熱処理の受託加工会社 · 基礎知識
熱処理の歪み・割れ・寸法変化を防ぐには|原因と設計・発注でできる対策【2026年版】
焼入れで起きる歪み・曲がり・焼割れ・寸法変化の原因と、設計段階と発注時にできる対策を整理します。歪みの小さい処理の選び方、歪取りや研削まで社内で行う受託会社、事前に伝えるべき情報を、掲載25社の公式情報をもとにまとめました。
熱処理で困ることの多くは、硬さではなく歪みと割れです。焼入れの急な加熱と冷却で、部品は少し伸び縮みし、形によっては曲がったり割れたりします。
このページでは、歪みと割れが起きる理由と、設計・発注の段階でできる対策をまとめます。
歪みは熱処理の会社だけの責任ではなく、形状や材質、前の工程にも原因があります。設計者と受託会社が早めに情報を共有することが、いちばんの対策です。
歪みと割れが起きる3つの理由
焼入れで寸法が変わるのは避けられません。問題になるのは、変化が大きすぎるか、部品の中で不均一に起きる場合です。
| 原因 | 起きること | 起きやすい部品 |
|---|---|---|
| 冷え方の差 | 厚い部分と薄い部分で縮み方が違い、反る | 肉厚差の大きい部品、長い軸 |
| 組織の変化 | 焼入れで体積が変わり、寸法が伸び縮みする | 精密な穴や嵌め合い |
| 応力の集中 | 角や穴の縁から焼割れが起きる | 鋭い角、急な段差、キー溝 |
加工でたまった応力が熱処理で開放されて曲がることもあります。機械加工の前後で、応力除去の焼なましを入れるかどうかも検討してください。
設計でできる対策
歪みと割れは、形状の工夫でかなり減らせます。図面を描く段階で、次の点を見直してください。
- 角に丸み(R)をつけ、急な段差を避ける
- 肉厚の差を小さくし、左右の形をそろえる
- 焼入れ後に研削する部分には、削り代を残す
- 穴やキー溝の縁が焼入れ範囲にかからないようにする
- 表面だけ硬ければよいなら、全体焼入れではなく部分焼入れを選ぶ
西田和髙周波は、狭い部分や穴の上の部分の焼入れなど、ほかでは難しい箇所にも対応すると書いています。形状の制約で困ったら、設計の段階で相談するのが確実です。
歪みの小さい処理を選ぶ
処理の種類によって、歪みの出方は大きく違います。精度が厳しい部品は、処理そのものを見直す方法もあります。
| 処理 | 歪みの傾向 | 公式に記載がある会社の例 |
|---|---|---|
| 窒化(ガス軟窒化・プラズマ窒化) | 処理温度が低く、急冷しない | 朝日熱処理工業、九州イオン窒化センター、アイキン熱処理工業 |
| ソルトバス焼入れ | 冷却が均一 | 栗山熱処理(油焼入れの1/3まで低減と記載) |
| 高周波焼入れ | 必要な部分だけ短時間で加熱 | 富士高周波工業、東洋高周波工業、熱研 |
| 歪み極小熱処理 | 独自の処理 | 岡谷熱処理工業(G処理) |
アイキン熱処理工業はFAQで、窒化は処理温度が500〜600℃程度と低いため変形が極めて少ないと説明しています。必要な硬化層の深さが窒化で足りるなら、浸炭から窒化に変えるのも選択肢です。
発注時に伝えること
受託会社は、部品の使われ方を知ると、炉への並べ方や冷やし方を工夫できます。次の情報を指示書に添えてください。
- 歪み・曲がりの許容値と、測る基準面
- 焼入れ後の工程(研削の有無と削り代)
- 過去に歪みや割れが出た位置と、その写真
- 前工程(溶接、プレス、切削)の内容
共和熱処理は、ロット内の製品が均一に加熱・冷却されるよう、製品をきれいに整列させて処理すると書いています。並べ方は品番ごとにQC工程表で決めており、量産で歪みをそろえるにはこうした管理が効きます。
材質と前の工程も、歪みに影響する
歪みは熱処理だけで決まるわけではありません。材質の焼入れのしやすさや、前の工程で部品にたまった応力も影響します。
| 要因 | 影響 | 対策の例 |
|---|---|---|
| 焼入れ性の高い合金鋼 | ゆっくり冷やしても硬くなり、歪みを抑えやすい | 精密部品はSKD11などの工具鋼を検討 |
| 炭素鋼(S45Cなど) | 急冷が必要で、歪みや割れが出やすい | 部分焼入れや形状の見直し |
| 溶接・プレス後の部品 | 残った応力が熱処理で開放される | 応力除去の焼なましを先に入れる |
| 荒加工のままの素材 | 削った後に応力が偏る | 荒加工→焼なまし→仕上げの順にする |
三和熱処理や北山熱錬工業所のように、焼なましや焼ならしを大物まで扱う会社なら、機械加工の途中に応力除去を入れる相談もしやすくなります。北山熱錬工業所は、焼ならしと高温・低温の焼鈍を毎営業日処理できると書いています。
真空熱処理を扱うファインテックや岡谷熱処理工業は、金型や精密部品の材質に合わせた処理を公式に挙げています。材質を変えられる段階なら、受託会社に材質の候補も聞いてみてください。
試作で歪みを確かめる手順
歪みの量は、形と材質と処理の組み合わせで決まるので、最初は試作で確かめるのが確実です。次の手順で進めると、量産の条件を決めやすくなります。
- 熱処理前に、基準面からの寸法と曲がりを測っておく
- 1〜数個を処理し、硬さと寸法変化、割れの有無を確認する
- 変化が大きい場合は、並べ方・処理・形状のどれを変えるか受託会社と相談する
- 研削の削り代を、測った変化量から決める
丸眞熱処理工業は試作コンビ二工房で1個から、アイキン熱処理工業は試作段階での条件出しも受けるとFAQに書いています。量産の前に、試作の結果を見て処理条件を一緒に決めてもらえる会社を選ぶと安心です。
歪取りと研削を同じ会社で
歪みを完全に防げない部品は、熱処理の後で矯正や研削をかけて仕上げます。熱処理と後工程を同じ会社で行えば、運搬の手間が減り、責任の所在もはっきりします。
| 会社 | 熱処理の後に行える工程 |
|---|---|
| 栗山熱処理 | 歪取り(0.05〜0.1まで修正) |
| 三和熱処理 | ショットブラスト、油圧プレスの曲がり矯正(丸棒10〜200φ) |
| 東洋高周波工業 | 歪矯正(100t・40tプレス)、研削(研磨) |
| 西田和髙周波 | 歪取り、円筒研削加工 |
| フクネツ | 曲がり矯正用プレス、円筒・内面・平面・センタレス研削 |
| 岡谷熱処理工業 | 歪み修正装置、研磨 |
研削まで頼む場合は、熱処理後の寸法公差も図面に書いてください。削り代が足りないと、黒皮や脱炭層が残ることがあります。
割れを見つける検査
焼割れは、表面に細い線として出ることが多く、目で見ただけでは見落とします。割れを嫌う部品では、検査の方法を発注時に指定してください。
- 磁粉探傷: 鋼の表面の割れを見つける。栄熱処理工業、東洋高周波工業、丸眞熱処理工業が装置を挙げる
- 浸透探傷: 横浜高周波工業が検査項目に挙げる
- 割れ・曲りの確認と検査表の発行: 西田和髙周波
割れは処理の後すぐではなく、時間をおいて出ることもあります。焼入れから焼戻しまでの間隔をあけないよう、受託会社にまとめて任せるのが安全です。
この記事に出てくる会社
- アイキン熱処理工業株式会社金型・試作の真空焼入れを1個から
- 朝日熱処理工業株式会社窒化処理の種類を選ぶなら
- 株式会社ファインテック超合金・SKD11の真空熱処理
- 富士高周波工業株式会社大物の部分焼入れ(高周波・レーザ)
- 株式会社フクネツ熱処理+研削・TD処理
- 株式会社北山熱錬工業所大型の素材の焼ならし・焼なまし
- 栗山熱処理浸炭焼入れの一点物・急ぎ
- 株式会社共和熱処理鍛造・鋳造品の素形材熱処理
- 九州イオン窒化センター株式会社長尺のイオン窒化・大物焼鈍
- 株式会社丸眞熱処理工業試験・試作の1個処理
- 株式会社熱研高周波焼入れの単品
- 西田和髙周波株式会社難しい形状の高周波焼入れ
参照元
よくある質問
焼入れで寸法はどのくらい変わりますか?
材質、形状、処理によって違うため、一律の数字はありません。初回は試作で寸法を測り、研削の削り代を決めるのが確実です。
歪みを小さくしたいときはどの処理がよいですか?
処理温度が低く急冷しない窒化は、歪みが小さい処理です。必要な硬化層が深い場合は、ソルトバス焼入れや部分だけを加熱する高周波焼入れも候補になります。
熱処理で曲がった部品は直せますか?
直せる場合があります。栗山熱処理は歪取りのみの依頼も受け、0.05〜0.1まで修正すると書いています。三和熱処理や東洋高周波工業もプレスによる矯正を行っています。
【用途別】熱処理の受託加工会社おすすめ3選
金型や試作部品を、1個から日数の見通しを持って焼入れしたいなら
アイキン熱処理工業株式会社
FAQで「1個からご対応」。真空焼入れは中1営業日〜、プラズマ窒化は中2営業日、ISO9001/14001
FAQで試作品・小ロットについて「はい、1個からご対応いたします」と答え、試作段階の条件出しや量産前の確認処理も受けると書いている。標準納期の目安は真空焼入れ+低温焼戻し2回が中1営業日、プラズマ窒化が中2営業日と処理ごとに公開。真空炉は600W×600H×1,000L・500kgなど、素形材用のバッチ炉は1,200W×900H×2,850L。ISO9001とISO14001を取得。
大型ギヤや長いシャフトの、必要な部分だけを硬くしたいなら
富士高周波工業株式会社
ギヤφ4,000mm・7.0t、シャフト6,000mm。1〜100,000ヶ/月、標準納期3営業日、ISO9001
高周波焼入れの対応寸法をギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、シャフト直径〜φ400mm・長さ〜6,000mm(横焼)、レール幅〜300mm・長さ〜6,000mmと部品形状ごとに公開。受託加工は対応ロット数1〜100,000ヶ/月、標準納期は高周波事業部3営業日、レーザ事業部2営業日。立会試作やオンライン立会試作、無料技術相談もある。ISO9001を取得。
航空機・研究用のアルミ合金を、規格どおりの記録つきで熱処理したいなら
TANIDA株式会社(かほく工業試験所)
Nadcap認定を掲げ、T4〜T7を最小ロット1個から。1,500×1,500×1,000mm、温度チャート提出可
かほく工業試験所(KILT)の熱処理ページで「Nadcap認定を取得」と書き、サイトにAS9100Dのロゴを掲示(リンク先のNadcap認定書は有効期限2022年11月30日のもので、現在の認定は要確認)。軽合金をメインにT4・T5・T6・T7に対応し、AMS 2750・AMS 2771(アルミ合金)・AMS 2768(マグネシウム合金)を規格例に挙げる。最小ロット1個から受け、すべての熱処理に熱処理記録を提供。最大ワークサイズは1,500×1,500×1,000mm、温度均一性±5.5℃、焼入れ遅れ時間13秒。