金属3Dプリントの受託造形 · 基礎知識
金属3Dプリントの後加工と費用|熱処理・HIP・切削・研磨と、料金の目安を公開している受託先【2026年版】
金属3Dプリントの部品は、造形のあとに熱処理・サポート除去・切削・研磨などの後加工が必要になることがほとんどです。掲載各社が公式に出している後加工の範囲と、料金や見積の目安を整理しました。
金属3Dプリントの費用を考えるとき、造形の費用だけを見ていると見誤ります。後加工の費用と日数が、造形と同じくらいかかることもあるからです。
このページでは、掲載各社が公式に書いている後加工の範囲と、料金の考え方を整理します。
造形から完成までの工程
PBFの部品は、造形後に次のような工程を経て完成します。どこまでを受託の会社に任せるかで、費用と手間が変わります。
- 造形(積層)
- 応力除去などの熱処理
- ベース板からの切り離し(ワイヤーカットなど)
- サポート除去
- ブラストや研磨などの表面仕上げ
- 精度が要る面の機械加工
- 検査
ライト製作所は造形工程を、積層・応力除去・ワイヤーカット・サポート除去と書いています。このあと、必要に応じて切削や表面処理に進みます。
各社の後加工の範囲
後加工の範囲を公式に書いている会社を並べます。社内で一貫して行う会社ほど、工程間の運搬がなく日数を読みやすくなります。
| 会社 | 公式に書いている後加工 |
|---|---|
| 東レ・プレシジョン | 表面・内面の研磨(Ra20μm→Ra0.5μmの例)、精密洗浄、検査 |
| 金属技研 | HIP処理、熱処理、機械加工(Ra0.2)、検査 |
| ODEC | 機械加工による二次加工、ベースプレートの研磨 |
| KOEI TOOL | #3,000までの鏡面磨き、シボ加工 |
| ホワイトインパクト | ショットブラスト(標準)、アルマイト、テフロン、X線CT |
| JFEエンジニアリング鶴見製作所 | 熱処理、サポート除去、研磨、仕上げ加工、寸法検査・非破壊試験 |
| 伸和精工 | 精密切削による仕上げ、ねじの追加工、ヘリサート、含浸処理 |
どの後加工が必要かは、部品の使い方で決まります。装置に直接組み込むなら、表面と寸法の仕上げまで含めて頼むのが確実です。
熱処理とHIP処理
熱処理は、造形で残った応力を抜いたり、材料の強さを整えたりする工程です。HIP処理は、高温高圧で造形体の内部の欠陥をつぶす処理です。
- 金属技研: HIP処理を積層造形の後工程に併用して内部欠陥をつぶす。造形直後のTi-6Al-4V材で約10μm程度の内部欠陥を確認した例
- 東金属産業: マルエージング鋼の時効処理を社内で完結
- 中央可鍛工業: 歪み取り、材質調整の熱処理
- KOEI TOOL: マルエージングは焼入後HRC51-57
強度や疲労が問題になる部品では、HIPを含めた処理の要否を最初に相談してください。
表面の仕上げと機械加工
造形のままの表面はざらざらしており、精度が要る面には向きません。金属技研は造形まま面粗度Ra25(EBM)・Ra11(SLM)を、機械加工でRa0.2にすると書いています。
| 仕上げの種類 | 目的 | 公式に挙げている会社の例 |
|---|---|---|
| ブラスト | 粉や汚れを落とし、表面をそろえる | ホワイトインパクト、中央可鍛工業 |
| 研磨 | 表面粗さを下げる | 東レ・プレシジョン、JFEエンジニアリング鶴見製作所 |
| 鏡面磨き | 金型の転写面などを仕上げる | KOEI TOOL(#3,000まで) |
| 機械加工 | はめあい・穴など精度の要る面を作る | 金属技研、ODEC、伸和精工、明楽 |
機械加工で仕上げる面には、造形の段階で削り代を付けておく必要があります。
検査と品質の記録
金属3Dプリントの部品は、外から見えない内部の状態が品質を左右します。検査の方法を公式に書いている会社を並べます。
- JFEエンジニアリング鶴見製作所: 寸法検査、非破壊試験、組織観察
- ホワイトインパクト: マイクロフォーカスX線CT撮影(分解能0.5μm)
- オリックス・レンテック: 造形過程モニタリング・記録機能、造形レポート出力機能
- 伊福精密: 三次元測定器(Carl Zeiss CONTURA-HTG)でスキャンして品質測定
- 東レ・プレシジョン: JIS Q 9100を取得
検査の記録が必要な場合は、項目と方法を見積の前に伝えてください。検査が増えるほど費用も上がるため、必要な範囲を決めておくことが大切です。
後加工を別の会社に出す場合の注意
造形だけを頼み、後加工を別の会社に出すこともできます。ただし、その場合は次の点に注意が要ります。
- 削り代の量を、造形の会社と加工の会社で事前にそろえる
- 治具の基準になる面を造形で作っておく
- 熱処理の前後どちらで削るかを決める
- 運搬の日数と、責任の分かれ目を確認する
迷う場合は、造形から仕上げまで一貫で受ける会社に相談する方が、全体の日数を読みやすくなります。
料金の目安を公開している会社
金属3Dプリントの料金を公式に出している会社は少数です。公開されている例を、税の表記どおりに並べます。
| 会社 | 内容 | 公式の表記 |
|---|---|---|
| 伊福精密 | 素材料金 SUS316L | 1Kg=26,000円(2018年のレート、税表記なし) |
| 伊福精密 | 素材料金 6-4チタン | 1Kg=100,000円(2018年のレート、税表記なし) |
| 伊福精密 | 造形料金(体積) | 造形形状の1c㎥=600円(税表記なし) |
| 伊福精密 | 造形料金(時間) | 1時間=12,000円(税表記なし) |
| 伊福精密 | 素材変更の段取り | 6万円(税表記なし) |
| 金属技研 | ある部品1個の比較事例 | 従来90万円・13日→積層造形30万円・4日(税表記なし) |
伊福精密の素材単価は、料金ページで2018年のレート(1€=130円)と注記されています。体積の例では、729c㎥の造形が単純計算で437,400円になると示しています。体積が大きいほど費用が上がるため、中空や格子で体積を減らす設計は費用にも効きます。
見積を早く取る方法
見積の速さや方法も、会社ごとに違います。公式に書いている方法をまとめます。
- 日本積層造形: 3DデータをWebにアップして概算見積を算出するシミュレーション
- SOLIZE PARTNERS: 問い合わせ・見積に1営業日以内に回答
- オリックス・レンテック: 3Dプリント試算・造形シミュレーションを無料で利用可能
- J・3D: 3DCADデータ・数量・材質・追加工の有無で見積
どの会社でも、3Dデータがあると見積が早く正確になります。後加工の要否と数量も、最初の依頼で伝えてください。
費用を抑える考え方
金属3Dプリントの費用は、体積・高さ・材料・後加工でほぼ決まります。次の工夫で抑えられることがあります。
- 中空や格子にして体積を減らす
- 造形の高さが低くなる向きを相談する
- 精度が要る面だけを機械加工する
- 同じ造形で複数個をまとめて作る(ライト製作所は多品種の同時造形が可能と記載)
- 材料の切り替えが要らない材料を選ぶ
見積の段階で、後加工ごとの費用を分けて示してもらうと、どこを削れるかが分かります。
この記事に出てくる会社
- 東金属産業株式会社大型アルミと熱処理込みに
- 中央可鍛工業株式会社インコネルを熱処理込みで
- 伊福精密株式会社料金の目安を先に知りたい
- 株式会社J・3DEOS機で1個を早く
- 日本積層造形株式会社大型・新材料の金属AMに
- JFEエンジニアリング株式会社 鶴見製作所メートル級のDED造形に
- 金属技研株式会社チタン部品の内部品質まで
- KOEI TOOL株式会社冷却水路付き入子に
- 株式会社明楽大型・異種金属・補修に
- 株式会社ODEC造形+切削仕上げを一社で
- オリックス・レンテック株式会社造形記録付きで出力
- 株式会社ライト製作所大きめのアルミ造形に
参照元
よくある質問
金属3Dプリントの部品は造形のままで使えますか?
多くの場合、熱処理・サポート除去・表面仕上げ・機械加工などの後加工が必要です。東レ・プレシジョンは造形後Ra20μmの面をRa0.5μmまで研磨した例を、金属技研は機械加工でRa0.2にすると公式に書いています。
金属3Dプリントの料金の目安はありますか?
伊福精密が、素材料金(SUS316Lが1Kg=26,000円など。2018年のレートと注記)と造形料金(造形形状1c㎥=600円、1時間=12,000円)の例を公開しています(税表記なし)。
見積を早く取るにはどうすればよいですか?
3Dデータを用意するのが一番です。日本積層造形は3DデータをWebにアップして概算見積を出せるシミュレーションを用意し、SOLIZE PARTNERSは1営業日以内に回答するとしています。
【用途別】金属3Dプリントの受託造形おすすめ3選
PBFで1個の試作部品を、表面・内面の仕上げまで任せるなら
東レ・プレシジョン株式会社
EOS M290を3台、材料は15種類。造形後Ra20μmの面をRa0.5μmまで磨く2次加工を一貫
滋賀県大津市の精密加工会社で、2015年からEOS M290による受託造形を行っている。EOS M290を3台(250×250×H325mm)とTRUMPF TruPrint1000を2台(Φ100×H100mm)持ち、ステンレス、インコネル、タングステン、チタン、純タンタルなど15種類の材料を使える。1個から試作し、量産品にも対応すると記載している。
大型部品や異種金属の肉盛り・補修をDEDで頼むなら
株式会社明楽
粉末DEDと五面加工機のハイブリッドで最大3000×1500×1100。造形から切削仕上げまで一台
三重県員弁郡東員町の金属加工会社で、DED方式(デポジション方式)の金属3Dプリンターで受託造形を行う。粉末DEDと五面加工機のハイブリッド機は最大造形サイズ3000×1500×1100(高さ)で、切削主軸を積んで積層造形と切削を複合で行える。材料はチタン合金、インコネル、ステンレス、マルエージング鋼、コバルトクロム合金、インバー材、アルミ合金。
チタンや耐熱合金を、内部の品質まで詰めて使うなら
金属技研株式会社
電子ビームとレーザーの2方式に、HIP処理と熱処理、Ra0.2の機械加工を一貫。最低1個から
東京都中野区に本社を置く金属加工会社で、熱処理やHIP処理を中核技術に持つ。金属積層造形では電子ビームとファイバーレーザーの2種類の造形機を持ち、Ti6Al4V・Inconel718・TiAlに対応する。造形エリアはレーザー機で最大275W×275L×420Hmm、Ti6Al4V専用機でΦ350×380Hmm。最低1個から対応すると記載している。