軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
ダイカスト試作の方法|簡易金型・試作用金型と量産金型の違い【2026年版】
ダイカスト品の試作には、簡易金型で実際にダイカストする方法、石膏鋳造でダイカスト用合金を鋳る方法、量産機で小ロットを受ける方法があります。日本ダイカスト協会の金型構造の解説と、協和合金・クライム・ワークス・プロテックジャパン・ニューテックなど国内各社の公式記載で、納期・ロット・精度・費用の違いと選び方を解説します。
量産がダイカストの部品を試作するとき、最初の分かれ道は「実際にダイカストで作るか」「別工法でダイカスト用合金を鋳るか」です。このページでは、金型の構造から試作の3つの選択肢、量産へ引き継ぐ際の確認点まで、公的資料と各社の公式記載で整理します。
量産ダイカスト金型の構造と費用がかかる理由
日本ダイカスト協会の資料によると、ダイカスト金型は固定型と可動型に大別され、キャビティを構成する入子には一般に熱間工具鋼SKD61やその改良材が使われます。溶融金属を高圧で圧入するため、金型は高温と圧力に耐える鋼材で作られます。
- 金型の分類:1個取り・同形多数個取り・異形多数個取り
- 引抜中子を設けると金型が複雑・高価になるが、多様な形状の生産が可能になる
- 1つの金型で数万回(利点ページでは数千から数十万回)の繰り返し鋳造が可能
つまり量産金型は「数万回使う前提で作る高価な型」です。数個〜数百個の試作にこの金型を起こすと、型費が製品単価に重くのしかかります。
試作の工法は、この型費をどう避けるかで分かれます。
試作の3つの選択肢:簡易金型・石膏でダイカスト材・削り出し
各社の公式サイトを整理すると、ダイカスト品の試作方法は大きく3つに分かれます。それぞれ「材質」「製法」「得られる評価」が異なります。
| 方法 | 材質・製法 | 評価できること | 公式に掲げる会社 |
|---|---|---|---|
| 簡易金型ダイカスト | 熱処理不要の鋼材などで簡易金型を作り、実際にダイカストマシンで鋳造 | 量産と同じ材質・同じ圧入プロセスの品質 | 協和合金、クライム・ワークス、プロテックジャパン |
| 石膏鋳造でダイカスト用合金 | 石膏型にADC12などを注湯 | 量産材の形状・鋳肌・寸法(圧入はしない) | ニューテック、日邦産業、共栄デザイン、アドバンス、モールドモデル、ジャノメダイカスト |
| 削り出し | ADC12などのブロックから切削 | 形状・組付け(鋳造組織ではない) | 光軽金属工業(A5052・A6061・ADC12の削り出し試作、3Dデータ受領後2週間程度) |
協和合金は「開発試作からダイキャスト品で評価しておけば量産時の不具合を未然に防ぐことができます」と説明しています。光軽金属工業は「試作数量に合わせて砂型や削り出しなど適切な工法を提案」と、数量に応じた使い分けを掲げています。
簡易金型ダイカストの納期・ロット・精度(各社公式)
簡易金型ダイカストは、量産金型より簡素な型で実際にダイカストする方法です。公式に数字を出している3社を並べます。
| 会社 | 簡易金型の内容 | 納期 | ロット | 精度・設備 |
|---|---|---|---|---|
| 協和合金(埼玉県川口市) | 3CDプロセス。簡易金型は熱処理不要の鋼材で製作、自社で設計・金型製作・鋳造 | データ完成から最短1週間、金型完成から1時間で鋳造可能 | 数十〜数百個 | 三次元測定器導入 |
| クライム・ワークス(東京都大田区) | ダイカストスピード試作、ADC12材、DC鋳造品を石膏鋳造品並みの納期で製作 | 石膏鋳造品並み(日数記載なし) | 10台以下の試作 | CT6(T1レベル)/CT7、5軸MC、三次元測定器4台、リーク試験機 |
| プロテックジャパン(東京都板橋区) | 簡易金型によるダイキャスト、簡易金型はMCで直接加工 | 約20日(従来35日程度、製作期間は約2/3) | 30個〜、目安は50個前後、ロット50〜100の量産に適す | コストは約1/2程度、対応材ADC12・ADC6・ADC7・ADC3・HT-1・ZDC2 |
クライム・ワークスは公式事例にEVインバーターケース、モーターユニット、コントロールユニットを挙げています。協和合金は照明用部品でロストワックスから簡易金型ダイカストへ切り替えた事例を掲載しており、機構部品などの実績もあります。
石膏鋳造でダイカスト用合金を鋳る方法
金型を作らずに量産材で形を得る方法が、石膏鋳造によるダイカスト用合金の鋳造です。ニューテックは「ADC12材でダイカスト同等品質の試作」を掲げ、金型製造不要でコスト60%ダウン・納期50%短縮の事例を公開しています。
- ニューテック:石膏鋳造CT7級保証(CT5・CT6級実績)、5〜30個(100個まで相談可)、最短2.5週間
- 日邦産業:ADC1・ADC6・ADC10・ADC12・ADC14他、CT6相当、1個〜最大1,000個/年、最短3週間
- 共栄デザイン:ADC12・ADC1・ADC6、5〜100個程度でダイカスト相当の品質、最短5日
- ジャノメダイカスト:アルミ・マグネシウムダイカスト製品の石膏鋳造試作、3Dデータから最短7日、量産は1250tダイカストマシン
石膏鋳造は圧入をしないため、簡易金型ダイカストのように量産プロセスそのものを再現するわけではありません。形状・鋳肌・寸法・組付けの確認が目的なら十分で、圧入条件に依存する評価が必要なら簡易金型を選びます。
量産金型で最初から試作するケース
量産機と量産金型で最初から小ロットを受ける会社もあります。数量が見えていて、試作と量産を同じ型で通したい場合の選択肢です。
| 会社 | 公式の最小ロット・納期 | 設備 |
|---|---|---|
| 光軽金属工業(岡山県) | ダイカストMIN100(どのマシンサイズでも100個より対応可能)、納期3.5ヶ月〜 | ダイカストマシン350〜2250t、最大700×500mm・15kg |
| 太陽パーツ(大阪府堺市) | ダイカストカセットシステム(特許製法)で50個/1ロットから生産可能 | アルミ・亜鉛・マグネシウムの多品種生産 |
| STG(大阪府八尾市) | マグネシウムダイカスト、国内拠点で月産50個〜20,000個程度、試作品提供は最終図面から実稼働40〜45日 | 鋳造・トリミング・仕上・機械加工を内製 |
| FIRMS(大阪府) | 試作品は1個からでも承ります | アルミダイカストマシン630t〜100t、亜鉛150t・100t |
| 三協ダイカスト(埼玉県戸田市) | 試作から小ロット生産まで柔軟対応(具体数の記載なし) | 125tコールドチャンバー4台、25tホットチャンバー1台、CTスキャナ |
| サンエスダイカスト(大阪府八尾市) | 試作や小ロットにも対応(具体数の記載なし) | ダイカストマシン125〜350t、マシニングセンタ7台 |
光軽金属工業のダイカスト納期3.5ヶ月〜は、量産金型の製作を含むとみられる期間です。簡易金型の最短1週間(協和合金)や約20日(プロテックジャパン)と比べると、量産金型を起こすかどうかで納期の桁が変わることが分かります。
評価目的別の工法の選び方
試作で何を確かめたいかによって、選ぶ方法は変わります。各社の公式記載を根拠に、目的ごとの候補を整理します。
- 形状・組付け・重量の確認:石膏鋳造(共栄デザイン最短5日、ジャノメダイカスト最短7日)または削り出し(光軽金属工業2週間程度)
- 量産材ADC12の鋳肌・寸法の確認:石膏鋳造でADC12(ニューテック、日邦産業、共栄デザイン)
- ダイカストプロセスそのものでの評価(気密・内部品質):簡易金型ダイカスト(協和合金、クライム・ワークス、プロテックジャパン)
- 数十〜数百個の先行供給:簡易金型(協和合金は数十〜数百個、プロテックジャパンはロット50〜100)、量産機の小ロット(太陽パーツ50個〜、光軽金属工業100個〜)
- 量産とマグネシウム:STG(月産50個〜)、ジャノメダイカスト(石膏試作→ダイカスト量産)
クライム・ワークスはCT6(T1レベル)/CT7を掲げ、ニューテックの石膏鋳造もCT7級保証(CT5・CT6級実績)です。公差等級で見ると両者は同じ帯にあり、違いは材質の作り込み方(圧入か注湯か)にあります。
試作用金型から量産へ引き継ぐ際の確認事項
試作で確認した形状を量産金型に移すとき、協会の設計ガイドが挙げる項目を試作段階で織り込んでおくと手戻りが減ります。協会は「初期段階でダイカスト専業者との十分な話し合いを行い」その知識と経験を織り込むことを勧めています。
- 肉厚:協会の一般肉厚はアルミニウムダイカストで小物0.8〜3.0mm、大物2.0〜6.0mm。できる限り均一な肉厚にする
- 抜き勾配:石膏鋳造で抜き勾配ゼロのまま評価した形状は、量産金型では勾配を付けるか引抜中子を検討する
- 隅と角:製品と金型の損傷を避けるため、内側の隅と外側の角に適当な丸みを付ける
- 仕上代:機械加工を必要とする製品は0.25〜0.8mmの仕上代を設ける
- 寸法許容差:標準以上のきびしい寸法許容差を指定しないことが望ましい
寿金属工業(ダイカスト・重力・砂型・石膏の4工法)やジャノメダイカスト(石膏試作+1250tダイカスト)のように試作と量産の両方を持つ会社なら、試作の段階から量産金型の条件で設計相談ができます。
この記事に出てくる会社
- 株式会社アドバンス試作総合×石膏、1個から
- 株式会社クライム・ワークス量産同材ダイカストで10台以下
- FIRMS株式会社3金属のダイカストを1個から
- 光軽金属工業株式会社3工法を数量で使い分け
- ジャノメダイカスト株式会社石膏試作→ダイカスト量産
- 寿金属工業株式会社4工法保有、1個から耐圧試験まで
- 株式会社 共栄デザイン最短5日・価格例あり
- 有限会社協和合金簡易金型で数十個を最短1週間
- 有限会社モールドモデル石膏専業、5〜100個が得意
- 株式会社ニューテックADC12試作の定番、CT7保証
- 日邦産業株式会社大型石膏鋳造、1,500mmまで
- 株式会社プロテックジャパン多工法の試作窓口、工場は要確認
参照元
- ダイカストって何? 金型構造(日本ダイカスト協会 p.18)
- ダイカストって何? ダイカストとは・製法(日本ダイカスト協会 p.11)
- ダイカストって何? ダイカストの利点(日本ダイカスト協会 p.26)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.29)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.30)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.31)
- 簡易金型 3CDプロセス(有限会社協和合金)
- 導入事例(有限会社協和合金)
- ダイカストスピード試作(株式会社クライム・ワークス)
- 製品紹介(株式会社クライム・ワークス)
- 簡易金型ダイキャスト(株式会社プロテックジャパン)
- 鋳造(株式会社プロテックジャパン)
- 石膏鋳造(株式会社ニューテック)
- 試作石膏鋳造(日邦産業株式会社)
- 石膏鋳造(株式会社共栄デザイン)
- 石膏鋳造(ジャノメダイカスト株式会社)
- サービス(光軽金属工業株式会社)
- よくある質問(光軽金属工業株式会社)
- ダイカスト(太陽パーツ株式会社)
- マグネシウム鋳造・ダイカスト試作センター(株式会社STG)
- 試作対応(FIRMS株式会社)
- 設備(FIRMS株式会社)
- 三協ダイカスト株式会社
- 業務案内(サンエスダイカスト株式会社)
- 設備(寿金属工業株式会社)
よくある質問
ダイカストの試作は金型なしでできますか?
できます。ニューテック・日邦産業・共栄デザインなどは石膏鋳造でADC12などのダイカスト用合金を鋳造し、「ダイカスト同等品質」「CT6相当」を公式に掲げています。実際にダイカストマシンで鋳造したい場合は、協和合金(データ完成から最短1週間、数十〜数百個)やプロテックジャパン(約20日、ロット50〜100)のように熱処理不要の鋼材などで簡易金型を作る方法があります。
簡易金型と量産金型は何が違いますか?
日本ダイカスト協会の資料では、量産用のダイカスト金型は固定型と可動型に分かれ、入子には熱間工具鋼SKD61やその改良材を使い、1つの金型で数万回の繰り返し鋳造に耐えます。簡易金型は協和合金が「熱処理不要の鋼材で製作」、プロテックジャパンが「MCで直接加工」と説明しており、少数の鋳造を前提に型費と製作期間を抑えた型です。プロテックジャパンはコスト約1/2・製作期間約2/3を掲げています。
ダイカスト試作の納期はどれくらいですか?
簡易金型ダイカストは協和合金がデータ完成から最短1週間、プロテックジャパンが約20日です。石膏鋳造でダイカスト用合金を鋳る場合は共栄デザインが最短5日、ジャノメダイカストが3Dデータから最短7日、ニューテックが最短2.5週間です。量産金型を起こす場合は光軽金属工業がダイカスト3.5ヶ月〜と公開しています。
ダイカストの試作を数百個まとめて頼めますか?
協和合金は簡易金型で「数十〜数百といった小ロットのダイキャスト鋳造が可能」、プロテックジャパンは簡易金型でロット50〜100程度の量産に適すとし600個の実績を挙げています。量産機では太陽パーツがダイカストカセットシステムで50個/1ロットから、光軽金属工業がMIN100個、STGがマグネシウムで月産50個〜と公式に記載しています。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
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株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
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