ASIC・カスタムLSI受託開発 · 基礎知識
ターンキー・設計受託・ファウンドリの違い|ASIC開発を誰に頼むかの判断材料【2026年版】
ASICの開発を外に頼む形には、設計から量産まで一括で任せるターンキー、設計工程だけを頼む設計受託、製造だけを頼むファウンドリがあります。掲載17社の区分と、それぞれの向き不向きを整理しました。
ASICを外部に頼むとき、相手の会社が何を引き受けるのかは大きく3つに分かれます。同じASIC受託でも、渡すものと受け取るものが違います。
この記事では、掲載会社を区分ごとに整理し、自社の状況に合う頼み方を考えます。
3つの頼み方の違い
まず、それぞれの頼み方で何を渡し、何を受け取るかを比べます。
| 頼み方 | 渡すもの | 受け取るもの |
|---|---|---|
| ターンキー | 要求仕様、または仕様・RTL・回路図など | ウェハ、ベアチップ、パッケージ品などの完成品 |
| 設計受託 | 仕様や設計の一部 | RTL、ネットリスト、GDSなどの設計データ、検証結果 |
| ファウンドリ | GDSなどの設計データ | ウェハやベアチップ、パッケージ品 |
ターンキーでは、ファウンドリやパッケージ、テストの手配まで相手がまとめます。設計受託やファウンドリを使うなら、工程のつなぎ目を自社で管理することになります。
ターンキーを案内している会社
設計から量産までを一括で扱うと案内している会社は、次のとおりです。得意分野にも違いがあります。
- 内藤電誠工業: アナログ・ミックスドシグナルのターンキー。パッケージを自社で製造
- 東芝情報システム: アナログICは100個程度から。デジタルLSIのターンキーとディスコンLSI再生も
- 三栄ハイテックス: 小規模ロジックを含むアナログICのターンキー。試作のみ・少量生産にも対応
- デンケン: アナログASICを設計から評価・解析、量産まで
- TOPPANテクニカル・デザインセンター: アナログ/ミックスドシグナルが得意。量産管理だけの依頼も受付
- DNPエル・エス・アイ・デザイン: デジタル/アナログ/ミックスドシグナル品のターンキー
- NECプラットフォームズ: ベンダ選定から生産管理まで。基板・装置の量産も
- シリコンアーティストテクノロジー: ファウンドリ選定と少量試作から量産チップ供給まで
- シキノハイテック: 要求仕様から製造・テスト・出荷まで
ターンキーは、社内に半導体の量産管理の経験がない会社に向きます。一方で、どのファウンドリを使うかは相手の選定に任せることになるので、長期供給の条件は契約前に確かめてください。
設計受託が向くケース
社内に設計者はいるが人手が足りない、特定の工程だけ経験がない、という場合は設計受託が合います。工程を限って頼める会社があります。
| 会社 | 受ける工程(公式記載) |
|---|---|
| プライムゲート | 要求仕様のコンサルティングからゲートレベルの検証まで、いずれの範囲からでも |
| クリエイティブデザイン | 要求仕様分析〜論理設計〜タイミング検証。P&RはICベンダーに委託し、P&R後の検証を担当 |
| DNPエル・エス・アイ・デザイン | SoC/ASIC設計、RTLtoGDS、アナログ/MixedSignal設計 |
| 内藤電誠工業 | アナログ回路/レイアウト設計、評価、テスト開発、ASIC/SoCのP&R |
| シキノハイテック | 特定フェーズのみの対応も可能 |
ファウンドリに直接頼む場合
自社で回路を設計し、GDSまで作れるなら、ファウンドリに直接相談する道があります。掲載会社では日清紡マイクロデバイスがファウンドリサービスを案内しています。
- アナログ/パワー半導体に特化したレガシープロセス
- Bipolar/BiCMOS/CMOS、耐圧1.8〜80V、最小ルール0.18μm〜
- 国内拠点(川越・福岡・やしろ)とUMCで供給
- 少量生産やFAB移管にも対応
ファウンドリはプロセス・デザイン・キット(PDK)を提供し、設計は顧客が行う前提です。設計まで任せたいなら、設計会社と組み合わせて相談してください。
半導体メーカーに頼むという選択肢
自社で製造ラインやASIC製品を持つ半導体メーカーに頼む形もあります。製品として方式が決まっている分、置き換えなどの用途では話が早く進みます。
| 会社 | 特徴(公式記載) |
|---|---|
| セイコーエプソン | ゲートアレイ・エンベデッドアレイ・スタンダードセル。自社前工程生産による長期安定供給 |
| メガチップス | ファブレス。FPGA・ASIC転換、EOL再生・再開発 |
| ソシオネクスト | カスタムSoC。90nm〜5nm、システム設計から生産・品質管理まで |
| ロジック・リサーチ | ファブレス。製造終息LSIの再開発、CPU混載のカスタムSoC |
機器メーカー系と独立系の違い
設計会社の中にも、親会社の事業とつながりの深い会社と、特定のベンダーに属さない会社があります。どちらかで提案の幅が変わることがあります。
| タイプ | 掲載会社の例と公式記載 |
|---|---|
| 機器メーカー系 | NECプラットフォームズ: ASICを載せる基板、電源、装置の量産までODM/EMSで提供 |
| 印刷会社系 | DNPエル・エス・アイ・デザイン(大日本印刷100%出資)、TOPPANテクニカル・デザインセンター(フォトマスク事業のCAD業務が原点) |
| 独立系デザインセンター | シキノハイテック: 特定ベンダに限らない幅広い対応 |
| グループの半導体開発会社 | ディー・クルー・テクノロジーズ(日清紡グループ) |
ASICだけでなく基板や装置までまとめたいなら機器メーカー系、ファウンドリを広く比べたいなら独立系やターンキー専業が候補になります。どちらが良いかではなく、自社が任せたい範囲で選んでください。
契約前に確かめたい取り決め
頼み方が決まったら、契約の前に権利と責任の線を引いておきます。次の点は会社ごとに扱いが違うので、書面で確かめてください。
- 設計データ(RTL、GDS、テストプログラム)の権利と引き渡しの有無
- 不具合が出たときの修正費用の負担と、再試作の扱い
- 量産の最小発注数量と、供給を続ける期間
- 生産中止の通知を受けたときの対応
秘密保持契約は最初の相談の段階で結ぶのが一般的です。仕様の詳細を出す前に、相手の手続きを確かめてください。
自社の状況から頼み方を決める
どの頼み方が合うかは、社内にある力と目的で決まります。目安を整理します。
- 設計者も量産管理の経験もない → ターンキー
- 設計者はいるが人手か一部の工程が足りない → 設計受託
- GDSまで自社で作れる → ファウンドリ(必要に応じて設計会社と組む)
- FPGAやディスコン品の置き換えが目的 → 置き換えを案内する半導体メーカーやターンキー会社
迷ったら、ターンキーと設計受託の両方を扱う会社に相談すると、途中で頼み方を切り替えやすくなります。DNPエル・エス・アイ・デザインや内藤電誠工業は、両方を案内しています。
この記事に出てくる会社
- 株式会社クリエイティブデザインディスコンLSIの作り直し
- ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社混載LSIを仕様から
- 株式会社デンケンアナログASICと解析を一社で
- 株式会社DNPエル・エス・アイ・デザイン設計工程の一部から量産まで
- セイコーエプソン株式会社FPGA・CPLDの置き換えに
- 株式会社ロジック・リサーチ終息LSIの再開発
- 株式会社メガチップス量産FPGAをASICへ
- 内藤電誠工業株式会社アナログを少量から量産まで
- NECプラットフォームズ株式会社ASICから装置まで一括
- 日清紡マイクロデバイス株式会社国内アナログファウンドリ
- 株式会社プライムゲート論理設計と検証を外注
- 三栄ハイテックス株式会社センサーAFEのアナログIC
参照元
よくある質問
ターンキーとは何ですか?
設計から試作、量産までを一括で引き受ける頼み方です。内藤電誠工業、東芝情報システム、三栄ハイテックスなどが、ファウンドリやパッケージ、テストの手配まで含めて案内しています。
設計だけ頼んで製造は自社で手配できますか?
できます。プライムゲートやクリエイティブデザインは論理設計と検証の受託が中心で、製造の手配はベンダー側との連携になります。DNPエル・エス・アイ・デザインはRTLtoGDSなど工程ごとの受託も行っています。
ファウンドリに直接頼むときの注意点は?
設計は顧客が行う前提です。日清紡マイクロデバイスはPDKを提供し、プロセスや設計のエンジニアが直接要求を聞くと書いていますが、回路設計から任せたいなら設計会社と組み合わせてください。
【用途別】ASIC・カスタムLSI受託開発おすすめ3選
センサー・電源・ドライバのアナログICを、試作から量産まで一社で
内藤電誠工業株式会社
試作1個からのカスタムIC開発。アナログ・ミックスドシグナルのターンキーで、パッケージも自社で製造
LSI設計事業部がターンキーサービスと受託設計サービスを提供し、アナログIC、ミックスドシグナルICの設計経験、大手IDMが対応しない少量・多品種への対応、国内自社リソース・自社設備による開発を特長に挙げる。国内外の複数のファウンドリのCMOS、高耐圧CMOS、Opto、Bipolar、SOIに対応し、QFN、QFP、DIPなどのパッケージを自社で製造する。ターンキー製品として680万個以上の量産出荷を公式に記載。
量産中のFPGAを、基板を変えずにASICへ置き換えるなら
株式会社メガチップス
既存のFPGA資産からASICへ転換。ピンコンパチブル対応でボード修正を不要に(対応できない場合あり)
FPGA・ASIC転換のページで、量産数量が多い場合にFPGAがASICより割高になることと、FPGAでは低消費電力設計ができず熱対策が必要になる場合があることを転換の判断材料に挙げる。既存のFPGA資産と要望をヒアリングして転換方法を提案し、論理シミュレーションを同社が担当することも可能。ボード設計が終わっている場合はFPGAとピンコンパチブルにして基板の修正を不要にできるとする。
論理設計・RTLtoGDS・アナログを工程単位で頼み、試作・量産までつなげるなら
株式会社DNPエル・エス・アイ・デザイン
0.35um〜16nmのRTLtoGDS実績、アナログ/MixedSignal設計、TSMCシャトル試作、少量にも対応するターンキー
SoC/ASIC設計、RTLtoGDS設計、アナログ/MixedSignal設計の3つの設計受託を用意し、RTLtoGDSではTSMC、UMCほかFabで0.35um〜16nmの対応実績と100MGate超のデザイン実績を記載。DNPがTSMC CyberShuttleのパートナーとして提供する試作では12nm〜0.35umが使え、LSIターンキーサービスは仕様検討から量産までを扱い、少量生産にも対応可能とする。