軽金属鋳造の試作 · 基礎知識
鋳造試作の見積依頼に書く項目チェックリスト|形状・材質・数量・加工・検査・回答の比べ方【2026年版】
アルミ・マグネシウム・亜鉛の鋳造試作を見積依頼するときに、依頼文へ書くべき項目をチェックリストで整理します。日本ダイカスト協会の設計ガイドが示す考え方(初期段階の相談、寸法許容差、仕上代、インサート)と、国内各社の公式記載(最大寸法・最小肉厚・数量帯・後加工・検査)に対応させ、回答を比べる観点までまとめました。
鋳造試作の見積は、依頼文に書かれた情報の範囲でしか正確になりません。項目が欠けると、会社側は確認の連絡をするか、厳しい条件を仮定して見積もることになります。
このページでは、依頼文に書く項目を5つのまとまりに分け、それぞれが各社のどの公式記載に対応するかを整理します。
依頼の前に押さえる協会の考え方
日本ダイカスト協会の設計ガイドは、見積の前段階で役立つ考え方を示しています。
- 開発時の製品設計では、初期段階でダイカスト専業者と十分に話し合い、その知識と経験を織り込むことが品質とコストに良い結果をもたらす
- 設計はダイカストのコスト、品質に最も大きな影響を与える
- 標準以上のきびしい寸法許容差を指定しないことが望ましい(DCS E1参照)
見積依頼は、この「初期段階の話し合い」の入口です。未確定の項目は「未定」と書いて送れば、会社側から工法や形状の提案を受けられます。
形状とデータの項目
最初に書くのは、何を作るかの情報です。各社の公式記載で、会社を絞る条件になっている項目を並べます。
| 項目 | 書く内容 | 対応する公式記載の例 |
|---|---|---|
| データ | 3Dデータの形式、図面の有無 | ジャノメダイカスト「3Dデータから最短7日で出荷」、前橋橋本合金「図面をいただければすぐに担当者より御見積」 |
| 最大外形と重量 | 部品の外形寸法と概算重量 | 石膏鋳造の最大はアドバンス450×450×150mm、ニューテック800×800mm・35kg、日邦産業1,500×800×700mm・50kg程度 |
| 最小肉厚 | 最も薄い箇所の厚さ | ニューテック・日邦産業0.8mm〜、プロテックジャパン0.6mm、イナテック1.5mm |
| 抜き勾配 | 勾配の有無、量産で付けるか | 抜き勾配ゼロ対応:ニューテック、日邦産業、共栄デザインほか |
最大外形は、工法と会社を一度に絞り込める項目です。数字で書いておくと、対応できない会社からの返信を待つ時間が減ります。
材質・数量・納期の項目
次に、何で、何個、いつまでに作るかを書きます。
| 項目 | 書く内容 | 対応する公式記載の例 |
|---|---|---|
| 材質 | JIS記号(例:ADC12、AC4CH、MDC1D) | 各社の対応材質一覧(高熱伝導系や希土類系マグネシウムは対応会社が限られる) |
| 質別 | T6など熱処理の状態 | JMC(T4/T5/T6/T7)、ニューテック(T5・T6・T7) |
| 数量 | 今回の個数と、次の段階の想定数量 | ニューテック石膏鋳造5〜30個、協和合金数十〜数百個、光軽金属工業ダイカストMIN100 |
| 納期 | 必着日と、余裕があるかどうか | FIRMS「納期に余裕がある場合は格安でお請け致します」 |
数量は、会社の得意な数量帯に合うかで見積の精度が変わります。次の段階の数量まで書くと、試作と量産をつなぐ工法の提案が返ってきます。
加工・表面処理・検査の項目
素材のまま受け取るか、完成品で受け取るかで、見積の範囲が大きく変わります。協会の設計ガイドの指針とあわせて、書く内容を整理します。
- 機械加工:加工する面と基準面。ガイドは、ひずみや加工基準を考慮して設計し、適切な仕上代(0.25〜0.8mm)をつけることとしている
- 穴:小穴を鋳抜くか加工するか。ガイドは、細い鋳抜ピンは避け、小穴は機械加工する方が一般に経済的としている(鋳巣の発生には注意)
- インサート:鋳込む金具の有無と固定方法。ガイドは、移動しないよう確実に保持できる設計とし、固定はローレット及び段付加工によるとしている
- 表面処理:アルマイト、化成処理、めっき、塗装の仕様とマスキング範囲
- 検査:三次元測定、X線CT、リーク試験の要否と報告書の形式
ニューテックは「完成品でお届けします」とし、機械加工・熱処理・表面処理まで社内で行うと記載しています。完成品で頼む場合は、どの工程まで含むかを見積書で確認します。
部品の性格によって足す項目
基本の項目に加えて、部品の性格によっては追加で書くべき項目があります。公式記載で条件が分かれる例を並べます。
| 部品の性格 | 追加で書く項目 | 公式記載の例 |
|---|---|---|
| 気密・耐圧部品 | 媒体、試験圧力、試験方式、含浸の可否 | 光軽金属工業(差圧式・水没式)、前橋橋本合金(ヘリウムリークディテクター)、JMC(含浸・HIP) |
| 放熱部品 | 合金名(HT-1、DMS系など)、フィンの厚さと高さ | 共栄デザイン(HT-1・DMS1・DMS3)、日邦産業(DMS系) |
| 外観部品 | 外観面の範囲、仕上げの種類 | モールドモデル(意匠部品は鋳肌が美しく後処理が少ない) |
| 大物 | 最大外形、重量、分割の可否 | JMC(大型低圧鋳造炉2,000×2,000mm・500kg)、前橋橋本合金(2,000mm・200kg) |
追加の項目は、対応できる会社を絞る条件にもなります。依頼文の冒頭に書いておくと、会社側に対応の可否を早く判断してもらえます。
回答を比べるときの観点
同じ依頼文を複数の会社に送っても、回答の形は会社ごとに違います。比べる前に、次の観点で条件をそろえます。
| 観点 | 確認すること | 公式記載の例 |
|---|---|---|
| 費用の構造 | 初度費と単価に分かれているか | 共栄デザインのモデルケース「初度費:20万円」「製品単価:30,000円(10個時)」 |
| 納期の条件 | 素材までか、完成品までか | ニューテックの石膏鋳造は最短2.5週間(通常3.5〜4週、素材まで) |
| 工程の内外 | 社内か協力会社か | キャステム「協力会社様との連携により一気通貫」 |
| 精度の表現 | 保証か実績か | ニューテックは石膏鋳造でCT7級保証、CT5・CT6級は実績と書き分け |
| 見積の速さ | 回答までの日数 | 白銅「当日中にお見積り」、前橋橋本合金「すぐに担当者より御見積」 |
精度は、保証の値と実績の値を混ぜて比べないことが大切です。図面で求める等級が、どちらの範囲に入るかを回答で確認します。
依頼文にそのまま使える項目一覧
ここまでの内容を、依頼文の項目としてまとめます。分からない項目は空欄にせず、「未定」「相談したい」と書きます。
- 用途と評価の目的(形状確認、機能評価、気密・強度試験)
- 3Dデータと図面の有無
- 最大外形・概算重量・最小肉厚
- 材質(JIS記号)と質別
- 今回の数量と、次の段階の想定数量
- 希望納期と、余裕の有無
- 機械加工の範囲、仕上代、基準面
- 表面処理の仕様
- 検査項目と報告書の形式
- 納品状態(素材のみか、完成品か)
3選のうち、ニューテックは完成品納品、JMCは鋳造からCT検査までの社内一貫、共栄デザインは価格のモデルケースを公式に掲げています。この一覧で依頼すれば、3社の回答を同じ条件で並べられます。
この記事に出てくる会社
- 株式会社アドバンス試作総合×石膏、1個から
- 株式会社キャステム金型0円で1個から精密鋳造
- FIRMS株式会社3金属のダイカストを1個から
- 白銅株式会社型レス最短4日、1品から
- 光軽金属工業株式会社3工法を数量で使い分け
- 株式会社イナテック薄肉砂型をCT6級で最短3日
- ジャノメダイカスト株式会社石膏試作→ダイカスト量産
- 株式会社JMCAl/Mg砂型一貫、ギガも可
- 株式会社 共栄デザイン最短5日・価格例あり
- 有限会社協和合金簡易金型で数十個を最短1週間
- 前橋橋本合金株式会社200kg大物を1個から
- 有限会社モールドモデル石膏専業、5〜100個が得意
参照元
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.29)
- ダイカストって何? 設計ガイド(日本ダイカスト協会 p.31)
- 石膏鋳造(ジャノメダイカスト株式会社)
- ご注文の流れ(前橋橋本合金株式会社)
- 石膏鋳造(株式会社アドバンス)
- 石膏鋳造(株式会社ニューテック)
- 設備(株式会社ニューテック)
- 試作石膏鋳造(日邦産業株式会社)
- 石膏鋳造(株式会社プロテックジャパン)
- 精密砂型鋳造(株式会社イナテック)
- 石膏鋳造(株式会社共栄デザイン)
- 石膏鋳造の事例(株式会社共栄デザイン)
- 設備(株式会社JMC)
- 株式会社JMC
- 簡易金型 3CDプロセス(有限会社協和合金)
- サービス(光軽金属工業株式会社)
- 設備(光軽金属工業株式会社)
- 設備一覧(前橋橋本合金株式会社)
- 対応材質(株式会社共栄デザイン)
- 石膏鋳造(有限会社モールドモデル)
- 前橋橋本合金株式会社
- 試作対応(FIRMS株式会社)
- ロストワックス(株式会社キャステム)
- 金属3Dプリンター受託造形(白銅株式会社)
よくある質問
鋳造試作の見積依頼には何を書けばいいですか?
用途、3Dデータと図面、最大外形・重量・最小肉厚、材質(JIS記号)と質別、今回と次の段階の数量、希望納期、機械加工の範囲と仕上代、表面処理、検査項目、納品状態(素材か完成品か)の10項目です。未確定の項目は「未定」と書けば、会社側から工法の提案を受けられます。
図面の公差はどこまで厳しく書けばいいですか?
日本ダイカスト協会の設計ガイドは、標準以上のきびしい寸法許容差を指定しないことが望ましいとしています。機能に必要な寸法だけに厳しい公差を付け、それ以外は工法の標準に任せると、見積と納期のずれを防げます。加工で仕上げる面には0.25〜0.8mmの仕上代を設けます。
複数社の見積はどう比べればいいですか?
初度費と単価に分けて比べ、納期が素材までか完成品までか、工程が社内か協力会社か、精度が保証か実績かをそろえます。共栄デザインは石膏鋳造のモデルケースを「初度費:20万円」「製品単価:30,000円(10個時)」の形で公開しており、この形に合わせると比べやすくなります。
【目的別】軽金属鋳造の試作会社おすすめ3選
量産と同じダイカスト材で、金型なしに評価したいなら
株式会社ニューテック
ADC12でダイカスト同等品質の試作。試作実績1万件超、石膏鋳造は最短2.5週間
アルミ・マグネシウムの精密鋳造専門で試作実績10,000件以上。ADC12・AC4CH・A357などアルミ9種、ZE41A・AM60などマグネシウムに対応し、石膏鋳造はCT7級保証(CT5・6の実績)、消失鋳造はCT8級保証。最大800×800mm・35kg、最小肉厚0.8mm。5軸加工機・熱処理炉2基・X線CTを社内に持ち、完成品で納める。
大物・複雑形状・ギガキャスト級の砂型試作なら
株式会社JMC
3Dプリント砂型で木型を省き、2m角・500kgまで。熱処理から5軸加工・CT検査まで社内一貫
砂型3Dプリンター(造形800×500×400mm)と大型低圧鋳造炉(2,000×2,000mm・500kg)を持ち、アルミ専用9基・マグネシウム専用2基の溶解炉で試作・小ロット量産に対応。T4〜T7熱処理、5軸機械加工、化成処理・アルマイト・含浸・HIP、X線CT6台まで社内一貫。ISO9001・JIS Q 9100、鋳造公差CT7(形状によりCT6)。ギガキャスト試作で自動車分野30型・500台以上の実績。
まず1個を、数日で手に取りたいなら
株式会社 共栄デザイン
石膏鋳造で最短5日。1個から月1個の少量生産まで、亜鉛や高熱伝導合金も
金型を使わない石膏鋳型で「最短5日で高精度な試作品」を製作し、1個からの試作・月1個の少量生産に対応。アルミ鋳物合金AC2A〜AC8A、ダイカスト用ADC12・ADC1・ADC6、亜鉛ZDC1・ZDC2、高熱伝導アルミHT-1・DMSに対応。寸法公差±0.2〜0.7mm、Carl Zeissの三次元測定機、社内マシニングで機械加工。5〜100個ならダイカスト相当の品質、小ロット製造は素材初品3週間〜。