軽金属鋳造の試作 · 用途別
マグネシウム合金で軽量部品を試作したい|AZ91D・AM60B対応の会社と石膏・砂型・ダイカストの使い分け【2026年版】
マグネシウム合金(AZ91D=MDC1D、AM60B=MDC2B、ZE41A、EV31など)の鋳造試作を依頼したい方向けに、JIS H 5303・H 5203の規格、公式にマグネシウム対応を明記する会社(STG、JMC、ニューテック、日邦産業、前橋橋本合金、イナテック、プロテックジャパン、FIRMS、太陽パーツ、モールドモデル、武杉製作所)、石膏鋳造・砂型・ダイカストの使い分け、防食処理、設計上の注意を公式記載で解説します。
マグネシウム合金は、日本ダイカスト協会の資料で「すべてのダイカストの中で最も軽量」とされ、JMCの解説では比重1.7で「アルミニウムの約2/3、チタンの約1/3、鉄の約1/4の軽さ」と説明されています。このページでは、マグネシウムの試作を公式に受けている会社と工法の使い分けを整理します。
マグネシウム合金の特性と規格(JIS H 5303・H 5203)
マグネシウム合金の規格は、ダイカスト用のJIS H 5303と、砂型・金型・精密鋳造用のJIS H 5203に分かれます。呼び方はASTM系のAZ91D・AM60Bが一般的で、両方を読めると各社の記載を突き合わせられます。
| 項目 | 公的資料の記載 |
|---|---|
| JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト | 7種類:MDC1B(AZ91B相当)、MDC1D(AZ91D相当)、MDC2B(AM60B相当)、MDC3B(AM50A相当)、MDC4(AE44相当)、MDC5(AS41相当)、MDC6 |
| JIS H 5203 マグネシウム合金鋳物 | 砂型・金型・精密鋳造用のMC2C、MC2Eなど |
| 生産比率 | Mg-Al-Zn系のMDC1D(AZ91D相当)が87%を占める(協会資料) |
| 機械的性質 | アルミニウム合金ダイカストと比較すると若干劣るが、比強度はアルミニウム合金より高い(協会資料) |
| 防食 | 通常JIS H 8651(マグネシウム合金防食処理方法)の仮防食処理が施される(協会資料) |
| 振動吸収 | 実用金属の中で最大の振動吸収性(減衰能)を持つ(JMC解説) |
協会の設計ガイドが示すマグネシウムダイカストの最大質量は20kg、一般肉厚は大物2.0〜4.0mm・小物0.8〜2.0mmです。アルミニウム(最大40kg、大物2.0〜6.0mm・小物0.8〜3.0mm)より上限が小さい点は、設計の前提になります。
マグネシウム対応を公式に明記する会社
今回調査した34社のうち、公式サイトにマグネシウム合金の対応を明記している会社を、工法と合金名で並べます。
| 会社 | 工法 | 公式に挙げるマグネシウム合金 | 本社 |
|---|---|---|---|
| STG | ダイカスト(マグネシウム専業) | 標準材MDC1D(AZ91D)、MD2B(AM60B)実績あり | 大阪府八尾市(静岡工場あり) |
| JMC | 3Dプリント砂型・低圧鋳造・マグネシウムダイカスト | AZ91D(MDC1D)、ZE41A(RZ5)、EV31(Elektron21)、WE54A、KEHMA(参考値) | 長野県飯田市(本社横浜) |
| ニューテック | 石膏鋳造・消失鋳造 | ZE41A(ZE41)、EV31、AM60など | 長野県長野市 |
| 日邦産業 | 石膏鋳造 | AZ91D、AM60B他(最大800×600×400mm) | 愛知県名古屋市 |
| 前橋橋本合金 | 砂型・3Dプリント砂型 | AZ91(MC2) | 群馬県前橋市 |
| イナテック | 精密砂型鋳造 | AZ91D | 愛知県西尾市 |
| プロテックジャパン | 石膏鋳造 | 各種マグネシウム合金(AZ91Dなど) | 東京都板橋区 |
| ジャノメダイカスト | 石膏鋳造(試作)→ダイカスト(量産) | アルミ・マグネシウムダイカスト製品の石膏鋳造試作(合金名の記載なし) | 山梨県都留市 |
| 太陽パーツ | ダイカスト(カセットシステム) | AZ91 | 大阪府堺市 |
| FIRMS | ダイカスト | マグネシウム合金など(合金名の記載なし) | 大阪府 |
| モールドモデル | 石膏鋳造 | マグネシウム合金(合金名の記載なし) | 山梨県都留市 |
| 武杉製作所 | ロストワックス | マグネシウム(溶融金属全てに対応の一項目) | 神奈川県横浜市 |
合金名まで公式に書いている会社と、「マグネシウム合金」とだけ書いている会社があります。ZE41AやEV31のような希土類系は、ニューテックとJMCが公式に挙げています。
石膏鋳造・砂型でのマグネシウム試作
金型を起こさずにマグネシウムの現物を得るには、石膏鋳造か砂型が候補です。公式に条件を出している会社を整理します。
- ニューテック(石膏鋳造・消失鋳造):アルミニウム合金・マグネシウム合金の精密鋳造専門、試作実績10,000件以上、溶解炉4基(アルミ・マグネシウム対応)、石膏鋳造CT7級保証、最短2.5週間、5〜30個
- 日邦産業(石膏鋳造):マグネシウム最大800×600×400mm、CT6相当、1個〜最大1,000個/年、最短3週間
- 前橋橋本合金(砂型):AZ91(MC2)、最小ロット1個、最大200kg・2,000mm、積層砂型3Dプリンター、T6処理炉
- イナテック(精密砂型):AZ91Dの精密砂型鋳造、CT6級、最小肉厚1.5mm、ロット1〜、最短3日
- JMC(砂型・3Dプリント砂型):マグネシウム専用溶解炉2基、耐食性を向上させる表面処理(化成処理、陽極酸化処理、塗装等)に対応
- プロテックジャパン(石膏鋳造):AZ91Dなど、最大1,000×1,000×300mm、最小肉厚0.6mm
JMCの解説は、マグネシウム鋳造品が「切りくずの取り扱いなどから嫌厭されがち」と記載しています。マグネシウムを扱う会社が限られる背景で、専用溶解炉の有無(JMCはアルミ専用9基とマグネシウム専用2基を分けて記載)は確認する価値があります。
マグネシウムダイカストの試作と量産(STG・JMC)
量産がマグネシウムダイカストの部品は、専業のSTGが試作から量産までの条件を最も詳しく公開しています。JMCもマグネシウムダイカストを製品に掲げています。
| 項目 | STG(公式FAQ・トップページ) |
|---|---|
| 材質 | 標準材MDC1D(AZ91D)、MD2B(AM60B)実績あり。マグネシウム合金の材料のみで部品製造 |
| ロット | 国内拠点で最小ロット月産50個〜最大20,000個程度(トップページでは最大40,000個/月の生産実績) |
| 試作納期 | 量産部品の試作品提供は、最終図面を頂いてから早いもので実稼働40〜45日 |
| 試作の工法 | 石膏鋳造や削り出しを採用し金型鋳造よりイニシャルコストを抑える。試作段階の石膏・木型鋳造は協力会社に依頼し取り回し対応 |
| 精度・薄肉 | 素材寸法公差±0.03mmまで実現、薄肉0.35mmに対応 |
| 後工程 | 鋳造・トリミングから仕上・機械加工までを内製化、化成処理・塗装まで一貫対応 |
| 拠点・認証 | 日本(大阪・静岡)、中国、タイ、マレーシア。ISO9001(本社)、IATF16949(タイ工場) |
| 事例 | 自動車メーターパネル背面盤試作品、自動車部品・通信機器・医療機器・カメラ・光学機器 |
STGの「実稼働40〜45日」は量産部品の試作品、つまり量産金型に近い条件での試作と読めます。1個を早く見たい段階では、STGが協力会社で行う石膏鋳造か、日邦産業・ニューテック・プロテックジャパンの石膏鋳造を直接使う選択になります。
防食処理と検査
協会資料によると、マグネシウム合金ダイカストには通常JIS H 8651の仮防食処理が施されます。試作でも、防食処理を誰が行うかを決めておく必要があります。
- STG:化成処理・塗装まで一貫対応、三次元測定器・3Dスキャナー型測定器、工程毎の標準検査でロット保証
- JMC:化成処理・陽極酸化処理・塗装等に対応、X線CT計6台、ISO9001・JIS Q 9100
- ニューテック:表面処理、X線CT XT H 320LC、三次元測定器2台
- 日邦産業:精密鋳造から二次加工、熱処理まで一貫対応
- 前橋橋本合金:ヘリウムリークディテクター2台、三次元座標測定機
- イナテック:CT検査、非破壊検査、蛍光浸透探傷試験
化成処理の仕様(色・膜の種類)は会社ごとに異なるため、量産で使う処理と同じ仕様を試作に指定できるかを確認してください。
アルミからマグネシウムへ置き換える際の設計注意(協会設計ガイド)
アルミ部品をマグネシウムに置き換える試作では、協会の設計ガイドの数値が変わる点に注意します。同じ形状のままでは、鋳造できない場合があります。
| 項目 | アルミニウム(協会資料) | マグネシウム(協会資料) |
|---|---|---|
| 最大質量 | 40kg | 20kg |
| 肉厚(大物) | 2.0〜6.0mm | 2.0〜4.0mm |
| 肉厚(小物) | 0.8〜3.0mm | 0.8〜2.0mm |
| 抜勾配 | 設計ガイドの抜勾配グラフにアルミニウム合金の線 | 同グラフにマグネシウム合金の線(アルミニウム合金と異なる) |
協会の設計ガイドには、内側壁の深さに対する抜勾配のグラフが銅合金・アルミニウム合金・亜鉛合金・マグネシウム合金の4本の線で示されています。マグネシウムはアルミニウムと別の線になるため、量産金型を前提にする試作では抜勾配の数値も見直します。
石膏鋳造なら抜き勾配ゼロで試作できるため(日邦産業は抜き勾配0°対応、ニューテックは抜き勾配ゼロ度対応)、形状確認と量産設計は分けて進められます。
相談時に伝える材質指定の書き方
マグネシウムは会社ごとに扱える合金が異なるため、材質指定は具体的に書きます。各社の公式記載に合わせた書き方を示します。
- JIS記号とASTM名を併記する:MDC1D(AZ91D相当)、MDC2B(AM60B相当)。STGは「MDC1D」「MD2B」、日邦産業は「AZ91D、AM60B」と表記が異なる
- 砂型・石膏の場合はJIS H 5203側で書く:前橋橋本合金は「AZ91(MC2)」と併記
- 希土類系(ZE41A、EV31、WE54A)はニューテック・JMCに絞る:JMCは「当社の参考値であり規定値ではありません」と注記
- 数量と工法の希望を添える:1〜数個なら石膏鋳造(日邦産業1個〜、ニューテック5〜30個)、月産50個以上のダイカストならSTG
- 防食処理の仕様と、量産で使う処理との整合を伝える(協会資料ではJIS H 8651の仮防食処理が通常)
- 最大寸法:日邦産業のマグネシウム石膏鋳造は800×600×400mm、協会の最大質量は20kg
合金名を書いていない会社(FIRMS、モールドモデル、ジャノメダイカスト、武杉製作所)に依頼する場合は、対応合金を最初の問い合わせで確認してください。
この記事に出てくる会社
- FIRMS株式会社3金属のダイカストを1個から
- 株式会社イナテック薄肉砂型をCT6級で最短3日
- ジャノメダイカスト株式会社石膏試作→ダイカスト量産
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- 前橋橋本合金株式会社200kg大物を1個から
- 有限会社モールドモデル石膏専業、5〜100個が得意
- 株式会社ニューテックADC12試作の定番、CT7保証
- 日邦産業株式会社大型石膏鋳造、1,500mmまで
- 株式会社プロテックジャパン多工法の試作窓口、工場は要確認
- 株式会社STG(マグネシウム鋳造・ダイカスト試作センター.com)Mgダイカスト量産前提の試作
- 太陽パーツ株式会社(ロストワックス鋳造.com)半商社、工法転換提案が強み
- 株式会社武杉製作所金型レス試作→100個量産
参照元
- ダイカストって何? マグネシウム合金ダイカスト(日本ダイカスト協会 p.23)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.29)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.30)
- JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト(日本産業標準調査会 JIS検索)
- マグネシウム砂型鋳造(株式会社JMC)
- 対応合金データ(株式会社JMC)
- 鋳造(株式会社JMC)
- 設備(株式会社JMC)
- マグネシウム鋳造・ダイカスト試作センター(株式会社STG)
- STGについて(株式会社STG)
- よくある質問 321(株式会社STG)
- よくある質問 313(株式会社STG)
- 試作開発の事例(株式会社STG)
- 石膏鋳造(株式会社ニューテック)
- 会社概要(株式会社ニューテック)
- 設備(株式会社ニューテック)
- 試作石膏鋳造(日邦産業株式会社)
- 材料(前橋橋本合金株式会社)
- 前橋橋本合金株式会社
- 設備一覧(前橋橋本合金株式会社)
- 精密砂型鋳造(株式会社イナテック)
- 試作(株式会社イナテック)
- 石膏鋳造(株式会社プロテックジャパン)
- 会社概要(ジャノメダイカスト株式会社)
- ダイカスト(太陽パーツ株式会社)
- 試作対応(FIRMS株式会社)
- 石膏鋳造(有限会社モールドモデル)
- ロストワックス(株式会社武杉製作所)
よくある質問
マグネシウム合金の鋳造試作はどこに頼めますか?
公式サイトにマグネシウム対応を明記しているのは、STG(マグネシウム専業ダイカスト、MDC1D・MD2B、月産50個〜)、JMC(マグネシウム専用溶解炉2基、AZ91D・ZE41A・EV31・WE54A)、ニューテック(石膏鋳造、ZE41A・EV31・AM60)、日邦産業(石膏鋳造、AZ91D・AM60B)、前橋橋本合金(砂型、AZ91)、イナテック(精密砂型、AZ91D)、プロテックジャパン(石膏鋳造、AZ91D)などです。
AZ91DとAM60Bはどう違いますか?
JIS H 5303ではAZ91D相当がMDC1D、AM60B相当がMDC2Bです。日本ダイカスト協会の資料では、Mg-Al-Zn系のMDC1D(AZ91D相当)がマグネシウム合金ダイカストの87%を占め、MDC2Bなどは特殊用途とされています。STGは標準材をMDC1D(AZ91D)とし、MD2B(AM60B)は実績ありと記載しています。
マグネシウムの試作を1個だけ頼めますか?
頼めます。日邦産業は石膏鋳造でマグネシウム(AZ91D、AM60B他)を1個〜最大1,000個/年、最大800×600×400mm、前橋橋本合金は砂型でAZ91(MC2)を最小ロット1個、イナテックは精密砂型でAZ91Dをロット1〜と公式に記載しています。STGは月産50個〜が国内拠点の最小ロットで、試作段階の石膏鋳造は協力会社で取り回し対応としています。
アルミの部品をマグネシウムに変えるとき設計で注意することは何ですか?
日本ダイカスト協会の設計ガイドでは、ダイカストの最大質量がアルミニウム40kgに対しマグネシウム20kg、一般肉厚が大物でアルミニウム2.0〜6.0mmに対しマグネシウム2.0〜4.0mm、小物で0.8〜3.0mmに対し0.8〜2.0mmです。抜勾配のグラフもアルミニウム合金とマグネシウム合金で別の線が引かれています。防食は通常JIS H 8651の仮防食処理が施されます。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
大物・複雑形状・ギガキャスト級の砂型試作なら
株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
まず1個を、数日で手に取りたいなら
株式会社 共栄デザイン
石膏鋳造で最短5日。1個から月1個の少量生産まで、亜鉛や高熱伝導合金も
金型を使わない石膏鋳型で「最短5日で高精度な試作品」を製作し、1個からの試作・月1個の少量生産に対応。アルミ鋳物合金AC2A〜AC8A、ダイカスト用ADC12・ADC1・ADC6、亜鉛ZDC1・ZDC2、高熱伝導アルミHT-1・DMSに対応。寸法公差±0.2〜0.7mm、Carl Zeissの三次元測定機、社内マシニングで機械加工。5〜100個ならダイカスト相当の品質、小ロット製造は素材初品3週間〜。
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