ASIC・カスタムLSI受託開発 · 基礎知識
ASIC開発の流れと工程ごとの頼み方|仕様策定・論理設計・検証・レイアウト・試作・量産【2026年版】
ASICは、仕様を決めてから論理設計、検証、レイアウト、マスク、ウェハ製造、テスト、量産と進みます。掲載会社の公式情報から、工程ごとに何を渡し、どこまで任せられるかを整理しました。
ASIC(特定用途向けの集積回路)は、作りたい機能を専用のチップにしたものです。開発は長い工程の連なりで、どこから外部に任せるかで相談先が変わります。
この記事では、掲載会社が公式サイトで示している開発フローをもとに、工程と依頼の仕方を整理します。
開発は大きく7つの工程に分かれる
会社ごとに呼び方は違いますが、流れはおおむね共通です。ディー・クルー・テクノロジーズは、要件定義から量産までを次の順で示しています。
- 要件定義(何をするチップか、性能や消費電力の目標を決める)
- 論理設計(RTLを書き、論理合成する)
- 物理設計(配置配線、レイアウト)
- シミュレーション(動作とタイミングの検証)
- プロトタイピング(同社の図ではFPGA試作)
- テスト評価
- 量産
アナログICでは、論理設計の代わりに回路設計とSPICEシミュレーション、手作業のレイアウトが中心になります。内藤電誠工業は、アナログ回路設計、Spiceシミュレーション、アナログレイアウト設計を受託設計の業務事例に挙げています。
上流の工程で決めておくこと
仕様の段階で詰めが甘いと、後の工程すべてに響きます。仕様の具体化から手伝う会社もあります。
| 会社 | 上流工程の支援(公式記載) |
|---|---|
| NECプラットフォームズ | 装置メーカーの視点でシステム仕様からASIC仕様への落とし込みを支援 |
| プライムゲート | 要求仕様のコンサルティングからゲートレベルの検証まで、いずれの範囲からでも受託 |
| 東芝情報システム | コンサルティング(要求分析)から仕様検討、回路設計、試作、量産まで |
| 内藤電誠工業 | 様々な設計インターフェースに対応し、顧客に代わって仕様の具体化を実施 |
| ディー・クルー・テクノロジーズ | 仕様未確定・初めてのASIC開発の相談も受付 |
社内に半導体の経験者がいない場合は、仕様の段階から入ってくれる会社を選んでください。東芝情報システムは、半導体開発の知識がなくても要求分析から相談に応じるとFAQで答えています。
論理設計と検証は分けて頼める
デジタルASICの中心は論理設計と検証です。この部分だけを外部に任せる使い方も一般的です。
- DNPエル・エス・アイ・デザイン: 仕様検討〜設計〜検証。UVM/VMM先端検証、アサーションベース検証、UPF/CPFをサポート
- クリエイティブデザイン: 要求仕様分析から論理設計、制約ファイル作成、論理合成、タイミング検証まで
- メガチップス: タイミングクロージャーの専任担当者をアサインし、独自のSDC作成サポートユーティリティを用意
- シキノハイテック: 要求仕様検討から設計・検証まで。特定フェーズのみの対応も可能
検証は設計と同じくらい手間がかかる工程です。誰が検証パターンを作るのか、カバレッジをどう確認するのかを、見積の段階で決めておいてください。
レイアウト(物理設計)はベンダー側か設計会社か
論理設計の後、セルの配置と配線を行い、GDSというマスク用のデータを作ります。この工程を誰が持つかは会社の体制で違います。
| 体制 | 例(公式記載) |
|---|---|
| 設計会社がRTLからGDSまで担当 | DNPエル・エス・アイ・デザイン(RTLtoGDS、0.35um〜16nmの実績)、内藤電誠工業(デジタルバックエンド~14nm) |
| P&RはICベンダーに委託し、設計会社は後の検証を担当 | クリエイティブデザイン |
| ASICベンダーに委託してコントロール | NECプラットフォームズ(バックエンドは委託/コントロール) |
アナログICのレイアウトは回路特性に直結します。三栄ハイテックスやDNPエル・エス・アイ・デザインは、回路設計とレイアウトを一貫して扱えることを強みに挙げています。
試作・テスト・量産でつまずきやすい点
設計が終わると、マスク、ウェハ製造、パッケージ、テストへ進みます。ここからはファウンドリやパッケージ、テストの会社を手配する工程です。
- ファウンドリの選定: 三栄ハイテックスは予算や開発スケジュールに合わせて国内外から提案
- パッケージとテストハウスの選定: 三栄ハイテックスはPKGメーカーとテストハウスを選定し、ウエハー・ベアチップ・パッケージなど希望の形態で納品
- テスト開発と量産立上げ: 内藤電誠工業はテスト仕様をもとにテストプログラムとプローブカードを設計
- 量産立上げ以降や量産管理だけの依頼: TOPPANテクニカル・デザインセンターが受付
試作品(ES)の評価で不具合が見つかると、修正して再度マスクを作ることになります。評価の体制を持っている会社か、自社で評価するのかも確かめてください。
試作品の評価を誰が持つか
試作品が届いたら、狙った特性が出ているかを測ります。アナログICでは特に、この評価に時間がかかります。
| 会社 | 評価・解析の体制(公式記載) |
|---|---|
| 三栄ハイテックス | 各種測定機器を保有し、自社設計品だけでなく顧客が設計したLSIの試作品評価も行う |
| 内藤電誠工業 | 電気的特性評価、テスト開発と量産立上げを受託 |
| デンケン | 全工程をカバーしているため、急な故障解析や特性評価にも迅速に対応 |
| DNPエル・エス・アイ・デザイン | アナログ/MixedSignalで初期評価まで対応 |
評価を外に頼むなら、評価ボードを誰が作るかも決めておきます。NECプラットフォームズはES評価ボードの作成にも対応すると書いています。
社内で用意しておく資料
どの工程から頼む場合でも、手元の資料が多いほど見積は正確になります。用意できるものを確認してください。
- 製品の仕様書や機能のブロック図
- 入出力の信号と電源電圧、使用温度範囲
- 既存の回路図、基板図、FPGAのソースコード(ある場合)
- 目標の消費電力、チップサイズ、パッケージ
- 試作と量産の希望時期、想定数量
資料がそろっていなくても、相談は始められます。足りない部分は、仕様の段階から入る会社と一緒に埋めていく進め方になります。
工程を決めてから会社を絞る
依頼する工程が決まると、候補の会社はかなり絞れます。最初の問い合わせでは、次の4点を伝えてください。
- 今の状態(仕様のみ、RTLあり、FPGAで動作中、既存品の置き換えなど)
- 任せたい工程の範囲
- アナログ・デジタルの別と、おおよその規模
- 試作だけか、量産まで見込むか、想定数量
この4点がそろうと、各社の見積の前提がそろい、比べやすくなります。分からない項目は分からないと書けば、仕様の段階から相談に乗る会社が案内してくれます。
この記事に出てくる会社
- 株式会社クリエイティブデザインディスコンLSIの作り直し
- ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社混載LSIを仕様から
- 株式会社デンケンアナログASICと解析を一社で
- 株式会社DNPエル・エス・アイ・デザイン設計工程の一部から量産まで
- 株式会社メガチップス量産FPGAをASICへ
- 内藤電誠工業株式会社アナログを少量から量産まで
- NECプラットフォームズ株式会社ASICから装置まで一括
- 株式会社プライムゲート論理設計と検証を外注
- 三栄ハイテックス株式会社センサーAFEのアナログIC
- 株式会社シキノハイテック高速I/Fと画像処理
- TOPPANテクニカル・デザインセンター株式会社EOL再生と量産管理
- 東芝情報システム株式会社アナログICを100個程度から
参照元
よくある質問
ASICの開発はどの工程から頼めますか?
会社によって違います。プライムゲートは要求仕様のコンサルティングからゲートレベルの検証まで、いずれの範囲からでも受けると書いています。DNPエル・エス・アイ・デザインは仕様、RTL、回路図、レイアウト、GDSなどの形で受け付けます。
仕様が固まっていなくても相談できますか?
できる会社があります。ディー・クルー・テクノロジーズは仕様未確定や初めてのASIC開発の相談を受け付け、東芝情報システムは要求分析から仕様決めのコンサルティングに応じるとしています。
レイアウトまで頼むべきですか?
デジタルで先端プロセスを使うなら、RTLからGDSまで扱える会社に頼む方が工程の受け渡しが少なくなります。クリエイティブデザインのようにP&RをICベンダーに委託する体制の会社もあるので、誰がどこまで持つかを確認してください。
【用途別】ASIC・カスタムLSI受託開発おすすめ3選
センサー・電源・ドライバのアナログICを、試作から量産まで一社で
内藤電誠工業株式会社
試作1個からのカスタムIC開発。アナログ・ミックスドシグナルのターンキーで、パッケージも自社で製造
LSI設計事業部がターンキーサービスと受託設計サービスを提供し、アナログIC、ミックスドシグナルICの設計経験、大手IDMが対応しない少量・多品種への対応、国内自社リソース・自社設備による開発を特長に挙げる。国内外の複数のファウンドリのCMOS、高耐圧CMOS、Opto、Bipolar、SOIに対応し、QFN、QFP、DIPなどのパッケージを自社で製造する。ターンキー製品として680万個以上の量産出荷を公式に記載。
量産中のFPGAを、基板を変えずにASICへ置き換えるなら
株式会社メガチップス
既存のFPGA資産からASICへ転換。ピンコンパチブル対応でボード修正を不要に(対応できない場合あり)
FPGA・ASIC転換のページで、量産数量が多い場合にFPGAがASICより割高になることと、FPGAでは低消費電力設計ができず熱対策が必要になる場合があることを転換の判断材料に挙げる。既存のFPGA資産と要望をヒアリングして転換方法を提案し、論理シミュレーションを同社が担当することも可能。ボード設計が終わっている場合はFPGAとピンコンパチブルにして基板の修正を不要にできるとする。
論理設計・RTLtoGDS・アナログを工程単位で頼み、試作・量産までつなげるなら
株式会社DNPエル・エス・アイ・デザイン
0.35um〜16nmのRTLtoGDS実績、アナログ/MixedSignal設計、TSMCシャトル試作、少量にも対応するターンキー
SoC/ASIC設計、RTLtoGDS設計、アナログ/MixedSignal設計の3つの設計受託を用意し、RTLtoGDSではTSMC、UMCほかFabで0.35um〜16nmの対応実績と100MGate超のデザイン実績を記載。DNPがTSMC CyberShuttleのパートナーとして提供する試作では12nm〜0.35umが使え、LSIターンキーサービスは仕様検討から量産までを扱い、少量生産にも対応可能とする。