 | 耐食性・鋳造性に優れ、耐力は幾分低い |
| ADC3 | Al-Si-Mg系 | — |
| ADC5 | Al-Mg系 | 耐食性が最も良好で伸び・衝撃値は高いが鋳造性が劣る |
| ADC6 | Al-Mg-Mn系 | — |
| ADC10/ADC10Z/ADC12/ADC12Z | Al-Si-Cu系 | ADC12は機械的性質・被削性が良く、ADC10に比べて鋳造性に優れる |
| ADC14 | Al-Si-Cu-Mg系 | — |
協会資料によると、ダイカスト用合金の生産比率はアルミニウム97.9%、亜鉛1.7%、その他0.5%(2020年経済産業省統計)で、アルミニウム合金ダイカストのうちADC12が約94%を占めます(2001年の協会資料)。量産ダイカスト部品の試作でADC12指定が多いのはこのためです。
石膏鋳造のニューテックは「ADC12材でダイカスト同等品質の試作」、日邦産業はADC1・ADC6・ADC10・ADC12・ADC14他、共栄デザインはADC12・ADC1・ADC6と、ダイカスト用合金を試作工法で鋳る対応を公式に掲げています。
JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカストとASTM名の対応
マグネシウム合金は、JIS記号よりASTM系の名称(AZ91D、AM60Bなど)で呼ばれることが多く、両方を読めると各社の記載を突き合わせられます。JIS H 5303の種類記号と相当合金は次の通りです。
| JIS記号 | 相当合金(ASTM系) | 公式に挙げる会社の例 |
|---|---|---|
| MDC1B | AZ91B相当 | — |
| MDC1D | AZ91D相当 | STG(標準材MDC1D)、JMC(AZ91D(MDC1D))、日邦産業(AZ91D)、プロテックジャパン(AZ91D)、イナテック(AZ91D) |
| MDC2B | AM60B相当 | STG(MD2B実績あり)、日邦産業(AM60B)、ニューテック(AM60) |
| MDC3B | AM50A相当 | — |
| MDC4 | AE44相当 | — |
| MDC5 | AS41相当 | — |
| MDC6 | — | — |
協会資料によると、マグネシウム合金ダイカストはJIS H 5303に7種類が規定され、すべてのダイカストの中で最も軽量です。Mg-Al-Zn系のMDC1D(AZ91D相当)が87%を占め、通常はJIS H 8651の仮防食処理が施されます。
砂型・金型・精密鋳造用のマグネシウム合金鋳物はJIS H 5203で、MC2C、MC2Eなどの記号です。前橋橋本合金は砂型用に「AZ91(MC2)」と両方の名称を併記しています。
JIS H 5301 亜鉛合金ダイカスト(ZDC1・ZDC2)
亜鉛合金ダイカストはJIS H 5301に2種類が規定されています。協会資料の特徴と生産比率は次の通りです。
- ZDC1:Zn-Al-Cu系、生産比率22.8%
- ZDC2:Zn-Al系、生産比率76.1%
- 機械的性質・鋳造性に優れ、アルミニウム合金ダイカストに比べ薄肉のものができ、寸法精度がよく精密ダイカストが可能
- めっきが容易で装飾性に優れる
34社ではZDC2を挙げる会社が多く、三協ダイカスト(ADC12・ZDC2、25tホットチャンバーマシン)、太陽パーツ(ZDC2、検査機器用ラックギアの事例)、プロテックジャパン(ZDC2)、共栄デザイン(ZDC1・ZDC2を石膏鋳造で)が公式に記載しています。
質別記号(F・T5・T6)と熱処理
材質記号の後ろに付く「-T6」などは質別記号で、JIS H 0001に基づきます。JIS H 5202ではF、O、T4、T5、T6などが使われ、キングパーツは「AC1B-T6、AC4C-T6、AC7A」、東京鋳造所は「AC4C-T6、AC4A-T6」のように質別まで含めて対応材質を記載しています。
| 質別の例(JIS H 0001の区分) | 公式に対応質別・熱処理設備を記載する会社 |
|---|---|
| F、O | 記載なし(JIS H 5202の質別として規定) |
| T4、T5、T6、T7 | JMC(T4/T5/T6/T7)、ニューテック(T5・T6・T7、熱処理炉2基)、東京鋳造所(T5・T6処理炉)、前橋橋本合金(T6処理炉)、光軽金属工業(熱処理炉2基)、白銅(アニール処理・時効硬化処理・析出硬化処理) |
試作で機械的性質を評価するなら、材質記号だけでなく質別も図面に書きます。熱処理炉を社内に持つ会社か、協力会社で行う会社かで納期が変わるため、質別指定がある場合は見積時に伝えてください。
図面に材質を書くときの注意
34社の公式サイトを見ると、材質の書き方は会社ごとに幅があります。図面と見積依頼では、次の点をそろえると解釈のずれを防げます。
- 規格番号と記号を併記する(例:JIS H 5302 ADC12、JIS H 5202 AC4CH-T6)
- マグネシウムはJIS記号とASTM名を併記する(例:MDC1D(AZ91D相当))
- 会社独自の合金名(共栄デザインのHT-1・DMS、日邦産業のDMS1・DMS3・DMS4・DMS5・DHT-1、日本プレシジョンキャスチングのA201HP、ハヤカワロストワックスのMMC40など)は、対応できる会社が限られる前提で選ぶ(HT-1は共栄デザインのほかプロテックジャパン・太陽パーツも、DMSは共栄デザインと日邦産業の両社が記載)
- 金属3Dプリントの材料(白銅のAlSi12・AlSi10Mg、J・3DのAlSi10Mg、NTTデータザムテクノロジーズのScalmalloyなど)は鋳造JISとは別体系と理解する
- JMCのように対応材料ページに「当社の参考値であり規定値ではありません」と注記がある場合、成分・物性の保証範囲は別途確認する
材質が決まったら、次は寸法公差です。鋳造公差等級CT(JIS B 0403)の読み方は別ページで解説しています。
この記事に出てくる会社
- 白銅株式会社型レス最短4日、1品から
- 株式会社ハヤカワロストワックス航空品質のアルミ精密鋳造
- 光軽金属工業株式会社3工法を数量で使い分け
- 株式会社イナテック薄肉砂型をCT6級で最短3日
- 株式会社J・3DAlSi10MgのAM、1点から
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- 株式会社木村鋳造所AC4C試作を3D砂型で7日から
- キングパーツ株式会社AC4C-T6を5個から3週間
- 株式会社 共栄デザイン最短5日・価格例あり
- 前橋橋本合金株式会社200kg大物を1個から
- 株式会社ニューテックADC12試作の定番、CT7保証
- 日邦産業株式会社大型石膏鋳造、1,500mmまで
参照元
- JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物(日本産業標準調査会 JIS検索)
- JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト(日本産業標準調査会 JIS検索)
- ダイカストって何? 用合金(日本ダイカスト協会 p.19-20)
- ダイカストって何? マグネシウム合金ダイカスト(日本ダイカスト協会 p.23)
- ダイカストって何? 亜鉛合金ダイカスト(日本ダイカスト協会 p.21)
- 対応合金データ(株式会社JMC)
- マグネシウム鋳造・ダイカスト試作センター(株式会社STG)
- 試作石膏鋳造(日邦産業株式会社)
- 石膏鋳造(株式会社ニューテック)
- 対応材質(株式会社共栄デザイン)
- 石膏鋳造(株式会社プロテックジャパン)
- 精密砂型鋳造(株式会社イナテック)
- 材料(株式会社ハヤカワロストワックス)
- アルミ鋳物 材質一覧(株式会社三和軽合金製作所)
- 材料(前橋橋本合金株式会社)
- アルミ鋳造(株式会社東京鋳造所)
- 製品事例(株式会社木村鋳造所)
- 材質(キングパーツ株式会社)
- 三協ダイカスト株式会社
- ダイカスト(太陽パーツ株式会社)
- 設備(株式会社JMC)
- 設備(株式会社ニューテック)
- 工場(株式会社東京鋳造所)
- 設備一覧(前橋橋本合金株式会社)
- 設備(光軽金属工業株式会社)
- 高信頼性鋳造品(日本プレシジョンキャスチング株式会社)
- 金属3Dプリンター受託造形(白銅株式会社)
- 対応材料(株式会社NTTデータザムテクノロジーズ)
よくある質問
AC4CとADC12の違いは何ですか?
AC4CはJIS H 5202「アルミニウム合金鋳物」の記号で、砂型・金型・ロストワックスなどの鋳物用合金です。ADC12はJIS H 5302「アルミニウム合金ダイカスト」のAl-Si-Cu系合金で、日本ダイカスト協会の資料ではアルミニウム合金ダイカストの約94%を占め、機械的性質・被削性が良くADC10に比べて鋳造性に優れるとされています。
AZ91DはJISだと何という記号ですか?
JIS H 5303「マグネシウム合金ダイカスト」ではMDC1DがAZ91D相当です。STGは標準材をMDC1D、JMCは対応材料をAZ91D(MDC1D)と併記しています。砂型・金型用のマグネシウム合金鋳物はJIS H 5203で、前橋橋本合金はAZ91(MC2)と記載しています。
ZDC1とZDC2はどちらが一般的ですか?
日本ダイカスト協会の資料によると、亜鉛合金ダイカストの生産比率はZDC2(Zn-Al系)が76.1%、ZDC1(Zn-Al-Cu系)が22.8%です。今回調査した34社では三協ダイカスト、太陽パーツ、プロテックジャパンがZDC2を、共栄デザインがZDC1・ZDC2を公式に挙げています。
材質記号の後ろのT6は何ですか?
T6はJIS H 0001に基づく質別記号で、熱処理の状態を表します。JIS H 5202ではF、O、T4、T5、T6などが使われます。キングパーツはAC4C-T6、東京鋳造所はAC4C-T6・AC4A-T6のように質別まで含めて対応材質を記載しており、JMC(T4〜T7)やニューテック(T5・T6・T7、熱処理炉2基)は社内に熱処理設備を持つと公式に記載しています。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
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砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
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