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熱処理の受託加工会社 · 基礎知識

熱処理の種類と選び方|焼入れ・焼戻し・焼なまし・浸炭・窒化・高周波の違い【2026年版】

金属熱処理の主な種類を、目的(硬くする・軟らかくする・歪みを抑える)から選べるように整理します。全体を処理する炉の熱処理と、表面だけを硬くする浸炭・窒化・高周波焼入れの違い、掲載25社がどの処理を扱っているかまでまとめました。

公開 2026年10月1日

熱処理は、金属を加熱して冷やす速さや雰囲気を変えることで、硬さや粘り強さを調整する加工です。同じ鋼でも、どの処理を選ぶかで仕上がりの性質は大きく変わります。

このページでは、主な熱処理の違いと選び方を、受託会社の公式情報とあわせて整理します。

受託会社はそれぞれ持っている炉が違うので、処理の種類を決めることは、頼む会社を絞ることにもつながります。

目的から逆算すると、候補は3つに分かれる

熱処理を頼むときは、処理名より先に部品をどうしたいかを決めると迷いません。目的ごとの候補は次のとおりです。

目的主な処理処理の範囲
全体を硬く、粘り強くしたい焼入れ・焼戻し(調質)、真空焼入れ部品全体
加工しやすくしたい、応力を抜きたい焼なまし、焼ならし、固溶化部品全体
表面だけ硬く、中は粘り強くしたい浸炭焼入れ、窒化、高周波焼入れ表面または一部分

表面だけを硬くする3つの処理は、温度と歪みの出方が違います。後半の章で詳しく比べます。

焼入れと焼戻しは、ほぼ必ずセットで頼む

焼入れは鋼を高温に加熱して急冷し、硬くする処理です。焼入れのままでは硬い反面もろいので、もう一度加熱する焼戻しで粘り強さを戻します。

  • 調質: 焼入れと焼戻しを合わせた呼び方。機械部品の素材に多い
  • 真空焼入れ: 真空中で加熱し、ガスで冷やす。表面が酸化しにくく、金型や精密部品に使われる
  • 無酸化焼入れ・光輝焼入れ: 雰囲気を整えて酸化を防ぐ
  • ソルト焼入れ: 塩浴で加熱・冷却する

真空焼入れはファインテック、岡谷熱処理工業、アイキン熱処理工業、武藤工業などが扱います。ソルトによる焼入れは栗山熱処理や横浜高周波工業が挙げています。

軟らかくする・整える処理もある

熱処理は硬くするだけではありません。切削しやすくしたり、溶接や加工でたまった応力を抜いたりする処理もあります。

処理目的扱う会社の例
焼なまし軟らかくする・応力を除く三和熱処理、北山熱錬工業所、共和熱処理
焼ならし組織を整え、切削性を上げる北山熱錬工業所(毎営業日)、共和熱処理
固溶化ステンレスの耐食性・加工性を戻す三和熱処理、広築、北山熱錬工業所
磁気焼鈍軟磁性材料の特性を出すコミヤマエレクトロン

大きな素材や鍛造品をまとめて処理するなら、炉の寸法と重量の上限が判断の決め手になります。三和熱処理は長さ4.5m・重さ10tまで、共和熱処理はバッチ炉で最大4tまでと公式に書いています。

浸炭・窒化・高周波焼入れを比べる

表面だけを硬くする3つの処理は、部品の中は粘り強いまま、表面の耐摩耗性を上げます。違いは、何をしみ込ませるか、どこまで熱を入れるかです。

処理しくみ向く部品扱う会社の例
浸炭焼入れ表面に炭素をしみ込ませて焼入れ歯車、軸(低炭素の合金鋼)栗山熱処理、栄熱処理工業、石井熱錬
窒化窒素をしみ込ませる。焼入れの急冷がない金型、摺動部品、歪みを嫌う部品朝日熱処理工業、九州イオン窒化センター
高周波焼入れ電磁誘導で必要な部分だけ加熱して急冷シャフト、ギヤ、レールの一部分富士高周波工業、熱研、東海高周波

浸炭は硬化層を深くできる一方、高温で処理するので歪みが出やすくなります。窒化は温度が低く歪みが小さい処理で、高周波は部分だけを短時間で硬くできるのが特長です。

アイキン熱処理工業はFAQで、窒化の処理温度は500〜600℃程度、浸炭は900℃以上と説明しています。この温度差が、歪みの大きさの差につながります。

高周波焼入れは、部品の形に合わせたコイルで加熱します。横浜高周波工業や西田和髙周波のように、コイルを社内で作る会社なら複雑な形状でも相談できます。

同じ焼入れでも、炉と冷やし方で仕上がりが違う

焼入れは、加熱する炉の雰囲気と、冷やす媒体の組み合わせで呼び方が変わります。仕上がりの色、酸化の有無、歪みの出方が違うので、外観や後加工の有無から選びます。

方式特徴公式に記載がある会社の例
真空炉+ガス冷却酸化しにくく表面がきれい。金型・精密部品向きファインテック、アイキン熱処理工業、岡谷熱処理工業
雰囲気炉+油冷却浸炭や無酸化焼入れの主流。量産に強い栄熱処理工業、栗山熱処理、石井熱錬
塩浴(ソルトバス)冷却が均一で歪みを抑えやすい栗山熱処理、フクネツ、横浜高周波工業
水素雰囲気の連続炉ステンレスの光輝熱処理広築

栗山熱処理は、ソルトバス焼入れでは油焼入れに比べて歪みが3分の1まで低減されると公式に書いています。焼入れ後に研削する余裕がない部品なら、炉と冷やし方まで相談してください。

表面の酸化を嫌う部品では、黒い酸化膜を落とすショットブラストが別に必要になることがあります。三和熱処理や共和熱処理はショットブラストを社内で行っています。

処理名だけで決めず、材質との相性を見る

熱処理は材質との組み合わせで結果が決まります。同じ処理名でも、鋼種が合わなければ狙いの硬さは出ません。

  • 浸炭: 栄熱処理工業はSCM415・SCM420・SCr420などの合金鋼を対象に挙げる
  • 高周波: 富士高周波工業はS45C・S50C・SCM435・SCM440などを挙げる
  • 真空熱処理: ファインテックはインコネル、ハステロイ、SKD11を挙げる
  • アルミ合金: TANIDAのかほく工業試験所や清水熱処理がT4〜T6などを扱う

図面に材質記号が書いてあれば、受託会社が処理との相性を判断できます。材質がわからない場合は、その旨を伝えて相談してください。

どれか決めきれないときの相談先

処理の種類を決めきれないときは、多くの処理を1社で扱う会社に目的を伝えるのが近道です。公式サイトで扱う処理の幅が広い会社を挙げます。

会社公式に挙げる処理
武藤工業真空、浸炭、窒化、高周波、火炎、ソルト、固溶化など
渡辺製作所真空、雰囲気(浸炭)、高周波、窒化、アルミ合金、ロウ付け
横浜高周波工業高周波、ソルト、真空、浸炭、軟窒化、プラズマ窒化など
九州イオン窒化センターイオン窒化、ガス軟窒化、ガス浸炭、真空、高周波など

相談では、部品の用途、壊れ方や摩耗の様子、求める硬さを伝えてください。処理の候補を2つ程度に絞ってもらえれば、試作で比べられます。

今使っている部品が摩耗や割れで困っているなら、現物の写真と壊れた位置も添えると話が早く進みます。富士高周波工業のように無料技術相談を設けている会社もあります。

この記事に出てくる会社

参照元

よくある質問

焼入れだけ頼むことはできますか?

焼入れのままでは硬い反面もろいため、焼戻しとセットで頼むのが一般的です。受託会社の多くは焼入れ焼戻し(調質)として受けています。

浸炭と窒化はどちらが歪みにくいですか?

一般に、処理温度が低く急冷のない窒化の方が歪みは小さくなります。硬化層を深くしたい場合は浸炭が向きます。

処理の種類がわからなくても相談できますか?

できます。部品の用途と求める硬さ、材質を伝えれば、受託会社が処理を提案します。武藤工業や渡辺製作所のように多くの処理を扱う会社が相談しやすい先です。

【用途別】熱処理の受託加工会社おすすめ3選

※2026年10月時点の公式サイト情報をもとに編集チームが選定。選定基準。

1イチオシ

金型や試作部品を、1個から日数の見通しを持って焼入れしたいなら

アイキン熱処理工業株式会社

FAQで「1個からご対応」。真空焼入れは中1営業日〜、プラズマ窒化は中2営業日、ISO9001/14001

FAQで試作品・小ロットについて「はい、1個からご対応いたします」と答え、試作段階の条件出しや量産前の確認処理も受けると書いている。標準納期の目安は真空焼入れ+低温焼戻し2回が中1営業日、プラズマ窒化が中2営業日と処理ごとに公開。真空炉は600W×600H×1,000L・500kgなど、素形材用のバッチ炉は1,200W×900H×2,850L。ISO9001とISO14001を取得。

アイキン熱処理工業株式会社の公式サイトへ当サイトの紹介を読む

2

大型ギヤや長いシャフトの、必要な部分だけを硬くしたいなら

富士高周波工業株式会社

ギヤφ4,000mm・7.0t、シャフト6,000mm。1〜100,000ヶ/月、標準納期3営業日、ISO9001

高周波焼入れの対応寸法をギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、シャフト直径〜φ400mm・長さ〜6,000mm(横焼)、レール幅〜300mm・長さ〜6,000mmと部品形状ごとに公開。受託加工は対応ロット数1〜100,000ヶ/月、標準納期は高周波事業部3営業日、レーザ事業部2営業日。立会試作やオンライン立会試作、無料技術相談もある。ISO9001を取得。

富士高周波工業株式会社の公式サイトへ当サイトの紹介を読む

3

航空機・研究用のアルミ合金を、規格どおりの記録つきで熱処理したいなら

TANIDA株式会社(かほく工業試験所)

Nadcap認定を掲げ、T4〜T7を最小ロット1個から。1,500×1,500×1,000mm、温度チャート提出可

かほく工業試験所(KILT)の熱処理ページで「Nadcap認定を取得」と書き、サイトにAS9100Dのロゴを掲示(リンク先のNadcap認定書は有効期限2022年11月30日のもので、現在の認定は要確認)。軽合金をメインにT4・T5・T6・T7に対応し、AMS 2750・AMS 2771(アルミ合金)・AMS 2768(マグネシウム合金)を規格例に挙げる。最小ロット1個から受け、すべての熱処理に熱処理記録を提供。最大ワークサイズは1,500×1,500×1,000mm、温度均一性±5.5℃、焼入れ遅れ時間13秒。

TANIDA株式会社(かほく工業試験所)の公式サイトへ当サイトの紹介を読む

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