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歯車・軸の浸炭焼入れを頼む|浸炭深さの指定・材質・真空浸炭の受託先【2026年版】

歯車やシャフトなど、表面の耐摩耗性と内部の粘り強さが両方必要な部品の浸炭焼入れについて、浸炭深さの指定、向く材質、ガス浸炭と真空浸炭の違い、防炭、受託会社が公開している浸炭深さと設備を整理します。少量から量産まで頼める会社の選び方もまとめました。

公開 2026年10月1日

歯車や軸は、歯面や軸受けの当たる面は摩耗に強く、中は衝撃に耐える粘り強さが必要です。この2つを両立させる代表的な方法が浸炭焼入れです。

このページでは、浸炭焼入れを頼むときの指定の仕方と、受託会社の選び方をまとめます。

浸炭は、浸炭深さの指定と材質の選び方で結果が大きく変わります。公式サイトに浸炭深さや材質を書いている会社の情報を中心に整理しました。

浸炭焼入れのしくみ

浸炭は、炭素の少ない鋼の表面に、高温で炭素をしみ込ませてから焼入れする処理です。表面は炭素が多くて硬くなり、中は炭素が少ないまま粘り強さが残ります。

工程内容
加熱・浸炭炭素を含む雰囲気の中で高温に保ち、表面に炭素をしみ込ませる
拡散表面の炭素を内側へ広げ、硬さの分布を整える
焼入れ油などで急冷して硬くする
焼戻し低めの温度で再加熱し、もろさを取る

栄熱処理工業は、ガス浸炭焼入焼戻しでSCM415などの合金鋼をRXガス雰囲気中で850℃〜940℃に加熱し、表面に炭素を入れてから焼入油で急冷すると説明しています。処理温度が高いため、歪みへの備えも必要になります。

浸炭に向く材質

浸炭は、もともと炭素の少ない鋼に使う処理です。炭素の多い鋼に浸炭しても、表面が硬くなりすぎて割れやすくなります。

  • 浸炭用の合金鋼: SCM415、SCM420、SCr420 など(栄熱処理工業が対象に挙げる)
  • 低炭素鋼: S15C、SPH270、SPH440 など(栄熱処理工業は浸炭窒化の対象に挙げる)
  • ボロン鋼: S22CB、S28CB(栄熱処理工業は微浸炭の対象に挙げる)

栗山熱処理は、材質別に浸炭で得られる硬度の表を公開し、SCM415・SCM420で〜63HRC、S45Cで〜50HRCとしています。炭素鋼のS45Cで高い表面硬さが必要なら、浸炭より高周波焼入れが合うこともあります。

浸炭深さを決めて図面に書く

浸炭焼入れでは、表面からどの深さまで硬くするかを有効硬化層深さで指定します。深いほど強い荷重に耐えますが、処理時間が延び、歪みも増えます。

会社公式に出ている浸炭深さ
栄熱処理工業有効浸炭深さ0.1〜0.4mmの浅物から1.0〜1.4mmの深物
栄熱処理工業(浸炭窒化)全浸炭深さ0.3〜0.7mm程度
栗山熱処理微浸炭は約0.15mmから、大物は約3mmまで
丸眞熱処理工業1.0mm程度は毎日、1.5mm程度は毎週末、2.0mm程度は別途相談

栗山熱処理は浸炭焼入れ深さの対応表をFAQで公開しています。図面の指定が対応表の範囲に入るかを確かめてから問い合わせると、話が早く進みます。

浸炭させたくない部分の扱い

ねじ部や後で溶接・切削する部分は、浸炭で硬くなると困ります。このような部分は、防炭(浸炭防止)の指示を図面に書きます。

  • 防炭する範囲を図で示す
  • 防炭の方法(防炭剤の塗布など)は受託会社と相談する
  • 防炭しない場合は、浸炭後に削り取る削り代を残す

部分的に硬くしたいだけなら、浸炭ではなく高周波焼入れで必要な部分だけを硬くする方法もあります。どちらが合うかは、硬化層の深さと形状で決まります。

ガス浸炭・真空浸炭・高濃度浸炭

浸炭にはいくつかの方式があり、受託会社によって持っている炉が違います。公式サイトに挙がっている方式を並べます。

方式特徴公式に記載がある会社
ガス浸炭雰囲気炉で行う主流の方式。量産に向く栄熱処理工業、栗山熱処理、清水熱処理、フクネツ、丸眞熱処理工業
真空浸炭真空炉で浸炭する石井熱錬、岡谷熱処理工業、武藤工業(真空浸炭焼入れ)
高濃度浸炭表面の炭素を多くして耐摩耗性を高める石井熱錬
浸炭窒化炭素と窒素を同時に入れる栄熱処理工業、栗山熱処理、清水熱処理、丸眞熱処理工業

石井熱錬は、内部の靭性は保ったまま表面の硬度を上げたいという要望に、真空浸炭と高濃度浸炭で応えると書いています。量産品の浸炭なら、ガス浸炭の炉を多く持つ会社が日程を組みやすくなります。

大きな歯車・長い軸の浸炭

大物の浸炭は、炉の大きさで頼める会社が限られます。ピット式の炉は、長い軸を立てて入れられます。

会社公式に出ている炉の寸法
栗山熱処理立型ピット式炉で長尺物最大1,650mm×850φ
石井熱錬SMP-910C型(EPQ)1,000φ×1,400ℓ・1,000kg、真空浸炭炉 幅660×高さ600×奥行1,220・600kg
フクネツピット型ガス浸炭焼入炉 最大φ600×2800H
丸眞熱処理工業浸炭窒化炉 W760×L1200×H800・1,000kg
清水熱処理浸炭炉 750W×1200L×610H

長い軸は、立てて処理するか寝かせて処理するかで曲がり方が変わります。栗山熱処理は長尺物の焼入れ歪が少ない熱処理を約束すると書いており、歪取りのみの依頼も受けています。

少量品と量産品で、選ぶ会社は変わる

浸炭は炉に部品をまとめて入れて処理するので、少量品は抱き合わせ、量産品は専用の段取りになります。数量で相談先を変えると、日程と費用が合いやすくなります。

  • 一点物・試作: 栗山熱処理(一点物・試作品も受付、土日も電話対応)、丸眞熱処理工業(1個から、抱き合わせで個単価)
  • 少量品から量産品まで: 栄熱処理工業(工作機械部品等の少量品から自動車部品等の量産品まで)
  • 多種類・小ロット: 石井熱錬(年間一万点の要望、小ロットの依頼も引き受ける)
  • 単品から量産: 清水熱処理(浸炭焼入・調質を得意とし単品生産から量産まで)

栄熱処理工業は、1つの製品につき数百個から1万個以上を処理する工程例を公開しています。量産の月産数が多い場合は、こうした量産の段取りを持つ会社に相談してください。

浸炭後の確認と後工程

浸炭焼入れの品質は、表面硬さ、硬化層深さ、歪みの3つで確かめます。硬化層深さは断面を切って測るので、確認用の部品を用意します。

確認公式に挙がっている設備の例
表面硬さロックウェル硬度計(栄熱処理工業4台、フクネツ7台など)
硬化層深さマイクロビッカース硬度計(栄熱処理工業、石井熱錬、フクネツ)
組織金属顕微鏡(栄熱処理工業、石井熱錬)
割れ磁粉探傷試験装置(栄熱処理工業、丸眞熱処理工業)

歯車の歯面や軸受け部は、浸炭後に研削で仕上げることが多くあります。フクネツは円筒・内面・平面・センタレスの研削盤を持ち、熱処理と研削をまとめて頼めます。

浸炭か高周波焼入れか、迷ったときの比べ方

歯車や軸の表面を硬くする方法は、浸炭のほかに高周波焼入れもあります。材質と形状、数量で向き不向きが分かれます。

観点浸炭焼入れ高周波焼入れ
向く材質SCM415などの低炭素の合金鋼S45C、SCM440などの中炭素鋼
硬くする範囲表面全体(防炭で除外は可能)必要な部分だけ
歪み全体を高温にするため出やすい加熱範囲が限られ比較的小さい
段取り炉にまとめて入れる形状ごとにコイルを用意する場合がある

富士高周波工業はギヤの高周波焼入れで硬化層深さ〜10.0mmまでと公式に書いています。歯面だけを硬くしたい大型の歯車なら、高周波焼入れの会社にも見積を取って比べてください。

浸炭焼入れを頼む前に決める5つ

次の5つが決まっていれば、受託会社は条件と日程をすぐに返せます。

  1. 材質(浸炭用鋼か)と、材料のミルシート
  2. 表面硬さの範囲と、有効硬化層深さの範囲
  3. 防炭の範囲、または浸炭後の削り代
  4. 寸法・重量と、立てるか寝かせるかの希望
  5. 数量(試作・月産)と、研削など後工程の有無

初めての部品は、1個か少数で浸炭深さと歪みを確かめてから量産に進んでください。浸炭深さの対応表を公開している会社なら、問い合わせ前に範囲を確認できます。

この記事に出てくる会社

参照元

よくある質問

浸炭焼入れの深さはどのくらい指定できますか?

会社と設備によります。栄熱処理工業は有効浸炭深さ0.1〜0.4mmの浅物から1.0〜1.4mmの深物、栗山熱処理は約0.15mmから大物で約3mmまでと公式に書いています。

S45Cに浸炭焼入れはできますか?

処理はできますが、炭素の多い鋼なので浸炭の効果は限られます。栗山熱処理の公開表では、S45Cの浸炭後硬度は〜50HRCです。表面を硬くしたいなら高周波焼入れも検討してください。

真空浸炭を頼める会社はありますか?

あります。石井熱錬は真空浸炭・高濃度浸炭を主な処理にしており、岡谷熱処理工業、武藤工業も真空浸炭を挙げています。

【用途別】熱処理の受託加工会社おすすめ3選

※2026年10月時点の公式サイト情報をもとに編集チームが選定。選定基準。

1イチオシ

金型や試作部品を、1個から日数の見通しを持って焼入れしたいなら

アイキン熱処理工業株式会社

FAQで「1個からご対応」。真空焼入れは中1営業日〜、プラズマ窒化は中2営業日、ISO9001/14001

FAQで試作品・小ロットについて「はい、1個からご対応いたします」と答え、試作段階の条件出しや量産前の確認処理も受けると書いている。標準納期の目安は真空焼入れ+低温焼戻し2回が中1営業日、プラズマ窒化が中2営業日と処理ごとに公開。真空炉は600W×600H×1,000L・500kgなど、素形材用のバッチ炉は1,200W×900H×2,850L。ISO9001とISO14001を取得。

アイキン熱処理工業株式会社の公式サイトへ当サイトの紹介を読む

2

大型ギヤや長いシャフトの、必要な部分だけを硬くしたいなら

富士高周波工業株式会社

ギヤφ4,000mm・7.0t、シャフト6,000mm。1〜100,000ヶ/月、標準納期3営業日、ISO9001

高周波焼入れの対応寸法をギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、シャフト直径〜φ400mm・長さ〜6,000mm(横焼)、レール幅〜300mm・長さ〜6,000mmと部品形状ごとに公開。受託加工は対応ロット数1〜100,000ヶ/月、標準納期は高周波事業部3営業日、レーザ事業部2営業日。立会試作やオンライン立会試作、無料技術相談もある。ISO9001を取得。

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3

航空機・研究用のアルミ合金を、規格どおりの記録つきで熱処理したいなら

TANIDA株式会社(かほく工業試験所)

Nadcap認定を掲げ、T4〜T7を最小ロット1個から。1,500×1,500×1,000mm、温度チャート提出可

かほく工業試験所(KILT)の熱処理ページで「Nadcap認定を取得」と書き、サイトにAS9100Dのロゴを掲示(リンク先のNadcap認定書は有効期限2022年11月30日のもので、現在の認定は要確認)。軽合金をメインにT4・T5・T6・T7に対応し、AMS 2750・AMS 2771(アルミ合金)・AMS 2768(マグネシウム合金)を規格例に挙げる。最小ロット1個から受け、すべての熱処理に熱処理記録を提供。最大ワークサイズは1,500×1,500×1,000mm、温度均一性±5.5℃、焼入れ遅れ時間13秒。

TANIDA株式会社(かほく工業試験所)の公式サイトへ当サイトの紹介を読む

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