熱処理の受託加工会社 · 用途別
長尺・大物の熱処理を頼む|長さ10mのシャフト・10tの焼なまし・大型ギヤの受託先【2026年版】
長さ数mのシャフトやレール、直径数mのギヤやリング、重さ数tの溶接構造物など、長尺・大物の熱処理を受託している会社を公式サイトの数字で整理します。高周波焼入れと炉の熱処理の使い分け、運搬と曲がりの注意点、発注前の確認点までまとめました。
長いシャフトや大きなギヤ、溶接した構造物の熱処理は、受けられる会社が限られます。部品が炉や装置に入るかどうかが、最初の関門になるからです。
このページでは、長尺・大物の熱処理を受託している会社を、公式に出ている寸法と重量から整理します。
大物は、全体を炉で処理するか、必要な部分だけを高周波で焼入れするかで、頼む会社がまったく変わります。まず処理の方法から考えるのが近道です。
掲載25社のうち、炉や装置の最大寸法を数値で公開しているのは21社でした。数字が出ていれば、問い合わせの前に候補を絞れます。
全体を炉で処理するか、部分だけ焼入れするか
大物の熱処理は、目的によって2つの方法に分かれます。どちらを選ぶかで、必要な設備と頼む会社が変わります。
| 方法 | 目的の例 | 主な設備 |
|---|---|---|
| 炉で全体を処理 | 溶接後の応力除去、素材の焼なまし・焼ならし、調質、固溶化 | 台車式炉、バッチ炉、ピット炉、連続炉 |
| 部分だけ焼入れ | シャフトの軸受け部、ギヤの歯面、レールの摺動面 | 高周波焼入れ装置、レーザ焼入れ |
全体を硬くする必要がなければ、部分焼入れの方が大物でも装置に載せやすくなります。反対に、溶接構造物の応力除去のように全体を均一に温める処理は、大きな炉が必要です。
長尺シャフト・レールの高周波焼入れ
長い軸やレールは、移動焼入れ装置でコイルを動かしながら焼入れします。装置ごとに径と長さの上限が決まっています。
| 会社 | 公式に出ている寸法 |
|---|---|
| 東海高周波 | 長尺シャフト最大10mのセンタレス焼入れ(Φ40〜Φ200×10,000mm)、面焼200×5,000mm |
| 富士高周波工業 | シャフト φ400mm×6,000mm(横焼)、φ1,000mm×2,500mm、レール幅300mm×6,000mm |
| 東洋高周波工業 | 横型移動焼入装置4000mm(2基)、竪型移動焼入装置3000mm |
東海高周波は、特殊品・一品物から量産品まで対応し、大物の旋盤加工機やエレベータ部品の焼入れにも対応してきたと書いています。長さ5mを超える軸なら、まず装置の長さが足りる会社に絞ってください。
大型ギヤ・リングの高周波焼入れ
直径の大きいギヤやリングは、歯ごと、または全周を順に焼入れします。公式に寸法を出している会社は限られます。
- 富士高周波工業: ギヤ 直径〜φ4,000mm・重量7.0t、モジュール〜M80、硬化層深さ〜10.0mm
- 富士高周波工業: リング 直径〜φ4,000mm、2分割でφ6,000mm、6分割でφ8,000mm
- 西田和髙周波: 2018年11月の新しい装置導入で、大物と深い硬化層の焼入れが可能になったと記載
富士高周波工業は、大型品の部分焼きを課題解決事例のカテゴリに挙げています。大型ギヤは1個ごとの段取りが大きいので、図面と重量を先に送り、受けられるかを確かめてください。
大きな炉で全体を処理できる会社
溶接構造物の応力除去や、大きな素材の焼なまし・焼ならしには、台車式などの大型炉が必要です。公式の数字を並べます。
| 会社 | 公式に出ている寸法・重量 |
|---|---|
| 三和熱処理 | 長さ4.5m・重さ10tまで。7号炉(台車式)2600×1600×4750mm・10t |
| 九州イオン窒化センター | 台車式焼鈍20t炉 3,000×1,900×6,000L、10t炉 2,500×1,900×5,000L |
| 北山熱錬工業所 | 小型から大型(2,500×3,000mm)まで |
| 共和熱処理 | バッチ炉 2,230W×2,450L×1,000H・最大4t/ch |
| アイキン熱処理工業 | 素形材用バッチ式炉 1,200W×900H×2,850L |
三和熱処理は、ステンレスの溶体化のような1000℃を超える処理から、300〜400℃台のアルミ合金の低温処理まで対応すると書いています。材質と温度帯が合うかも合わせて確認してください。
長いステンレス品の光輝熱処理
ステンレスのパイプや長い部品を酸化させずに焼なましたい場合は、水素雰囲気の連続炉が使われます。この方法を受託している会社があります。
- 広築: ストレートタイプの水素雰囲気連続炉で長尺処理品(1m〜10m程度)の処理が可能
- 広築: 処理は焼なまし、固溶化、焼入れ、ろう付け。3000m³の水素タンクを設置
- 広築: 既存熱処理品とほぼ同条件なら小ロット生産でも受託
広築は熱処理炉のメーカーで、自社の炉を使って栃木県大田原市の那須工場で受託しています。10tトラックが乗り入れできると書いており、長い品物の搬入も相談しやすい環境です。
長尺の窒化・浸炭
長い軸に窒化や浸炭をかけたい場合は、ピット式など縦長の炉が使われます。公式に寸法を出している例です。
| 会社 | 処理 | 公式の寸法 |
|---|---|---|
| 九州イオン窒化センター | イオン窒化 | φ900×4,000L |
| 九州イオン窒化センター | ガス軟窒化 | φ1,600×1,400L |
| フクネツ | ガス浸炭焼入 | 最大φ600×2800H(ピット型) |
| 栗山熱処理 | 浸炭焼入れ | 長尺物最大1,650mm×850φ(立型ピット式炉) |
長尺の窒化は、焼入れほど曲がりは出にくいものの、炉の中での吊り方で差が出ます。曲がりの許容値を伝えて、吊り方や支え方を相談してください。
曲がりの矯正と運搬
長い部品は、熱処理で少し曲がることを前提に、矯正の工程まで含めて計画します。矯正の設備を公式に挙げている会社があります。
- 三和熱処理: 油圧プレス(200t・50t)で丸棒10〜200φまで矯正
- 九州イオン窒化センター: 歪矯正油圧プレス350ton・100ton・30ton
- 東洋高周波工業: 歪矯正機(100t・40tプレス)
- フクネツ: 曲がり矯正用プレス Max100t、レール用のプレス
運搬では、長尺品はトラックの荷台の長さと積み方で曲がることがあります。受け渡しの方法と、梱包をどちらが行うかも見積の段階で決めておいてください。
大物は費用と日数の考え方が違う
大物の熱処理は、1個でも炉や装置を長く占有します。そのため、小物の量産とは費用と日程の考え方が違います。
| 要素 | 大物で起きること |
|---|---|
| 炉の占有 | 1個で1回分の炉を使い切ることがある |
| 昇温と冷却 | 重いほど温まるのも冷えるのも時間がかかる |
| 段取り | 吊り具、治具、コイルの準備が必要 |
| 後工程 | 矯正やショットブラストの手間が大きい |
大型炉は処理の順番待ちになることもあるので、必要な日から逆算して早めに枠を確保してください。複数の大物をまとめて出せるなら、同じ回の炉に入れられるかを相談すると、費用と日数の両方を抑えやすくなります。
大物を頼む前の確認リスト
大物は、送ってから炉に入らなかったでは済みません。次の項目を先に受託会社と確認してください。
- 外形寸法と重量、吊り点の位置
- 全体処理か部分焼入れか、処理の範囲
- 材質と、必要な硬さ・硬化層深さ
- 曲がりの許容値と、矯正・研削の要否
- 搬入・搬出の方法(トラックの大きさ、クレーンの要否)
- 数量と、1個ずつの処理か複数まとめての処理か
大物は1個ごとの段取りが大きく、処理の順番待ちが出ることもあります。日程に余裕を持って早めに相談するのが確実です。
初めての会社に大物を出すときは、工場の見学や現物の確認ができるかも聞いてみてください。富士高周波工業は会社見学を無料で受け、立会試作も用意しています。
大物の熱処理は、部品そのものの価格が高く、やり直しがききにくい加工です。試作ができない場合は、同じ材質の端材で条件を確かめてもらう方法もあるので、受託会社に相談してください。
この記事に出てくる会社
- アイキン熱処理工業株式会社金型・試作の真空焼入れを1個から
- 富士高周波工業株式会社大物の部分焼入れ(高周波・レーザ)
- 株式会社フクネツ熱処理+研削・TD処理
- 株式会社広築ステンレスの光輝熱処理・長尺
- 株式会社北山熱錬工業所大型の素材の焼ならし・焼なまし
- 栗山熱処理浸炭焼入れの一点物・急ぎ
- 株式会社共和熱処理鍛造・鋳造品の素形材熱処理
- 九州イオン窒化センター株式会社長尺のイオン窒化・大物焼鈍
- 西田和髙周波株式会社難しい形状の高周波焼入れ
- 有限会社三和熱処理大物の焼なまし・固溶化
- 東海高周波株式会社長尺シャフトの高周波焼入れ
- 東洋高周波工業株式会社高周波+研削の一貫
参照元
よくある質問
長さ10mのシャフトに焼入れできますか?
できる会社があります。東海高周波は長尺シャフトを最大10mまでセンタレス焼入れできると公式に書いています(Φ40〜Φ200×10,000mm)。
重さ10tの溶接構造物の焼なましはできますか?
三和熱処理は長さ4.5m・重さ10tまで、九州イオン窒化センターは台車式焼鈍20t炉(3,000×1,900×6,000L)を持つと公式に書いています。
直径数mのギヤに高周波焼入れできますか?
富士高周波工業はギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、リングは分割でφ8,000mmまでと公式に書いています。
【用途別】熱処理の受託加工会社おすすめ3選
金型や試作部品を、1個から日数の見通しを持って焼入れしたいなら
アイキン熱処理工業株式会社
FAQで「1個からご対応」。真空焼入れは中1営業日〜、プラズマ窒化は中2営業日、ISO9001/14001
FAQで試作品・小ロットについて「はい、1個からご対応いたします」と答え、試作段階の条件出しや量産前の確認処理も受けると書いている。標準納期の目安は真空焼入れ+低温焼戻し2回が中1営業日、プラズマ窒化が中2営業日と処理ごとに公開。真空炉は600W×600H×1,000L・500kgなど、素形材用のバッチ炉は1,200W×900H×2,850L。ISO9001とISO14001を取得。
大型ギヤや長いシャフトの、必要な部分だけを硬くしたいなら
富士高周波工業株式会社
ギヤφ4,000mm・7.0t、シャフト6,000mm。1〜100,000ヶ/月、標準納期3営業日、ISO9001
高周波焼入れの対応寸法をギヤ直径〜φ4,000mm・重量7.0t、シャフト直径〜φ400mm・長さ〜6,000mm(横焼)、レール幅〜300mm・長さ〜6,000mmと部品形状ごとに公開。受託加工は対応ロット数1〜100,000ヶ/月、標準納期は高周波事業部3営業日、レーザ事業部2営業日。立会試作やオンライン立会試作、無料技術相談もある。ISO9001を取得。
航空機・研究用のアルミ合金を、規格どおりの記録つきで熱処理したいなら
TANIDA株式会社(かほく工業試験所)
Nadcap認定を掲げ、T4〜T7を最小ロット1個から。1,500×1,500×1,000mm、温度チャート提出可
かほく工業試験所(KILT)の熱処理ページで「Nadcap認定を取得」と書き、サイトにAS9100Dのロゴを掲示(リンク先のNadcap認定書は有効期限2022年11月30日のもので、現在の認定は要確認)。軽合金をメインにT4・T5・T6・T7に対応し、AMS 2750・AMS 2771(アルミ合金)・AMS 2768(マグネシウム合金)を規格例に挙げる。最小ロット1個から受け、すべての熱処理に熱処理記録を提供。最大ワークサイズは1,500×1,500×1,000mm、温度均一性±5.5℃、焼入れ遅れ時間13秒。
自社の部品に合う熱処理の受託先を、無料で相談する
部品の材質(鋼種)・寸法・重量、必要な処理(または目的: 硬くしたい・軟らかくしたい・歪みを抑えたいなど)、硬さと硬化層深さの指定、数量(試作・量産)、希望納期、納入先の認証や記録の条件を送っていただくと、編集チームが条件に合う掲載会社へ匿名で概要を伝え、試作や見積の窓口をおつなぎします。費用はかかりません。