熱処理の受託加工会社 · 基礎知識
熱処理の見積に必要な情報|図面の書き方・材質・数量・納期の伝え方と送り方【2026年版】
熱処理の見積が早く正確に返ってくるように、最初の問い合わせで送る項目、図面に書くべき熱処理の指示、価格と納期を左右する要素、部品の送り方を整理します。掲載会社が公式に出している標準納期や、問い合わせ方法の違いもまとめました。
熱処理の見積は、材質と硬さの指定がそろっていないと、確認の連絡が往復して時間がかかります。最初の問い合わせで必要な情報を送れば、回答は早くなります。
このページでは、見積に必要な項目と、公式に出ている納期の目安、部品の送り方を整理します。
掲載25社の公式サイトから、問い合わせの受け方や納期の書き方が具体的な例を拾っています。初めて熱処理を外に出す担当者でも、この順に準備すれば見積までの往復を減らせます。
見積が止まりやすい問い合わせの例
受託会社が見積を出せない問い合わせには、共通する抜けがあります。次のどれかに当てはまると、確認の連絡が返ってきます。
- 処理名だけで、材質(鋼種)が書いていない
- 硬さの指定がない、または上限・下限のどちらかしかない
- 浸炭や高周波で、硬化層深さが書いていない
- 寸法と1個の重さがわからない
- 数量が、試作数なのか月産数なのか区別されていない
図面がない段階でも相談できる会社はあります。アイキン熱処理工業はFAQで、図面がない場合は寸法・形状・鋼種・規格硬さを知らせてほしいと書いています。
最初の問い合わせで送る10項目
次の10項目を1枚にまとめて送ると、見積に必要な情報がそろいます。わからない項目は未定と書けば、受託会社から提案を受けられます。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 1. 処理の種類 | 真空焼入れ+焼戻し、浸炭焼入れなど。目的だけでも可 |
| 2. 材質 | SKD11、SCM415、S45C、A7075など材料記号 |
| 3. 寸法・重量 | 外形寸法と1個の重さ |
| 4. 硬さ | 上下限(例: HRC58〜62)と測る位置 |
| 5. 硬化層深さ | 有効か全かを明記(浸炭・高周波・窒化) |
| 6. 処理範囲 | 全体/部分(範囲を図示)、防炭の要否 |
| 7. 数量 | 試作数と、量産の月産数 |
| 8. 希望納期 | 試作と量産それぞれ |
| 9. 検査・記録 | 硬さ測定記録、温度チャート、検査表など |
| 10. 前後の工程 | 研削、歪取り、ショットブラスト、コーティングの有無 |
6番の防炭は、浸炭させたくない部分を覆う指示です。後でねじを切る部分や溶接する部分など、硬くなると困る範囲があれば図に示してください。
図面に書く熱処理の指示
図面の熱処理指示は、受託会社が条件を決める唯一の根拠になります。次の要素が書いてあるか確かめてから送ってください。
- 処理名(焼入れ焼戻し、浸炭焼入れ焼戻し、ガス軟窒化など)
- 硬さと単位(HRC、HV、HB)、測定位置
- 硬化層深さの種類と範囲
- 部分処理の範囲と、処理しない部分
- 歪みや曲がりの許容値
歪みの許容値が書いていないと、受託会社は矯正の要否を判断できません。栗山熱処理は歪取りのみの依頼も受け、0.05〜0.1まで修正すると公式に書いています。
価格と納期を左右する要素
熱処理の価格表を公式に載せている会社は、今回の25社にはありませんでした。価格は、炉にどれだけ詰められるかと、処理時間の長さで決まります。
| 要素 | 影響 |
|---|---|
| 重量と体積 | 炉の1回分(1チャージ)に占める割合で費用が決まる |
| 硬化層深さ | 深いほど処理時間が長い |
| 処理の組み合わせ | 焼戻し回数、サブゼロ、歪取りの追加 |
| 専用治具・コイル | 高周波焼入れでは形状ごとにコイルが必要な場合がある |
| 特急 | アイキン熱処理工業は別途特急料金と記載 |
1個だけの処理でも、炉を1回動かす費用はかかります。丸眞熱処理工業は浸炭を抱き合わせ処理にして個単価で対応すると書いており、ほかの依頼と同じ炉に入れられれば費用を抑えられます。
公式に出ている納期の目安
標準納期を公式に出している会社は多くありません。数字が出ている例を並べます。
| 会社 | 処理 | 公式の記載 |
|---|---|---|
| アイキン熱処理工業 | 真空焼入れ+低温焼戻し2回 | 中1営業日 |
| アイキン熱処理工業 | プラズマ窒化 | 中2営業日 |
| 富士高周波工業 | 高周波焼入れ/レーザ焼入れ | 標準3営業日/2営業日 |
| ファインテック | SKD11の真空焼入・焼戻 | 最短翌日出荷 |
| 丸眞熱処理工業 | 浸炭 有効硬化層深さ1.0mm程度 | 毎日実施(1.5mm程度は毎週末) |
どの会社も、正式な納期は見積時に回答するか、条件で前後すると書いています。運送の日数も含めて日程を組んでください。
問い合わせと部品の送り方
問い合わせの窓口と、部品の受け渡しの方法は会社によって違います。公式に書かれている例を挙げます。
- 電話のみの受付: フクネツ
- 土日も電話対応: 栗山熱処理(年中無休・土日対応と記載)
- 郵送で受付: 丸眞熱処理工業
- 自社トラックの集配: アイキン熱処理工業(名古屋市内・愛知県内の場合あり)、渡辺製作所(自社便)
- 即日見積を掲げる: 武藤工業
部品を送るときは、切削油やさびを落とし、品番と数量、指示書を同梱してください。油が残ったままだと、炉の中で変色や汚れの原因になります。
試作から量産に移るときの確認
試作で硬さと歪みを確かめたら、量産に向けて条件を固めます。試作のときと同じ会社で量産まで通せるかも、ここで確認します。
- 試作と同じ炉・同じ条件で量産できるか
- 量産の月産数を、炉の処理能力で受けられるか
- ロットごとの検査の範囲と記録の様式
- 材料ロットが変わったときの確認方法
富士高周波工業は対応ロット数を1〜100,000ヶ/月と公式に書いています。共和熱処理は連続炉で3kg/個未満の品物を1時間あたり1t処理できるとしており、量産の規模感を問い合わせ前に確かめられます。
試作だけ別の会社に頼むと、量産先で条件の出し直しが必要になることがあります。アイキン熱処理工業は、試作の処理結果をもとに量産条件を提案できるとFAQに書いています。
相見積は条件をそろえて比べる
熱処理は、会社ごとに得意な処理と炉が違うので、相見積で比べる意味があります。ただし条件がそろっていないと、価格だけを比べても判断できません。
- 10項目を1枚にまとめ、同じ資料を2〜3社に送る
- 処理条件の提案(温度、焼戻し回数など)があれば並べて比べる
- 検査の範囲と記録の有無を確認する
- 運送の方法と日数を含めた納期で比べる
提案が会社ごとに違う場合は、その理由を聞いてください。歪みや硬さの出方についての説明が、選ぶ決め手になります。
価格が安くても、検査の記録がない、運送に日数がかかるといった条件の差があれば、総額と日程は逆転します。比べる表には、記録と運送の欄も作っておくと判断を誤りません。
この記事に出てくる会社
- アイキン熱処理工業株式会社金型・試作の真空焼入れを1個から
- 株式会社ファインテック超合金・SKD11の真空熱処理
- 富士高周波工業株式会社大物の部分焼入れ(高周波・レーザ)
- 株式会社フクネツ熱処理+研削・TD処理
- 栗山熱処理浸炭焼入れの一点物・急ぎ
- 株式会社共和熱処理鍛造・鋳造品の素形材熱処理
- 株式会社丸眞熱処理工業試験・試作の1個処理
- 武藤工業株式会社処理の種類が多い1個からの相談先
- 株式会社渡辺製作所幅広い処理を1社で(新潟・福島)
参照元
よくある質問
熱処理の見積は無料ですか?
見積の費用について公式に書いている会社は多くありません。武藤工業は即日見積を掲げています。問い合わせの際に確認してください。
図面がなくても見積できますか?
できる会社があります。アイキン熱処理工業はFAQで、図面がない場合は寸法・形状・鋼種・規格硬さを知らせてほしいと書いています。
1個だけだと割高になりますか?
炉を1回動かす費用がかかるため、量産より割高になりやすくなります。丸眞熱処理工業のように抱き合わせ処理で個単価に対応する会社もあります。
【用途別】熱処理の受託加工会社おすすめ3選
金型や試作部品を、1個から日数の見通しを持って焼入れしたいなら
アイキン熱処理工業株式会社
FAQで「1個からご対応」。真空焼入れは中1営業日〜、プラズマ窒化は中2営業日、ISO9001/14001
FAQで試作品・小ロットについて「はい、1個からご対応いたします」と答え、試作段階の条件出しや量産前の確認処理も受けると書いている。標準納期の目安は真空焼入れ+低温焼戻し2回が中1営業日、プラズマ窒化が中2営業日と処理ごとに公開。真空炉は600W×600H×1,000L・500kgなど、素形材用のバッチ炉は1,200W×900H×2,850L。ISO9001とISO14001を取得。
大型ギヤや長いシャフトの、必要な部分だけを硬くしたいなら
富士高周波工業株式会社
ギヤφ4,000mm・7.0t、シャフト6,000mm。1〜100,000ヶ/月、標準納期3営業日、ISO9001
高周波焼入れの対応寸法をギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、シャフト直径〜φ400mm・長さ〜6,000mm(横焼)、レール幅〜300mm・長さ〜6,000mmと部品形状ごとに公開。受託加工は対応ロット数1〜100,000ヶ/月、標準納期は高周波事業部3営業日、レーザ事業部2営業日。立会試作やオンライン立会試作、無料技術相談もある。ISO9001を取得。
航空機・研究用のアルミ合金を、規格どおりの記録つきで熱処理したいなら
TANIDA株式会社(かほく工業試験所)
Nadcap認定を掲げ、T4〜T7を最小ロット1個から。1,500×1,500×1,000mm、温度チャート提出可
かほく工業試験所(KILT)の熱処理ページで「Nadcap認定を取得」と書き、サイトにAS9100Dのロゴを掲示(リンク先のNadcap認定書は有効期限2022年11月30日のもので、現在の認定は要確認)。軽合金をメインにT4・T5・T6・T7に対応し、AMS 2750・AMS 2771(アルミ合金)・AMS 2768(マグネシウム合金)を規格例に挙げる。最小ロット1個から受け、すべての熱処理に熱処理記録を提供。最大ワークサイズは1,500×1,500×1,000mm、温度均一性±5.5℃、焼入れ遅れ時間13秒。